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召喚王妃と世界で唐揚げ!!  作者: いちにさん
1/1

本編

ほんの出来心(笑)

油の中をたゆたう鶏肉。

こんがりと黄金色に輝いて。


ああっ!!なんて美味しそうなの!!

今日も私のからあげたちはいい感じに仕上がっている。


菜箸でつまみ上げ、油を切りつつも、うっとりとからあげを見つめる。

ああ、なんて眩く輝いてるのかしら……。

次の瞬間には、召喚されていた。






光が収まったあと、目の前にいるのは、大変な美形でした。



「そのっ、…………結婚、して欲しい。」

目は切れ長で涼しく、唇は薄く、顎はシャープなかんじ。

うん、多分きっとクール系な美形。

なんだけど、うっすらと目元が赤くなっている。

クールさは失われたが、まぁ、これはこれでアリだな。




「………………はぁ??」

なんとも間抜けな声がでた。

えっと??第一声で何をいってるかな、このイケメン。

思わず目を見開いてガン見する。



だんだんとイケメンの顔が赤くなっていくが、目をそらそうとせずに見つめ合う。

私も、相手の藍色の瞳から目をそらせなかった。






「貴女の為なら俺は何をしたっていい。……お願いだ、俺と結婚して欲しい。」


「…………」

開いた口が塞がらない。

どころでない、のも無理もないでしょ。


私は口が開いたまま、だった。




店である揚げ物屋の看板娘、沙希18歳。

本日突然見ず知らずの男性に求婚された模様です。








お互いに黙って(というか、私は驚いて固まっていた)見つめ会うこと約数分。



コンコンと控えめにノックがされる。

…………ノック、と言うことは部屋か。

音で正気に帰る。


きょろきょろと見回すと、何というか、中世ヨーロッパってかんじ??

上は絢爛豪華シャンデリア、下はふわっふわな赤絨毯に、私は後ろに手をついて座り込んでいた。


おっと、箸で摘んだ唐揚げは地面……というか床についていない。

ああ!!よかった!!




ちょっと冷静になった気がする。


テレレレン!

沙希の経験値マイナス10上がった!

冷静さ、5上がった!







目の前の美形は立ち上がり、「入れ」と一言。

背ぇ高!!きりっと引き締まった体。

運動出来そうだな。

美丈夫って奴か(違うか??)。



ちなみにドアから出てきたのは、すらりとした中性的な美形でした。


ロングな銀髪だよ!!

プラチナ!!

すっげー(白髪じゃなさそうだ)!!


瞳は水銀のようだ。



何だか美丈夫さんをみる目が凍えそうに感じるほど、冷たいのは気のせいだろうか。

私と目が合うと、思いっきり眉間に皺が寄った。



「……陛下。なぜ、天子様はその様な顔をなさっているのです??」





その言葉に美丈夫さ、……もといヘイカさんが振り返る。

「……………"その様な"顔??」



きょとんと私をみた後、泣く子もだまる素晴らしい表情(ぎょうそう)で振り返る。

つか、もともとこの顔だ。

しょうがない。



といいつつ、私はその間にもアホ面を晒し続ける。

だって頭がついていかなかったんだもの。






「まぁ、いいです。陛下、どの程度説明しましたか??」



「……………………。」

ヘイカさんは微動だにしなかった。


「……勝手に説明しますよ。」

呆れた顔をしたプラチナの髪の人。

「……いや、俺がする。」

プラチナの髪の人は器用に片方の眉を上げると、私へと向き直った。




「天子様、陛下の性格はまぁ……雑ですが、いきなり乱暴等はしないと思いますので安心してくださいね。」


私を見て言ったのだから、テンシって、私なのだろうか。

テンシ……天使か??

いやいや、沙希だし。間違ってもテンシって名前じゃない。





「ルシアン!!」

「それでは失礼しました。……ちゃんと説明してくださいよ。」

黙っていたヘイカさんが声を荒げる。




ちょっ、二人っきりにしないで!!

会話が成り立たないから!!


なんて沙希の心の声は届かぬまま、ルシアンと呼ばれた銀髪の人はそのまま帰っていった。







静かになったのは数秒の事だった。

ヘイカさんは尻餅ついたままの私の前に膝をつき、顔を覗き込む。

「大丈夫か??」


「へぁ!?」

そっと頬に当てられた右手は男らしく骨ばっていて、ちょっと冷たい印象が強い彼の顔に似合わず、優しくて暖かかった。






余談であるが、婚前の娘が男と……不埒な!!という一昔前の家庭ではないが、私自身男と付き合ったことない。


まぁ、ゆくゆくは誰かに婿にきてもらって店を次いでいく、程度にしか考えたことがない。



いや、最悪弟妹に押し付けりゃいいさ。



そう。なにが言いたいのかって。



近い!!

出会って間もない男に頬に手を当てられて!!

尚且つじっと目を見つめられ!!

さらには美形ときた!!



ハードル高!!





自分の顔にじわじわと、血液が上っていくのを感じる。





「――名前……。貴女の名前は??」

「えぁっ、…さ、沙希です。」



「………サキ。」

なんとなく嬉しそうに私の名を呟く。

「あの、……ヘーカさん??」

きょとんとすると、その冷淡な印象を持つ顔をほんのりと赤く染め上げた……のは気のせいではないと思われる。




「陛下、と言うのは役職名だ。……アシュと呼んで欲しい。」

「アシュ、さん??」

名を呼ぶと、頬を染めつつもとろけるような微笑。



さん、はいらないと強く言うのでお言葉に甘えた。








「アシュ、ここってどこなの??」

「第3大陸のライストニール。」

「………」

なんか日本じゃないとは思ったけど……混乱し過ぎると、アバウト(投げやり)に冷静になる。




只今、ソファーに座って午後のおやつタイム気取り………といっても、おやつよりリッチである。

なんていうか、英国式ってやつ??


