第38話 『決戦前夜』
気がつけば、沼地にいた。
ヴェナが心配そうに顔を覗いている。
周りを見渡せばいつもの仲間に加えて、
兎の獣人も一緒にいる。
ギーモンは剣を研いでいるし、
ヴォーラフは所持品の確認をしている。
兎は手のひらに黒炎を浮かべたり消したりを繰り返している。
「ここは?」
愚問だ。最後の難行はヒュドラの退治。
最終決戦前という事だろう。
「ここはアフィリッサの森の真ん中にある、
湖付近だよ。
ここにヒュドラが住んでるの」
アフェリッサって言うと、
あのアフェリッサかい?
故郷からヘリル王国までの道は、
全てこの森を通している。
「懐かしいじゃろう?
昔とは違って、もう故郷はないがのぅ?」
故郷がない。
その言葉が俺の背中に罪悪感を這い上がらせる。
全て俺のせいであの村は消え去ったのだ。
いや、一概に俺のせいではないと思うけど。
確実にドナルドの妻が悪いし。
名前なんだったっけ。
菜種油?
まぁいいや。
きっとメリッサも、アルクもメーネも生きてるさ。
「其方には悪いことをしたのぅ。
まさかギーモン殿のお孫殿とは知らんかったわ。
それにしてもあれほどの闇魔法、
どこで覚えたのじゃ?
妾の魔王系能力を相殺するとは、
俄には信じられぬ」
んー。その話か。
実際のところ、どこで覚えたのか全然覚えてないんだよね。
気付けば闇魔法回路が、
異常発達してて、魔法名も思いついて。
あれほどの威力だもんね。
相殺というより吸い取ってたし。
「私にもよく分からないんです。
いつの間にか……なんですよね」
ギーモンがさっきから溜息を吐き続けている。
何か心当たりがあるのだろうか?
「妾の予想としては、
神の関与、じゃろうな?
神に出会った記憶はあるかの?」
心当たりしかない。
創造神だ。あの野郎、俺の知らない間に、
改造でもしやがったか?
「まぁ良いわ。
明日に備え、妾は早めに寝よう。
ギーモン殿はどうされるのだ?」
「儂は周囲を警戒しておこうぞ」
ギーモンの剣が青く光っている。
彫刻が美しい。
その日は明日に備えて、
ヴェナと一緒に寝た。
勿論、今晩はお楽しみの予定だ。




