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森中さん、勘弁して下さい…………
僕の家の前に横付けされたのは天使がボンネントに佇む超高級車だった。
それによく考えてみれば、森中さんの実家の車ということはお父さんの
運転じゃないか…………
「森中さん、おはよう。森中さんのお父さんおはようございます。」
「辻村くんおはよう」
「おはよう、今日は娘をよろしく頼むな」
「はい、こちらこそご面倒をお掛けします」
どうしていいかわからない。
森中さんは楽しげだけど、お父さんはずっと黙って運転し続るだけ。
室内が静かすぎて、咳をしただけで怒られそうな気すらしてきた。
「辻村くん」
「は、はい!」
ヤバ、声が上ずった。
「君はバイクが好きかね?」
「はい、好きです」
「危ないのにかね?」
「それは父からも重々に申し付けられました、交通社会の一員として気構
えをもてと」
「ご両親は反対とかしないのかね?」
「父は反対こそしませんが、私の考えに甘えがあると叱責しました。母は
基本的に父の考えと同様のようです」
「甘えとはなにかね?」
「教習用ヘルメットを借りること前提でいたなど、安全に対して他人に
任せる考えがあったと思います」
「…………そうか」
それっきり、森中さんのお父さんは何も言わなくなった。
森中さんはニコニコとうれしそうに僕のことを見るばかりだ。
試験会場に着いた。
実技試験の時のようにガチガチに緊張するかと思いきや、スッキリした
ものだった。
というより森中さんのお父さんとのやりとりが怖すぎて、試験ごとき、
もう…………
試験はスムーズに進んだ。
引っかけ問題があったけど、前もってよく対策を練っていたからむしろ
得点源になった。
終わりに近づくと、交通社会の一員になることへの嬉しさで気が散漫に
なるのが困った。
結果発表は午後からとなり、少し早い昼食をとることにした。
試験場周辺はあまりバリエーションがないので迷っていたら、まっ赤な
顔の森中さんが包みを僕に差し出してきた。
<<クラスメイトの手作り弁当>>
俺がこんなものをもらえる日が来るとは…………
今まで女子からもらえた食べ物なんて嫌がらせのノド黒飴くらいなのに。
(妹からのバレンタインチョコは除く)
試験場の2階フロアは休憩室になっていた。
もともとガラガラだったけど、僕と森中さんのテーブルには誰も座って
こなかった。
お弁当は美味しかった。
卵焼きがうちより甘かったけど、こちらのほうが好みかもしれない。
かぼちゃが煮崩れせずにきれいなままだったので、旅館の板前さん作?
と尋ねたら怒られた。
少し失敗したけど、森中さんとの昼食はとても楽しかった。
ローマの休日の話を聞いたことがあったけど、彼女の趣味は映画鑑賞らしい。
自宅にはDVDがたくさんあるとのことで、見に来ないかと誘いを受けた。
…………でも、お父さんが怖いんだよなぁ
午後になり、結果発表が掲示されだした。
今度は試験番号順なので森中さんが先に発表されることになる。
当然のように受かってた。
なんとか、僕も受かっていた。良かった一人だけ再試験は交通費が
もったいない。
その後は写真撮影し、免許の発行となる。
森中さんは悪名高い免許写真でもきれいに写っていた。
僕は暗くなるかフラッシュたき過ぎかで、一度だけ撮り直した。
そして
<僕は免許を手にした!!>
思わず森中さんに抱きつこうとしたけど、それはさすがにセクハラすぎる
からやめておいた。
帰りはバスと電車だったけど、なぜか森中さんは機嫌が悪く口を効いて
くれなかった。




