第24話 『旧友との身分差』
部屋の中に同じ年の少女が二人。
片方は男の様な口調なのに、メイド服を着ており、
もう片方はそのメイドを見つめたまま、
一言も喋らない。
メイド服に身を包んだ少女は、
ロメディア・ハーキュリーズ。
名門貴族ハーキュリーズ家のリグの血筋で、
国王から国家転覆の罪を課せられ、
奴隷階級に身分を転じている。
メイドを見つめて居る少女は、
ヴェナ・ヒューゼンベルク。
先代のグリウス・ヒューゼンベルクは、
優れた冒険家で、
今も各地で様々な話が残っている。
しかし今、彼女の父親代わりをしているのは、
彼女の叔父のアウェウス・ヒューゼンベルクである。
長い沈黙を破ったのはメイドであるロメディアだった。
「なぁ、ヴェナ?」
「ヴェナ様。」
……様?あぁ、そっか。
いくら友達といえど、身分が身分だもんな。
「ヴェナ様?及び頂き光栄です。
本日からここで働かせていただく、
ロメディア・ハーキュリーズです。
ヴェナ様の為に朝から晩までお世話させて頂きます」
「うん……。上出来。
ロミーのメイド姿……くふふ。
貴方は今日から奴隷兼メイドよ!
だ・か・ら、私の言うこと全部聞いてもらうわ!」
「は……はぁ。分かりました。
仰せのままに動きますよ。
ヴェナお嬢様。」
ヴェナはニコニコ笑いながら、
俺を抱きしめてくる。
正直アウェウスに見つかれば、
何を言われるか分からないので怖い。
……あぁ、なるほど。
メリッサはこんな気分だったのか。
ため息も吐きたくなるよね。
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2年間メイドとして過ごして、
生活パターンも決まってきた。
ヴェナの世話の仕事はとても簡単である。
朝早く起きてヴェナを起こし、
一緒に散歩や、お花摘み、
それに運動などをする。
そして昼食を作り、
お風呂に入ったりして、一緒に寝る。
今はヴェナとお花摘み中だ。
実際は護衛任務といった方が正しいと思う。
ヴェナが最も好んでいる花は、
ヘリル王都でも希少価値の高いものであり、
今までのお花摘みのたびに死人が出ていたらしい。
理由は巨大バチである。
目が合った瞬間に襲いかかって来る獰猛さがあり、
尻尾につく毒は、
ドラゴンでさえ動けなくさせる程と言われている。
人間は刺された瞬間に恐ろしい苦しみを感じながら死ぬという。
つまり、常に死と隣り合わせのお花摘みだ。
「ロミー!見てみて!
良い匂いでしょぉ?えへへ。
どぉ?ロミーにもあげるね?」
「ありがとうございます。
ですが、私ではなくアウェウス様に渡すのをお勧めしますよ。
きっと喜ばれるでしょう」
「んもぉ!イジワル!
ロミーのばーかばーか!」
ぐはぁ。やばい。可愛い。
メイドじゃなかったら、
襲いかかるレベルだコレ。
ロリコンとか言うな。
実際可愛いんだ仕方ない。
結婚とかは、法律的には問題ない。
いや、身分差があるからダメか。
同性婚はアバルディア王国では認められているし、
成人は15歳だが、結婚は10歳から出来る。
今は11歳。奴隷になってから、
中々長い間メイドとして暮らしたものだ。
ヘリルから抜け出して……、
アバルディア王国に行けば……。
「ろ、ろみぃぃぃぃぃ!
ちょっと!助けて!助けてぇぇ!」
ヴェナの叫び声だ。
後ろには巨大バチが追い回している。
……戦闘は久しぶりだ。
多分俺ではあのハチには勝てない。
ならどうするか。
答えは簡単である。
王都へ連行された時も、奴隷になった時も、
ヴェナの家に入った時も、
常に魔力を出していたのには理由があるのだ。
地面に水魔法を掛け、泥にさせると、
下から黒い怪物が浮かんできた。
冥界の王だ。
まずは魔法をハチに当てる。
冥界の王は全属性耐性が付いている為、
どんな魔法でも魔法が出せなくなる前の、
俺の魔力同等程度には出せるようになっている。
全属性耐性の魔法石は、
王の石と名付けている。
と、言うより、元々そう言う名前だったと言うべきだろうか。
王の石の希少価値は高く、
王族しか持てないような代物である。
実際のところ俺はあの宝石商に、
お金は返しきれていない。
しかし奴隷になり、自己破産した事で、
この石は俺のものとなっている。
「ロミーさん!?助けて!?
ゴーレム使って早く!
もう足が痛いの!死んじゃう!死んじゃうからぁ!?」
もっと虐めてみたいが、死なれては困る。
まずはゴーレムから魔法を出し、
巨大バチの意識を向ける。
あとは簡単。
魔法付与からの、
ロミースペシャルだ。
巨大とはいえハチはハチ。
冥界の王さんの前では、何者も無力である。
ぺしゃんこに潰れたハチからは、
毒々しい色の液体が漏れている。
「んもぅ!ロミー!?
もう少しで私死んじゃってたカモなんですけど!?
今日の夜はたっぷりお仕置きしてあげるんだから!」
いつからだろう。
お仕置きという言葉がとても嬉しく聞こえるようになったのは。
「分かりましたヴェナお嬢様。
早速お花をアウェウス様に届けに行きましょうか。」
「それはロミーのだって言ったじゃん!
あっ!ごめん!置いてかないでよぉ!」
……ふぅ。良いなぁ。
俺が男のままだったらなぁ。
どうしようもない事を嘆きながら、
ヴェナと手を繋ぎながら、
家に帰った。
途中ヴォーラフにも会ったが、
無視をしたのはここだけの秘密だぜ。




