第17話 『道中での災難』
---ウサの街---
ヘリル王国最大の都市の一つ。
ヘリル王都は文明や文化を象徴する都市であり、
ウサの街はそれに対し、技術面での進歩などに貢献している。
日々名工により剣や杖、鎧等が作られ続けている。
テッサの持っていた剣の作成者、
アズーラ・マーデルもこの都市在住である。
しかしその栄光の裏では、
職人に癒しを与えるために、
奴隷が売られ、娯楽施設が作られ続けている。
特にこの都市での奴隷制度は酷く、
性奴隷から労働奴隷まで、様々な奴隷がたった1金貨で買えてしまう。
その多くはヘリル王国に敗戦した国から連れてこられており、
国王はこの奴隷について黙認している。
正直言って俺は国王失格だと思うが、
この世界で、奴隷は珍しくない。
多種族の奴隷も偶に見かけることから、
国王は平和の名の下に、
多種族の国に戦争を仕掛け、
少しづつ領土を広げているという事だろう。
少し暗い話になったけど、悪いとこばかりじゃない。
例えば娯楽施設だ。
サーカスや演劇、学芸会などが、
街の各地で開催されている。
中でも目玉はコロシアムだ。
地球では剣闘士として、奴隷が使われていたが、
異世界では、ただの怪獣大戦のようだ。
例えば近くで捕まえた魔物を調教し、
互いを戦わせるのだ。
少し可哀想に思うかもしれないが、
娯楽にも、魔物退治にもなるため、
一石二鳥な制度とも言えるだろう。
人気一位は無敗の子龍だそうで、
生後100年程度だという。
観客は勝者を予想し、賭け事をしている。
競馬のような感じだ。
勝利すれば数倍で帰ってきて、
市民から絶大な人気を誇っている。
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基本的な事をメモ書きに書いておく。
今回は修学旅行のため、
生徒には娯楽施設の使用を禁止しているが、
俺は町長のエフダさんに誘われて、
町の見学をさせていただく予定だ。
既に俺は8歳で、身長も伸びてきた。
おかげでやっと、生徒と間違われなくなってきた。
武闘大会の後、決勝に残った4人は、
いつかの俺とハリウス達の様に仲良くなっていた。
学校内で最も強い集団であり、
リーモルは彼等も教員に誘っていて、
内、アコールは乗り気になっている。
ロメディア先生みたいになるんだと、
張り切っているのを見かけた。
俺はアコールに、燃え盛る黙示録をあげた。
思い出があるので少し躊躇ったが、
アコールが欲しがったので、
差し出すと、飛び跳ねて喜んでくれた。
喜んでくれるなら、本望さ。
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今回も相変わらずリーモルは、
有難い話をした。
今回も馬車を数十台用意し、
2日かけてウサの街まで行く。
王国まで行くには森を通らなければならなかったが、
こちらの街は利用者が多いので、道が作られている。
みんなが馬車に乗る中、俺はボーンに乗った。
正直ボーンの方が早いし、
何より、もしも魔物に襲われた時は、
馬車より、こちらの方が安全だ。
「ご主人様、明日の朝には到着すると思いますので、
どうぞごゆっくりお休みくださいませ」
「おぅ!ありがとさん!」
そのままボーンの背中に揺られながら、
意識を失っていった。
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「……様、ご……様!ご主人様!」
ボーンに呼びかけられて、
目が覚めた。もう着いたのか?
辺りを見渡すとまだ暗い。
「おい、ボーン。なんで起こした?」
「いえ、山賊に囲まれていまして。」
はっ?山賊?
下を見ると、松明を持った屈強な男が、
ボーンを囲んでいた。
既にボーンは体長10m近くあり、
相当強そうな姿をしている。
山賊達は俺に気づくと、ヒソヒソと話し始めた。
しばらくしてリーダーらしき男が、
前に出てきた。
「おい!そこの坊ちゃん!
金目の物を全ておいていきな!俺たちも命を奪うつもりはねぇ!
痛い目に会う前に、さっさと出した方が身のためだぜ!ケケケ!」
あぁ…面倒臭い。
いいよ。冥界の王持ってきてるし。
「あぁ、良いぜ、やってやる。
俺と勝負しな。まとめてかかってきてもらって良いぜ」
山賊が雄叫びをあげて、首領に戦いの許可を得ようとしている。
「お前らの言い分はよぉぉく分かった!
俺様はこのチビを許せねぇ!
