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第2話 『身の回りを見てみよう』

 生まれてから数週間が経った。


 家族らしい人は父母と祖父しか見当たらず、

 後は侍女やメイドさんがチラホラ。


 祖父は中々格好良くて、

 とても良い服を着ている。

 この前、一度抱き上げられたのだが、

 少し乱暴に、俺に頬ずりをするので、

 腕の中で漏らして、

 良い服を一枚駄目にしたのは、秘密だ。


 だが最初の頃は、

 とても面白かった人間観察も、

 数週間も続くとなると、

 飽きてきて、暇になってきたのだ。


 だが素晴らしい事だってある。

 なんてったて俺の母は、美女なのだ。

 とても良い匂いだ。

 凄い落ち着く。あぁ、父親が妬ましいなぁ。


 俺が少し悲しそうな表情をしたのを、

 母は見逃さなかった。

 徐に、上半身の着衣を外し、

 俺の顔に胸を押し付けてくる。


 ふっ…そうさ。授乳の時間だ。


 なんて素晴らしいのだろう。

 このような時間が一体前世でどれくらいあっただろうか!

 目の前の美しい美女が、

 俺の為に胸を差し出してくるのだ。


 俺は吸い付いて、体液を搾り取る。

 母体から出る、神秘の飲み物。

 良い食事をしているのだろう。

 中々美味しいのだ。


 やっぱりここは楽園 (パラダイス)だったのだ。


 間違いないな。

 父親が俺と母親を見て、

 母親に何かを話しかけている。

 数週間経ったが、未だ言葉は理解できない。

 しかし今回は何を言ったか、

 すぐに理解することができた。


 父親も、もう片方に顔を近づけたのだ。


 クソ…なんて男だ。

 生前の俺より若いのは確かだ。

 この歳でこんな事が出来るとは…

 羨ましいじゃないか!


 俺は心の中で、少しそんなことを考え、

 腹が満たされたのを感じる。

 もう少し触ってたいのだが…

 まぁ仕方ない。またすぐお腹が減るさ。


 その後、父の腕に抱かれた時に、

 我慢したものを放出したのは、

 言うまでもなく、事故だったんだ。

 決して、恨みがあるわけじゃない。


 これで少しはうん(・・)もついたろう。


 -----



 あれから数ヶ月経ったと思う。

 俺はハイハイができる様になったし、

 ある程度なら、言葉も理解できる。


 ハイハイで家を回るたびに、

 少々不安になる。

 蛍光灯の様なものはない。

 あるのは燭台や風琴だ。

 それどころか、冷蔵庫や、テレビ、

 ましてやパソコンすらない。

 正直焦っている。

 親は俺を電子機器と離して、

 俺を健全に育てるつもりだろうが、

 俺は前世の記憶があるのだ。

 その電子機器の重要さは知っているし、

 何より、ないと暇だし、

 相当つまらないだろう。


 ……と言うことで俺は今、

 正面玄関の前に来ている。

 扉を抜ければ、そこはどんな所だろうか。

 家よりは楽しいに決まってる。

 そう思って、扉を開けようとしたのだが、

 ふいに体が宙へ浮く。


「あらあら、ーーーー。全く。ーー。やんちゃな子ですこと。」


 所々分からない言葉があったが、

 分かる言葉も少しはあった。

 侍女の一人が俺を母親の元へと連れていく。

 侍女と母が何かを話し、笑っている。

 悔しい。見つかってしまった。

 母は俺を抱きかかえ、自室へと連れて行く。

 カゴの中に入れられてしまった。

 こうなってはもう囚われの身だ。

 近くに本はあるが、読めないし、

 まず届きそうもないのだ。


 仕方ない…諦めよう。

 それにしても、暇だ。

 することがない。

 前世では暇な時、何やってたっけ。


 そうだそうだ!筋トレをやってた。


 …この体で出来るのか?

 軽めの奴なら出来るかもな…。


 俺は筋トレを始めた。

 まだ生後数ヶ月なので、

 ほぼ何もできない。

 足を上げて…下げて…上げて…下げて。


 疲れた…というより痛い。

 だが、不思議と力が湧き出てきた。

 赤ん坊だから、力が付きやすいのだろう。


 疲れて倒れているところ--元から寝転んでいたが--に祖父がやって来た。

 しかも片手には斧を持ってだ。


 間違いない。この間、良い服を汚した復讐だ。

 やばい。あんなことするんじゃなかった。

 恐怖で俺が泣く。

 笑おうと決めていたが、

 妖しく青い光を放ち、所々錆びついた斧を前に、

 俺はただただ恐怖を感じていた。


 祖父は慌てて何かを言っていたが、

 理解はできなかった。

 祖父が大慌てで、部屋を出て言った。


 よかった。殺す気などなかった様だ。


 暫くするとまた祖父が来た。

 今度は斧を持たずに、だ。

 祖父は俺を抱きかかえて頬ずりをする。

 髭が長いので、少し、気持ちいい。

 髭を触ってみる。

 祖父の荘厳な雰囲気はこの髭が生み出している。

 俺もこんな髭を生やしてみたい。

 祖父はしばらく俺を抱きしめると、

 何か言って出て言った。


 これまた理解できない言葉であったが、

 優しそうな雰囲気に、俺も笑顔で応える。

 威厳ある祖父も孫の俺の笑顔を見て、

 幸せそうだった。


 それにしても、

 祖父は何故あんな切れ味の良さそうな斧を、

 持っていたのだろうか。

 木こりか何かをやってるのか?

 いや、あの錆つきは見たことある。

 前世で、実物の刀を見た時、

 同じ様な錆がついていた。

 血によるものだ。

 もしかして、ヤバい家なのか!?


 祖父が何を殺めたのか分からず、

 その日は恐怖でしばらく眠れなかった。

ちょっと漏らす回数が多かったでしょうか?

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