間話『内面』
さて、準備は万端!
今度は右腕が爆散しない様に頼むぜ!
水魔法魔法付与をして、
神鉄を切断する。
炎魔法でも良かったけど、
前世でダイアモンドを水が切断する動画を思い出して、
こっちの方が良さそうだと思ったからだな。
「お嬢様?炎魔法ですよ?水魔法なんかじゃ、
切れるわけないじゃないですか?」
へっ、魔法に頼りきってるから知らないんだろうけどな。
科学の凄さってのを、見せつけてやるぜ!
魔力凝縮術を使用し、
一箇所に魔力を集中させる。
「お嬢様、だから炎魔法ですって。
水魔法なんかでやったら、また腕が弾け飛んでしまいますよ?」
腕を振り上げて、集中させた魔力を一箇所に叩きつける。
テオトルのおかげで上昇した魔力のおかげで、
神鉄はいとも簡単に切断された。
メリッサは放出された水の威力に呆気を取られ、
放心状態の陥っている。
口を開け、目は虚空を見つめている。
メリッサのこんな姿は初めて見る。
いつも彼女は完璧で、
失敗もするが努力家で、
聞いた質問には丁重に答えてくれる、
物知りで、冷静沈着な人だった。
だから、こんな驚いた姿を見るのは初めてだし、
なんてったってかわいい。
思わず抱きしめてしまいたくなる。
「そんな!?ここまで綺麗な切断面を、
水魔法で?あり得ない、嘘でしょ?」
独り言をぶつぶつと呟いているが、
ちゃんと抱きついている俺の頭を撫でてくれている。
昔は腰の辺りまでしか顔が埋められなかったが、
今は胸の位置に顔を埋められる。
微妙に汗の匂いが混じった、いい匂いがする。
鎖骨のあたりを舐めてみる。
「うひっ!?お嬢様!?
何をなさるんですか!?」
俺の頭を引き剥がそうともがくが、
しっかりと抱きしめているため、
抜け出すことは出来ない。
「ごめんごめん。
ぼーっとしてたから、つい」
「つい、じゃ無いですよ!
アルク様方に知られたら、なんと言えば…。
罰として、腕立て100回です!
それに、神鉄を、
背負ったまま不壊金属と、
魔鉄鋼の採取もしてもらいます!」
げっへぇ!?
まじかよ、しなけりゃ良かった。
久しく筋トレをしてないせいで、
腕立て伏せが相当きつい。
二の腕がビキビキと言い始めた頃には、
汗が吹き出し、歯を食いしばりすぎたせいで、
口からは血が出ている。
「終わ、ったぞ、次は、採掘だったか?」
「いえ、腹筋を鍛えていただきます」
なっ!?なんつった!?なんつったこいつ!?
さっき腕立てだけだったじゃねぇか!?
「は、はぁ!?ふざけんじゃねぇよ!?」
「分かりました。お嬢様はその程度だったんですね。
弱々しい女性ですね。精々良い男でも探してください」
なっ、なっ!?あ、あがぁぁぁぁ!
こいっつ、言う様になりやがって!
「おっと、お嬢様には良い男なんて来ませんよね。
そんなポヨポヨのお腹では、男の気なんて引け無いですもんね。
あはは、お嬢様ったら、無様ですこと」
「や、やってやるよ!
腹筋を鍛えて、良い感じのボディになりゃ良いんだろ?」
メリッサは不気味な笑みを浮かべている。
右手には酒、左手には、枝?
なんで枝なんか持ってるんだ?
「な、なぁ、メリッサ、なんで、枝なんか、
持ってるんだよ?」
「あー、やっとだ。鈍い女ねぇ。
やぁ!テオトル様だよぉ」
なるほど、やっと分かった。
こいつ、憑依されてやがる。
「いやぁ、君が腕立てしてる時に枝を拾ってくれてさ。
憑依できたんだよね。
少しいじめたら分かるかなって思ったけど、
案外気づかなかったね。
それはそうとさ、君今さっきなんて言ったか覚えてる?
良い感じのボディだってさ!」
顔が赤くなって行くのが分かる。
なんで、俺はこんな事を?
「うーん、転生後にやっとこんな感情を持つようになったのかい?
うーん。魂が体に近づいて来たと見た。
まぁ心配ないよ、今まで通りにしてくれれば、
楽しい余生が送れる未来になってるはずだから。
それはそうと、なんで不壊金属とか、魔鉄鋼なんか取りに行くのさ?
もう剣を鍛治打ちしにいこうよ?」
「あぁ、その話なんだけど、
合金って知ってる?
伝説的な金属を混ぜたら、
強くならないかなって」
テオトルの目は輝き始め、
口からはよだれが出ている。
「うへ、うへへ。良いじゃない。
良い事考えるね、君。
分かった!このテオトル様に任せなさい!
大船に乗った気でいて!
じゃ、またね!」
枝を投げ捨てると、メリッサは崩れ落ち、
深い眠りについてしまった。
起きたら出発するか。
かわいい寝顔をしたメリッサの頭を撫で、
薪を探しに山を巡った。