だが傷つけねぇ様にしろよ!
あの方の命令なんだからよ!」
あの方?あの方って誰だ?
山賊は弱かった。
冥界の王を使うまでもない。
「で?どうすんだ?今だったら見逃すてやっても良いぜ?さぁ選びな。
逃げるか、死ぬかだ」
「ぐわっはっは!面白い事を言うガキだ!
俺様が相手をしてやろう!」
どうせ雑魚だろ。
こう言う事言う奴に限って弱いんだよ。
ーーと、思った瞬間、
不意に服が切り裂かれ、腹部に切り傷が付く。
なんだ?何があった!?
「油断したな坊主。
おっと!綺麗な肌が傷ついちまった!
まぁいいさ、治癒すりゃ治る!」
これはまずいな。
方法は不明だが、遠距離から斬撃を加えられるとなると、
戦況は変わる。
冥界の王を出さなければ。
「そうだなおっさん。
まぁ、ここでお前達が死ぬのは、確、か…だ」
不意に眠くなってきた。睡眠薬か?
「ボーン!冥界の王を、
お、前に任せ、たぞ」
先程まで寝てたのにも関わらず、
俺はそのまま微睡んでしまった。
眼が覚めると巨大な黒い腕に担がれていた。
「うわっ!?」
飛び起きると、周りに山賊の姿はなく、
ボーンと冥界の王が、
悠々と立っているだけだった。
朝日が既に登っているようで、
久々にゆっくりと寝れた、
心地よい朝を迎えることが出来た。
「ご主人様、おはようございます。
襲ってきた山賊は全員冥界の王で、
片付けさせて頂きました。
それと誠に勝手ながら、
腹部の傷を治す際に、
私に手では届き得ないので、
冥界の王を通して詠唱したのですが、
腕が大きすぎたために、上着の一部が破れてしまいました。
誠に申し訳ございません」
確かに上着は破れ、
下着が丸見えになっているが、なんの問題もない。
土魔法で鎧が作れるため、
胸当てでも作れば隠れるのだ。
「構わないよ。
それにしても災難だったね。
今日中に着いて、エフダさんの挨拶しに行こう?」
ボーンは頷いて、冥界の王を地中に埋めた。
潜土だ。
対象を効果範囲内の土の中に沈め、
俺に着いてくる様にしているのだ。
ボーンの背中に再び乗り、
猛スピードでウサの街へと向かった。
ウサの街へは半日程度で着いた。
街は噂通り、職人で溢れかえっていた。
俺は入口の門で、足止めを食らった。
ボーンに着いて聞かれたのだ。
竜種じゃないのかとか、
初めて見る種だ、とか。
拘束されかけたのだが、
町長のエフダさんがわざわざ門まで出迎えに来てくれたおかげで助かった。
今回の町長のエフダさんは、
数年前に選挙で勝ち、
職人階級からの初めての町長とかで、
とても信頼を置かれている町長らしい。
宿は明日からの予約でとっていたので、
今日はエフダさんの家に泊まらさせていただくことになった。
お風呂について聞くと、
やはり町長の家には付いているらしく、
結構広い浴槽を見せてもらった。
「君は綺麗好きなんだね。私の妻にそっくりだ」
「いえいえ、そんな事ございませんよ。
奥様がいらっしゃるんですね?」
「あぁ。今は街に買い物しに出かけているよ。
才能を持った拳士が来るって聞いて、
とても楽しみにしていたよ。
ところで、この間のあれはあるかい?
あの黒と緑色の…」
「冥界の王ですか?」
「そうそう!あれすごい強かったね!
私も真似しようとしたんだけど、
全くうまくできなくてねぇ?
作り方を教えてくれないかい?
出来れば妻にも教えて欲しいんだが」
俺は宿代の代わりになるならと、
二つ返事で承諾した。
エフダさんの奥様が帰って来て、
挨拶を済ませた後、
早速ゴーレムの作成講座を開いた。
エフダさんのゴーレムは、
微妙だったが奥様のゴーレムは、
とてもうまく出来ていた。
「実際はそれの中に魔法石なんかを入れて、
ゴーレムの性能を上げるんです」
エフダさん達は興味津々に俺の話を聞きながら、
試行錯誤の上、それぞれの最高のゴーレムを作り出せていた。
俺たちはゴーレムやこの町の話、
それにボーンの話で、
盛り上がりながら、楽しい夜を過ごした。




