お出かけしたい魔王さま。
私は魔王をしている。
なぜかって? 親の跡を継いだだけだよ。
魔族の王なんかしてると人の国の連中には目の敵にされる。
なのでソレナリに鍛えてもいるし国としても人の国には
対抗できるだけの国力も整備してる。
自分でも頑張ってるなぁ……と思うよ。
でもね、王だから気軽に城から出歩くって訳にはいかない。
王がその辺をフラフラ歩いてたらみんな普通に生活なんか
してられないよな。
なんでこんなことを愚痴ってるかと言うと最近仕事が
順調すぎてちょっと退屈してるんだ。
王の仕事にも慣れて飽きが来始めたのかもしれない。
私の玉座はちょっとした呪いがかかってる。
私以外は座れないんだ。
まあ、座れるとしたら私と同じくらいの実力者だけど今は
私以上の者はコノ国にもコノ世界にもいないからな。
居たらしばらくでも代わってくれれば気軽に外出なんてコトができるのになぁ。
なんてことを夢想してたんだよ。
あの日は……ね。
まさか魔王の城の中に召喚陣なんかが出現するとはね。
城は対物理結界と対魔力結界が張ってあったはずなんだが
ソレは軽く対魔力結界を突破したようだ。
結果、私は異世界の神殿に召喚されていた。
おどろいたのなんのって……
魔王の私に〔勇者〕をヤレ! なんてねぇ。
コイツラの頭は大丈夫なのか? って疑っちゃったよ。
でも、ココの勇者以下対抗戦力じゃあ歯がたたなからしい。
う~ん、私って一応鍛えてるけど実は実戦経験ってほとんど無いんだよね。
だって城からすらほとんど出てないんだから……
悩んでたらドコから現れたのか妙な男がいた。
聞けば元の世界の家臣たちが私を呼び戻そうと召喚をしたそうだ。
彼の子供がソレで召喚されてしまい迷惑をかけたらしい。
まあ、家臣のしたことなんで謝ることにした。
そうしてココで〔勇者〕なんかしていいのか相談してみた。
だってソイツ……見かけの割に強そうだったし。
なんとソイツも勇者だった。
そうしてココの神さまに話を付けてくれて〔勇者〕の仕事が済んだら
元の世界に戻してくれることになった。
相手はココの魔王かと思ったら魔王は魔王でも魔族の王ではなくて
魔物の王だった。
魔族の王は騒動の最初の頃にヤられちゃったんだそうだ。
ミノタウロスがあんなに強いなんて聞いたこともなかったよ。
多分上位種に進化しちゃってたんだろうな。
〔S〕と名乗った勇者も手伝ってくれてなんとか仕留めた。
アイツってどうも私にやらせる気だったようでホントに
手伝いだけだったけど強いのなんのって……
アイツの相手なんて……ううう……こ、怖い……
なんとか元の世界に戻してもらえてホッとした。
でも、家臣どもの空気がなんだか変だった。
問い詰めたらコイツラの召喚陣で来た子供が玉座に座ってしまったと言う。
はぁ?! そ、そんなに小さい子だったってぇ!
なんと三歳にもなってなかったそうだ。
従者の男が言う事には元魔王が母親で父親は勇者だと……
あ! そうだ! 勇者〔S〕の子供だった!
な、なるほど……ソレなら納得かもしれない。
連中は元の世界に帰ったんだからこの玉座は当分の間、私専用だな。
そんな小さな子供に王なんかさせるのも気の毒な気がするし。
まあ、実戦を経験できたんで突然留守にするハメにはなったが
なかなか楽しかった。
留守になった時の対策も考えないとイケナイとは思ってなかったな。
でもソレができれば城を留守に……遊びにでかけられるかも。
家臣どもは私がいないことで大慌てだったらしいが
留守でも大丈夫なように仕込まないとな。
あの家臣どもだとちょっと苦労しそうな気もするんだけど……