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夢幻泡影  作者: 高瀬
1/1

夢は逆夢

誤字脱字たくさんあると思いますが読み流してくれると幸いです。


時は戦乱の世、まさに弱肉強食であり明日は我が身であった。

戦を好む者は我よ、我よと名乗り上げ武功をあげる。

または、自身の知略を巡らし大名の片腕として名を馳せる者もいた。

そして、その戦に巻き込まれるのは男だけではなかった。




「お竹!おい、お竹!窯の火が消えておるぞ!お竹!どこぞ!」

無精髭を生やした中年の親父殿が口煩く私を呼んでいる。

まったく困ったものじゃ。



「親父殿!今お竹は洗濯中です!用ならあとで聞きますゆえ」


「窯の火が消えとるんじゃ!朝の飯はどうする気じゃ!」


あれ、そもそも火を点けた記憶も怪しい…気がする。

また怒鳴られてしまうかもしれないから適当にごまかしておこう。


「分かりました。すぐに参りますゆえ」


ということで、点けてなんてなかった火をまた再度点けに行くことにした。


無事朝の仕事も終わり、親父殿と朝食を取っていると親父殿が突然神妙な面持ちで語りだす。


「お竹、お前ももう15じゃ。嫁に行きたいと考えたことはないか?」


私はいまいち炊けてない米を少しつまらせていると親父殿が優しく笑う。


「考えてなかったようじゃの。まあ、米もまともに炊けないようじゃからのう…」


と親父殿が米をわざとらしく噛む音をガリガリとするので


「違います!今日はたまたま、うっかり火を…」


と言いかけて思わず口を手で塞ぐと親父殿がガハハと笑った。


「知っとるわい。また米を研ぐだけ研いで火を点けるのを忘れておったんじゃろ。」


むむ、と顔を膨らませていると親父殿は端を置き、私にこう告げた


「お竹、突然だとは思う。が、聞いてくれ。明日、お前は小野殿のせがれと会ってはくれないか。」

「は…ひ…?」


突然すぎる親父殿の告白に、口をパクパクするしかなかった。




私は、お竹。親父殿は、昔名の知れた武将だったらしいが今は隠居中だ。

母上は私の幼い頃に亡くなっているらしく顔もおぼろげだ。

そんな事情だから、私も家事に慣れていないといけないのだが……先ほどの親父殿のやり取りの通り

かなりそそっかしく、家事も苦手だ。

食事の大半は、猪肉や鹿の肉などかなり調理の簡単な物で親父殿に我慢してもらっている。

私は女だが、狩りの才能があるらしく親父殿には幼い頃とても褒められた。

お世辞にも器量が良いとも言えず、時々農村の若者に小馬鹿にされるほどだ。


「小野…どこかで聞いたことがあるような」


そして私は正直な話、学もないので昔の偉人や諸大名の名前も覚えていないのだが。

親父殿から聞いた名前にはとても聞き覚えがあった。


「まぁ、明日こちらに参られるということは明日分かるということじゃ」


せっかく希望もなかった祝言の話。しかも親父殿が持ってきてくれた。精一杯もてなさなければ。


「果報は寝て待て、じゃ!」

早々と寝床に入り眠りについた。


その日夢を見た。


「お竹、聞いたかい?」

「なんじゃ。また熊でも出たか?」

「もう、あんたはいつもそんな物騒な話して。違うよ、うちらのお上の倅が凄く美男らしいのよ」

「お上の倅?ふーん」

「なんだい、興味ないのかい?今若い女衆ではその話ばっかりよ」

「どうせ同盟国の綺麗なお姫様と祝言されるんだ。なぜ噂するの分からん」

「あんたは少しくらい夢を持ちなさい!15でしょうが!」

「私は親父殿の世話で忙しい」

「小野忠近様…一目でも良いから会ってみたいわ…」

「惚けとるのう。ほら手を動かせ」



ドタバタと誰かが走ってくる音がする。

お竹!、お竹!と


「親父…ど…の…?」

ぼんやりと家の風景が映る。あれ、誰かが私の手を握っているような。


「親父殿…私はもう子供ではありませぬ。」

「これは、あいすまん」


聞きなれぬ声にドキりとする。夜盗か、と近くの短刀に手を伸ばす。


「安心されよ、賊ではない。そなたが、お竹殿でござるな」


若い男。しかもかなり眉目秀麗だ。だが、なぜ名を知っている。


「親父殿に、名乗らぬ者に名を名乗る必要はないと言われている。親父殿はどこじゃ!」


刀を鞘から抜き戦闘態勢に入る。男はまったく臆することがない。

こいつ、強いな。まともに相手せずに逃走経路を確保しなければ。

じりじりと間合いを取りつつ、辺りを見回す。

張りつめた空気の中、後ろからの気配にまったく気付かなかった。


「何をしよるんじゃ!このアホ娘!」

コツンと頭を叩かれる。結構痛い

「親父殿!早く逃げなければ!」

「逃げたいのはこっちじゃ!お前は誰に刀を向けとるんじゃ!」


誰って…


「この色男にですが?」

「申し訳ございません。忠近殿、このバカ娘まだ寝ぼけているようで」

「いや、こちらこそ突然失礼であった。お竹殿申し訳ない」

「親父殿!まったく飲み込めません!誰ですか!この男は」

「お前はお上の子息の名前も覚えてないのか」

「お上なんて一生縁なんてないでしょうに」

「ふむ、それは残念だったな」


不明の客人が上品な笑いながら次に私へ向かって放った言葉はあまりにも非現実的で


「今日からそなたと夫婦になる小野忠近と申す。お竹殿以後よろしく申し上げる」


「私はまだ夢の中にいるのですか?親父殿」

と聞いたらまた頭をコツンと叩かれた。

最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。

またいつか更新されます。いつか。

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