11-2
伊吹山の頂はうす暗かった。
眺めはいいけど、厚い雲に覆われ雨が降りそうだった。
「せっかく登ったのに、天気が悪くて残念だね」
「もう雪雲が来てるのかもしれないね、このあたりは冬には積もるし」
「雪かぁ、寒いけどきれいでいいよね」
「でもバイクだと見に行けないから残念だね」
「そうだね、フフッ」
缶コーヒーを飲みながら二人で琵琶湖を楽しむ。
ふとこんな幸せがいつまで続くのかと脳裏をよぎった。
僕は高校2年、もう来年には受験生だ。
いつまでバイクに乗っていられるのだろう、5年後10年後僕らは
どういう大人になっているのだろう、相田さんと は一緒でいられるの
だろうか。
見上げる。暗い暗い空だ。
ため息を吐くその時、白いものが落ちてきた。
「辻村くん、雪だよ!雪が降ってきたよ!」
雪が舞う。僕を包むように。
空が優しく輝いていく。
相田さんの顔が見たい。
時が止まった
金の糸を身にまとう、雪の妖精がそこにいたから。
「きれいだ」
「本当すごくきれい。来てよかった」
……体を振り向ける。
「相田さん」
「はっ、はい」
「僕とつきあってください。いつまでも同じ道を歩んでください」
はい
瞳がぬれる。
かわいい耳が赤いのは寒いからじゃないはずだ。
こうして僕らは恋人になった。