決闘
〈異世界side〉
俺は待合室で色々と戦略を考えていた。
俺のアビリティコピーキャットは相手にダメージを一発与えないと100%利用できない難点がある。
アビリティ同士の対戦をしたこともないし見たこともないから憶測でしかないがお互いアビリティを警戒して様子見から戦いが始まると思う。俺ならそうする。
なら俺はそれをついて始まりと同時に相手に突っ込もう。長期戦になるとどうしても俺のほうが不利だ。
俺がそう決断したのと同時にコロシアムの方から大きな歓声が聞こえた。俺の出番がどうやらきたようだ。
大きな歓声に包まれながら俺と対戦相手は会場に入った。
試合開始は30秒のカウントダウンで始まる。
カウントが始まると、俺はその間に相手の風貌や武器をチェックする。
大柄な男で見るからに力押しでくるタイプだろう。武器も大きな大剣を身につけている。
大剣は隙ができやすい武器だ。そこを狙うのがいいだろう。
それに対して俺は日本刀ーー異世界なので日本刀という名前ではないと思うがーーを身につけていた。
カウントが10秒を切った。
何度もシミュレーションした速攻を頭にもう一度思い浮かべる。
俺が肩の力を抜いたのと同時に試合開始の合図が鳴った。その合図が鳴った瞬間に俺はすかさず相手の懐に突っ込む。
よし、先手は取れる。そう確信し、懐に飛び込んだ瞬間、抜刀し相手の横腹を切る。
キンッ!と火花が散る。驚くことに俺の刀は敵の体に弾かれた。
すぐさま俺はバックステップし距離を置いた。
刀が通らない!?しかも俺のアシストアビリティが働かないということは敵は微塵もダメージを受けていない。
たぶん敵のアビリティは硬化系だろう。そう整理した瞬間、右上段から大剣が俺に振り下ろされた。まずい、隙を突かれた。身体に重い衝撃が響く。俺は身体ごと吹っ飛ばされた。
だが、俺は立ち上がれた。なんとかコピーキャットが間に合ったようだ。予想通り身体の強度を上げるアビリティらしい。
「ほう、俺と同じ身体の強度を上げるアビリティか。じゃなかったら今の攻撃でお前は下半身とおさらばするところだった」
男はニヤニヤと笑いこちらを見下していた。
ランク差もあり舐められている。
まずい、相手に自分のアビリティがばれてしまった。
俺はまだこのアビリティを理解していない。
知るためには一撃与えたいところだが、身体の強度が高いのならばダメージは通らない。
今理解した。相手の武器は理にかなっている。隙ができやすい大剣を振りまわせるのは絶対的な守りがあってこそだ。
だが必ずこのアビリティは隙がある。でないとこいつがランクCにいるはずがない。
その瞬間、1つの作戦を思いついた。
これしかない。そう思い、俺はまた敵に突っ込む。
重心を下げ、刀を左上から振り下ろす。
相手はその攻撃を避けるのではなく右腕を上げてガードの体勢に入る。
予想通りーー俺はその刀を旋回させ、相手の腕の関節めがけて振り下ろした。
血が飛び散る。傷は浅いがダメージが通った。
予想的中。相手の硬化能力は関節では常時働いていなかった。関節に働いていたら腕を曲げられないからだろう。
敵の舌打ちが聞こえるのと同時に俺は右上段からくる大剣を冷静に避け距離をとる。
その瞬間、俺のアシストアビリティーーシークレットピープーーが働く。
アビリティ:メタリック
効果:身体と身につけている武器の強度を上げる。
強度を上げている面積が小さいほどその強度が上がる。
体全体の強度を常時上げるのも可能。
武器と身体を同時に強度を上げることは不可能。
箇条書きの文が敵の頭上に出てくる。
瞬時に理解し俺はまた敵に突っ込む。
剣道で鍛えた剣技を敵の身体に浴びせる。
全てが相手の身体に阻まれる。関節への攻撃も警戒され通らない。敵は大剣をしきりに振り下ろすが俺は刀の強度を上げすべてパリィして対処する。ここからは我慢比べだ。
痺れを切らした敵が武器を強化した。
俺の勝ちだ。
すぐさま守りを捨て敵の身体に刀の連撃を浴びせる。そして重心を下げた姿勢から剣を右に大きく引き、全身の体重と力を乗せた下段からの強攻撃。
血が飛び散り、敵は大きな音を立てて崩れた。
受付で報酬を貰い俺は自慢げにエリスに言った。
「どうだ。勝っただろう?」
エリスはその報酬をふんだくり
「でも危なかったじゃないか。相手が君をランクFとなめてたから安易なガードをしたんだし。じゃなかったら関節を狙うなんてできなかったでしょ?」
「そうだな。相手のメタリックには部分的にも強度を上げれたらしいし。相性が悪かったとはいえC級がこんなに強いなんて」
そうがっくりして言うと、エリスはまたいつもの調子でニヤニヤ笑う。
「まあよかったじゃないか〜。勝てたんだし。それよりこの報酬で美味しいものでも食べに行こうよ」
飯の話をされた瞬間、腹が鳴った。今日は疲れたしお腹もペコペコだ。
「勝手に人の金使うな!まあ君のおかげでこの世界に来れたし仕方ない今日は奢るよ」
「じゃあ、レッツゴー!」
俺たち2人は酒場に急いだ。