第20話 『折れた心』
すぐさま俺は拘束され、牢屋へと連れ去られた。
ボーンが謎の薬で暴走し、
街を壊滅に追いやったのだ。
飼い主(召喚者)である俺が、捕まるのは無理はなかろうが、
ボーンを誘ったのはそっちじゃないか。
牢屋の中で延々と独り言を呟き続けていた。
看守はいないのだが、
魔術が使えない様に結界が貼ってあるので、
ここからの脱出は不可能である。
ボーンを呼んでみても反応はない。
通常精霊は、契約主の声はどんなに離れていても聞こえるはずなのだが、
ボーンは反応を示していない。
死んでしまったのだろうか?
いや、そんなはずがない。
毒を投げた人物は、
金持ち階層の席からだった。
小龍が負けそうになった為に、
毒を投げたのだろうか?
いや、それでは辻褄が合わない。
コロシアムは安全上の問題のため、
危険物の持ち込みは禁止されているため、
魔道具や、毒物、剣などは回収されるはずなのだ。
では何故、持ち込みが可能だったのか?
答えは簡単だ。
回収を免れる事ができる人物がいるという事だ。
一部の王族、公爵位の人、町長とゲストだ。
町長のエフダは俺と一緒にいた。
無論ゲストの俺は被害者なわけで犯人候補から外れる。
ゲストに選ばれる人は、
その時の街の中にいた最も有名な人が選ばれることになっている。
俺が伯爵位なので、
それより位の高い、王族や公爵位の人間は来ていないはずだ。
では、誰が?
簡単な話だった。
滅多に来ないから気付くのに遅れたが、
もう一人だけ、荷物検査を受けない人物がいるのは確かだ。
町長の妻、ナリーアである。
彼女なら荷物検査を受けずに、
毒薬を持ち込めるし、
町長席ではなく、お金持ち階層席に座るはずだ。
クソっ!はめられた。これは罠だ。
なんの為に俺を陥れた?
なんの為?恨まれる様な事をした覚えはない。
では何故だ?
分からない。
何故ナリーアが、俺を牢屋に入れる必要があった?
なんでだよ……。
ふざけんじゃねぇよ……。
俺のボーンに何してくれてんだよ……。
俺の人生なんだと思ってんだよ……。
「おい、お前に面会したいって奴が来てる」
「……あ?誰だよ?」
予想以上に低い声が出た。
兵士はか弱い少女からこの様な声が出たのに驚いたのか、
一瞬ビクリと体を動かした。
「り、リーモルとかいう男だ」
りーもる……リーモル?リーモル!
やっと来たか!彼なら!彼ならどうにかしてくれるかもしれない!
「あ、会わせろ!今すぐに!」
長い廊下を歩く。
足には重りが付き、腕には手錠がかかっている。
服はボロボロに汚れ、髪はボサボサにはねている。
入った個室にはリーモルが座っていた。
「やぁ、ロメディア君」
「リーモル先生……3日…ぶり…ですか?」
溢れ出る涙を抑えることは出来なかった。
暗い牢獄に丸一日閉じ込められ、
何も出来なかったのだ。
リーモルは困った様な顔をして、ため息をついた。
「ロメディア君。君は間違いなく大罪人だ。
今からヘリルに連れて行かれ、
国王とハーキュリーズの四家から、
有罪か無罪かの判定が出るだろう」
「リーモル先生、聞いてください。
犯人はナリーアさんだ。ナリーアさんが毒を……っ!」
背中を鞭で叩かれた。
余計な事は言うな、と言う事だろうか?
「ロメディア君……悪いが君をこの学校の教員として、置いておく事は困難になりそうだ」
「せ、先生?何を?何を言って?」
リーモルの顔が段々と不機嫌になっていく。
苛ついた様に机を叩き始めた。
「ふぅ……。要するに、だ。
君はクビだ。クビ。
我が校の評判が落ちるのは、困るしね」
「えっ?リーモル、せんせ?何を言って?は?クビ?」
状況を理解できなかった。
優しいはずだったリーモルが、
急に手の平を返した様に、
俺に冷たく接し始めたのだ。
「待って、待てよ。リーモル。
お前、クソ……この、野郎…、俺は悪くねぇっつってんだろ…」
「見苦しいぞ。君が飼っていたアレが、暴れたせいで小龍の鎖が切れて、
街が崩壊したそうじゃないか。
ウサの街が崩れたらヘリルは、
アバルディアにとって格好の餌食。
君のせいだよ。国王はどんな刑を君に下すだろうね」
俺はリーモルに殴りかかった。
頭ではわかっている。
こんな事をしてもリーモルには勝てないし、
何より罪が重くなるだけだ。
だが、俺は理性を失っていた。
唯一の助けだと思っていた人物に、
完全に見捨てられたのだ。
背中を再度、鞭で打たれるが、
構わずリーモルを殴り続ける。
「くそっ!このっ!なんでだ!
なんで俺が!こんな目に合わねぇといけねぇんだ!殺してやる、絶対に、絶対にだ」
背中の皮膚が裂かれ、
血が流れ始めたのが分かった。
リーモルは俺の拳を全て防御していたが、
段々とつまらなそうになり、
カウンターを打って来た。
俺は吹っ飛ばされて、意識を手放した。
薄れゆく意識の中、
俺は馬車に乗せられていった。




