間話 『オリハルコン・前編』
「ギーモン様!お嬢様に重力魔法を!」
足の骨が折れる。
すかさず治癒魔法をかけられ治る。
風魔法で抵抗しようとしても、
魔力を散らされ、魔法にできない程度の重力である。
何度も繰り返していくうちに、
足の痛みは気にならなくなる。
痛みが無くなるわけではなく、痛みに慣れるのだ。
「お嬢様、お次はこの山をこの状態でお登り下さい!」
今のメリッサは鬼だ。
ただの鬼ってレベルじゃない。
地獄の獄卒長とか、そんなイメージだ。
少しでも止まれば蹴り飛ばされ、
骨が折れれば直してくれる。
俺は考えることを辞め、
必死に登り続ける。
山を登るのに、どれくらいの時間を要したのかは分からないが、
山頂に登りきる頃には、
俺の足はズタズタだった。
傷は無いのに血だらけで、
魔力が通らない。
恐らく重力魔法の弊害で、
しばらくは魔力回路が潰れたままかもしれないとのことだ。
空を見上げると、暗い空に何処と無く木が見える。
星も瞬き、月なども見えるが、
それとは別に世界樹も、
うっすらと見える。
ギーモンに聞けば、
結界が破られかけているとか、
よく分からない事を言っていた。
創造神が絡んでるのだろうが、
詳しい事は分からない。
その日は疲れを取る為に、
ぐっすりと眠った。
翌日、起きると足の痛みはすっかり引き、
体がとても軽くなっているのがわかった。
今ならアフェリッサの森を数時間で走り切れそうな気がする。
「お目覚めですかお嬢様?
本日はあの鉱石を採取していただきますよ」
メリッサは光を反射する、
美しい鉱石の山を指差してニッコリと笑う。
「あの石はなんなの?」
「あの鉱石は、この世で最も硬い鉱石の一つで、
神鉄と呼ばれるものです。
採取に成功すれば、
次はまた別の鉱石を取りに、
あちらの山へ登ります」
メリッサは、何も無い方向を指差した。
「あっちには何も無いよ?
方向間違えてるんじゃ無いの?」
「お嬢様、ご存知ないのですか?
あちらの山は夜にしか出現しません故、
稀少な金属の宝庫なのです。
例えば不壊金属や、
魔鉄鋼などですね」
うわぁ。ファンタジーとかでお馴染みの金属だぁ。
確実に人の手じゃ採取無理じゃない?
「そ、そんな物採取してどうするのさ?
売るの?お金には困ってないんだけどな」
「剣じゃ。剣を作るのじゃ。
あのお方のご命令でな」
恐らくあのお方とは、創造神の事だろうか?
俺もメリッサも拳士。
ヴェナは魔導師だし、ヴォーラフは狩人。
強いて言えばギーモンが剣士だが、
すでに凄そうな剣を持っている。
では誰が持つのだろうか?
……分からない。
だが、創造神が言うのだ。何かしら策があるのだろう。
「と言うわけで、鉱石採取を始めますよ!」
神鉄か、なんだかワクワクするな。
何故だか嬉しそうなメリッサの、
手を握り締めながら、
この後の惨状を恐れた。
神鉄を採取するには、
根元の方を折らなければならない。
まずは試しに手刀でチョップしてみる。
神鉄に手が当たった瞬間、
腕の骨は砕け散り、
右腕が千切れ、爆散した。
堪え難い激痛が走る。
なんだ?何が起こった?
少しの力を入れただけなのに、
右腕がなくなった!?
「おっと、お嬢様、大丈夫ですか!?
ぎ、ギーモン様!治癒魔法を!」
ギーモンとメリッサが大慌てで近付いてくる。
なんだか懐かしい様な感じがする。
結構幸せだな。
「神鉄に、
あそこまでの能力は無いはず、
一体何があったんですか!?」
「恐らく、彼の方の策じゃな。
安心せい、右手は付く。
ほっほっほ。神鉄を取るのに何ヶ月かかるじゃろうかのぅ」
ギーモンが妙に落ち着いて話しているのを聞き、
少し安心して、意識を手放した。
九月になりましたね。
空を見上げると、綺麗な月が観れる景色です。




