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宿屋にて

〈異世界side〉

酒場でたらふく飯を食い、満足して店を出る。


薄汚れていた店内だったがそれがどこか妙に落ち着かせてくれる店だった。よくゲームなどで酒場で大笑いしている人たちがいるがなんとなく気持ちがわかった気がする。



そんなことをつらつらと考えているとふと気になったことを言ってみた。



「俺、どこに帰ればいいんだ?俺はもうルキアだからそのままルキアの生活に馴染むのがいいのか?」



「そーだね、あなたには記憶をあげたしそのままルキアの生活に馴染むのがいいと思うよ。早速家に帰ってみれば?」


エリスの同意を得つつ俺は家に向かった。









俺はルキアの家ーー宿屋だがーーに着くと入るのをためらっていた。記憶はあるがここは俺の家ではもちろんない。どういう顔をして入ればいいのか迷っていると中から1人の女の子が出てきた。



「もう、遅いじゃない。何してたの?」



金髪碧眼の女の子ーー幼馴染のアーシアがそこに立っていた。


全体的に品があるのがその風貌を見てもよくわかるほどスタイルが良く、出るところは出ていた。

街中を歩いたら10人全員振り向くだろう完成された美しさに一瞬言葉を失う。その間を取り作るように答えた。


「…ああ、悪い。闘技場に行っててね」

俺は素直に答えると


「闘技場!?、あなた戦うのが嫌いとか言って宿の仕事手伝ってたけれどいきなりどーしたの?心境の変化?」


「そんなところかな?(心境の変化どころか世界が変化したからなぁ)」



「ふーん、まあいいけれど。ところでそこにいる彼女は誰?」


そう言ってアーシアはジロジロとエリスを見る。


エリスは待ってましたとばかりにいつものように笑顔を振りまいて言う。


「私はエリスよ。ルキアとかちょっと縁があって仲良くなったの。もし部屋が空いているならばお金はあるから部屋を貸してくれないかしら?行くあてがないのよ」



多分練りに練っただろう完璧な受け答えをした。


そんなエリスを見て不審に思ったのかアーシアは怪訝そうな顔で


「ふーん?仕事をサボっておいて女の子ナンパしてたの?」


と俺の方を咎めるように見る。


「違う違う!彼女とはちょっとご縁があっただけでそういうことはないよ」


「まあ、どっちでもいいけれど。あなたにも春が来たのかな〜?と思っただけ」


そう言って俺とエリスを交互に見てニヤニヤ笑う。


その居心地の悪さに俺は身体を捩らつつ、逃げるように宿の中に入った。



宿の中はところどころボロボロでお世辞にも綺麗と言えなかったがなんとも懐かしい感じがする。


俺は早速記憶をたどりに自分の部屋に着く。



部屋はやはりボロボロだがまぎれもなく俺の部屋だ。記憶がそう答えている。



一息つきたくて俺はベッドにダイブした。そのまま寝落ちの最強コンボが発動しようとしていたところ



「ここがお前の部屋か。なかなか雰囲気出てていいじゃないか」


とエリスがどこから入ったがわからないが部屋の中でプカプカと浮いていた。


「俺今日は疲れてるんだ。お前も早く部屋に戻ってくれ」


「何を言っとる。私の部屋はここだよ?」



思考が停止する。こいつ今なんて言った?


「ここがお前の部屋って俺の聞き間違いだよな?」


「いーや、さっき嘘ついたけどお金無いし、ならここに泊まるしか無いし。」



「ダメだ!男と女が同じ部屋とか俺が眠れない!」


そう俺が素直に答えると


エリスはぬふふと笑いながら


「なんでじゃ?男と女が一緒の部屋で寝ると何か不都合なことがあるのか?」


とニヤニヤしながら言った。


こいつ分かってるのにとぼけてやがる。


「…何も無いよ。風呂入ってくる。」


俺は逃げるように風呂に直行した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺は今この状況を飲み込めずにいた。

なぜ俺はアーシアと一緒に風呂に入っているのか。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「ふぅ〜」


疲れた身体を休めるために俺は風呂に入った。


畳6畳半ほどの広さの風呂場で、タイルはモザイクかかった石が詰められ、風呂はツヤのある白い石でできている。

シャワーはどの部屋にも完備されているが風呂付きなのはここだけだ。しかも従業員しか入れないのでほぼ貸切状態だ。

風呂に浸かりながらウトウトしてしまいそのまま寝落ちしてしまった。



ジャー


そんなシャワーの音が聞こえて俺は目を覚ました。


その瞬間目を疑った。


アーシアがシャワーを浴びているのだ。


しかもタオルとかを常備しておらず、さも当たり前のようにシャワーを浴びている。



濡れた髪、水が透き通るような白い肌を滑り落ちていくそのライン、挑発的な胸とヒップ。


どれもが高校生男子の思考ーー今は戦士だがーーをショートさせるには充分すぎるインパクトだ。



「ん、起こしてしちゃった?」


そんな呑気なことを言いつつ彼女は隠そうともせずにシャワーを浴び続ける。


俺はこの状況を理解できずしどろもどろになりながらもまずはこの場を去ろうとした。


「あ、ああ、いいよ俺はもう出る」


人としてそうすべきだろうと思い俺は速やかに風呂場から脱出しようとしたがここで一つ問題が発生した。


今の俺はつまり裸であり、バスタブから出ようにも出れない。


そんなことを考えてると


「ん?なんで?いつも一緒に入ってるのに」


そんなことを聞いて俺はもう一人の俺に殺意がわくとともに、いつも一緒に入ってるなら問題無いなと自分に言い聞かせて風呂に再度浸かった。


決してこの状況を美味しいと思ってるわけじゃ無い。ほんとほんと。でもせっかくだから脳内メモリーに永久保存しよう。


そんなよこしまな考えが伝わったのか彼女はこちらを見てニヤニヤと笑う。


「ふ〜ん?ルキアは今まで私の裸見てもなんとも思わなかったのに今更意識してるの〜?

ん〜?」


と言いつつ「ほれほれ」と一糸まとわぬ身体を見せびらかしてくる。


やべえ、悩殺って本当にあるのかもしれない。今にでも頭の中が沸騰して爆発しそうだ。


俺はすぐ目をそらした。このまま見続けていたら脳内メモリーに保存するところか意識が飛んで記憶が飛んでしまう。


「そ、そういうわけじゃ…。ただ、アーシアは綺麗だなと思っただけで…」


頭がショートしてしまい思わず思っていたことが出てしまった。


まずいと思いつつ恐る恐るアーシアを見る。


すると意外にも褒められて嬉しかったのか照れつつ、今までサービスしていた裸を恥じるように隠した。


「へ、へぇ〜…。そんなに正直に答えると思ってなかったから…。ちょっと嬉しいかも…」


俺ものぼせたのかやけに顔が熱い。


あと、そんな顔しないでくれ…照れるし普通に可愛いと思っちまう。


このままではよからぬことをアーシアにしてしまうと思ったのでまだ微かに理性が働くうちに風呂場を急いで出た。



そのまま頭を冷やすために宿屋を出た。



でも先ほどまでの出来事を忘れられるわけでもなく、悶々とアーシアのことを一晩中考えていた。


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