第34話 『大赤斑』
俺は今、牧場にいる。
牛乳が沢山、それに牛肉も沢山だ。
それにかぶりつく犬もいる。
真っ黒で、目が真っ赤だ。
何故かって?
魔牛の血を、犬が飲んだからだ。
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「ロミー!牧場よ!牛がたっくさん!
あっ!あっちで搾りたての牛乳が売ってる!
飲みに行きましょ!」
「はいはい。全く、お嬢様はお転婆ですね」
「う、うるしゃい!私だってロミーと一緒に遊びたいの!」
「ロミ夫、行ってこいよ。ここは俺達男組に任せな」
「うむ、今回は魔牛。頑張ればこの犬っころでも倒せるじゃろうて。
もし儂の手にも余るような強敵じゃったら、
呼ぶんでな。まぁ安心してよいじゃろう」
珍しくほくほくとしている犬は、
この化け爺にハードな修行をつけさせられていた。
故に今のヴォーラフなら、
2階位程度の魔物なら倒せるのだそう。
ちなみに冥界の王さんは、
ギーモンでも勝てるか分からないと言っていたが、
恐らく戦闘になった瞬間に、
ズタズタに解体されてしまうのは目に見えている。
「美味しいねぇ!ロミー!あっちのお肉食べに行こ!」
「全く、お嬢様?はしたないですよ。
帰ったらアウェウス様に御報告させていただきますね」
「あぁ!意地悪!良いじゃん!ロミーと食べたいの!」
「はいはい。分かりました。
ですからぽかぽかと私を叩くのは辞めてください」
旅の途中だと言うのに、
俺は今でもメイド服だ。
アウェウスの趣味だとかで、
背中の方ががっつり空いてるので、
町に入ると視線が痛い。
かと言って外すのは契約違反になり、
腕が切り落とされたりするらしいので、
他の服を着ることは出来ない。
あぁ、へリル王の所為だわぁ。
悔しいわぁ。
「はい、ロミー!口を開けて?あーん!」
「むぐっ!んむーっ!」
大量の肉を詰め込んできやがった……。
くそぉ……。
「ロミー!こっち向いて?」
「……なんでしょう?」
唇を奪われた。
きゃぁー!なんて大胆なのぉ!?
侍女と主人の禁断の恋!
じゃねーよ!乙女になってる場合か!
びっくりしたぁ。
アウェウスに見られたら首跳ねだよ……。
「えへへ。びっくりした?」
「ヴェナ様……心臓に悪いので辞めてください。
誰かに見られていたら、その……。
奇異な目で見られてしまいますよ?」
女通しだしな。
中身は男!見た目は女!
いや、悪いのは俺だよ?
まだ小さい4歳とかから唇を奪ってたし。
あまり常識を知らない貴族階級だったし?
お、俺悪くないし?
ヴェナの顔が真っ青になっていく。
まさか!アウェウス!貴様ストーキングか!
くそっ!見られたか!
こうなりゃ玉砕だ!いでよ冥界の王!
「さ、流石ロミーね……。
ただならぬ気配に気づいたのね……」
そりゃそうさ。
アウェウスが鬼の様な形相で、
俺の首を跳ねようとしてるのは知ってるさ。
アウェウス!ここで終わりだ!
振り返ると、三頭犬が、
肉を大量に持った犬と化け物爺を追いかけていた。
やばいやばいやばい!?
なに?どういうこと?えっ?えっ?
「ロミー!一発かましてやれ!」
「超雷雲じゃ!
あの時の技を繰り出すのじゃ!」
なんだっけ、その魔法?
……思い出した!
学校でやったあれか!
ふっふん。甘いぜ化け爺!
俺はあの頃よりも風属性魔法が得意なんだぜ?
精神統一をして、
魔力凝縮術を使用する。
全身の魔力を手の集中させ、
風球を作り出す。
この国を破壊する勢いでやるぜ!
「お爺様!ヴェナとヴォーラフの避難を!」
「う、うむ!了解した!
こりゃまずい!大魔力災害が起こるぞい!
ほっほっほ!」
楽しそうだな爺さん……。
んー。三頭犬の一部は残るかな?
耐えられるか試してみようぜ、ポチさんよ。
「大いなる風に雷神は微笑む。
微笑みは轟音を呼び、闇と水を齎す。
この世のものならくれてやる!
大赤斑!」
風がうねり、
巨大な竜巻が上がる。
轟音が鳴り響き、竜巻内部の温度がぐんぐんと上昇して行く。
魔法は冥界の王との分割で、
同時発車している。
魔力は全く同じなので同化し、
強大になって行く。
風速が上がり、鋭くなって行く。
周りの土や草、木を巻き込み、
竜巻内部に入り込み、熱で消滅する。
無論それは三頭犬も例外ではない。
首が切れ、焼け焦げ消滅して行く。
叫び声をあげるも風に掻き消され、
竜巻の中に飲み込まれた。
久々に魔力の底が見え、
意識が遠のいた。
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それで目が覚めたら、
ヴォーラフが充血しながら牛肉を食べていたというわけだ。
「ロミー!お前も食うか?これうめぇぞ!」
「駄目よ!ロミーは私と一緒に牛乳を飲むんだから!
ねっ?ロミー?」
「ほっほっほ!儂はチーズと酒で結構じゃわい!」
三人が嬉しそうに食事を楽しんでいる。
「でもロミーも流石ね!
小さい頃に見たあの魔法よりすごいわ!
だって、あれ見てよ!」
指を指された方向を見ると、
牧場に大穴が開いている。
「三頭犬の本体は全焼したけど、
ギーモンお爺様が尻尾だけ切り落としてたの!
流石ね!」
「ほっほっほ!そう言われると照れるのぅ」
ヴォーラフは相変わらず肉を食べ続けていたが、
久々にゆっくりした晩餐を楽しむ事が出来た。
アウェウス「姪に良からぬことをした奴がいる気がする」
侍女1「考えすぎでしょう」
侍女2「アウェウス様はロリコンですもんね」