なんでも、先先代に召喚された王妃(アシュにとってはお祖母ちゃんである)によってもたらされたらしい。


アシュってば、イギリスのクオーターなんだ。



「ってことは、私がアシュの奥さんになるために、ここに召喚されたってこと??」


先程抱き上げられて(しかも姫だっこ恥ずかしさで死ねる。爆死。)、部屋を移動してきた。


歩ける(に決まってる)と言うのをアシュは無言で切り捨て、簡単な説明をしながら今の部屋。


そして今はケーキを食べつつ、紅茶を啜る。


「あぁ、そうだな。」

と、奥さん発言を認める。

えぇっ!!まじか!?本気なのか!?

血迷ってると考えたい。



王族の契りを交わす相手は魔力が強くなくてはならない。


なんでかって??


魔力の差が大きいと相手の魔力に当てられる、らしい。

子供の魔力にも影響がでるらしい。






「…………」

「…………」

「…………」

「……………サキ。俺が夫ではだめか??」



ソファーに座っていても、図体がでかいのは一目で分かる男が上目使い。


え、なんでそんなにしょんぼりするかな。めちゃめちゃやりずらいんだけど。

これが世に聞く、"草食系"なるものなのか??

外面的には言わずもがな、"肉食系"である。



そこはさすが美形、上目使いも様になる。




「い、イヤって言うか。知り合ったばっかりですよ??あなたはそれでいいんですか??」


ここまで美形だと尻込みするわ。

と言うか、アシュは"召喚王妃"《私》で納得しているのか??




顔がよくて、頭もよろしく、さらには地位と金が……。

とくれば、見目麗しい姫君達が見合いの列をなすであろう。



と言うか、神様アシュに与え過ぎじゃない??




そう、だからちょっと個性的な顔(こっち《異世界》ではヨーロッパ系の顔立ちであるがゆえ、私の顔立ちは個性的に見える、という会見である。

自分的には人混みに紛れる――いわゆる十人並み)が珍しいのだ。


それか、見目麗しい姫君に見飽きたのか。

あぁ、美人は3日で飽きるっていうしね。




「いいのっ??て、俺はっ――――」

がたんと立ち上がる。

不自然に言葉を切るものだから、続きが気になって仕方がない。


「…………俺は??」

ついつい見上げて、アシュに催促する。




「……………いや、……何でもない。」


意気消沈とがっくり肩を落として座る。

ちなみに彼の後ろには言い表せない、しいつ言うならばズゴーンと言うような感情が見え隠れする。


なんていうか、暗雲が立ちこめるような。

じめじめをしょっていた。




そっか、アシュも大変なんだ。

そうだよね。

アシュは実質陛下であるが、肩書きは王子。

名実ともに"陛下"に即位するためには"召喚王妃"の私が必要。



そう。好きでもない私と結婚である。

しかも絶対。

私も大概可哀想ではあるが、彼も可哀想なのである、





「…………まぁいい。その話はいつかする。それで、話は分かってくれたか??」


若干疲労の見え隠れする、鋭い目元。

それにしても眼力があるな。




「うん。」

まぁ、可哀想同士仲良くやっていこうと思う。

なんか帰れないらしいし。


足掻いても無駄なのにじたばたしても……、ねぇ。





あとから考えれば、この時私は混乱しすぎて、正常ではないが(アバウトに)冷静であった。


だって出会ってすぐに結婚を承諾って。

しかもこのとき、出会って三十分未満だったらしいし。




で、そのあとアシュといろいろ話した。

ついでに一緒に召喚された唐揚げをあげたら、たいそう喜んでくれた。


揚げたてが一番である。

熱々ではなかったものの、まだ暖かかったそれを笑顔で食べてくれた彼は可愛かった。








そして一週間後。



国を挙げての結婚披露宴の直前に、アシュが唐揚げの原材料はなんだ??と質問。


色々聞きそびれて、今日になってしまった。

と(無表情だと泣きたくなるような怖さの)顔をうっすらと赤く染めて聞いてくれた。



うむ。いがいとシャイボーイ。





鳥です、と答えるものの異世界だからか、固有名詞もそこそこ違うらしく伝わらない。





アシュが内心で首を傾げたのを雰囲気で感じ取り、私が、こう羽があって、嘴があって、羽毛が〜、と説明すると彼は血の気が引いたように青くなっていた。




あとから聞いた話によれば。


私の世界で鳥類と呼ばれるものは、神の使いである。

私が詳しく鳥を説明したおかげで、国家信仰である世界神イニーリオの使いを食べたと思った彼は流石にヤバいと思ったらしい。



が、私が「アシュにとって異世界の鳥だから問題ないよ!!」と慰めた通り、後日神様からアシュに『問題ない』と届いたのも今ではいい笑い話である。



鶏肉以外の肉で試行錯誤の唐揚げを揚げつつ、女王業にも慣れ始めた。

やっぱり今までの癖(朝一で揚げ物を揚げること)は抜けないな。




最近(召喚されてから二番目に呼ばれた銀髪の(おとこ))ルシアンによれば、


ずっと好かれてるなんて思っても見なかった夫アシュが、実は私に一目惚れしてたってこと。




私が召喚されてがっかり、私もいきなり召喚されての、可哀想者同士のシャイボーイだと彼、アシュを認識していた私には到底信じられなかったのも無理もない。









多分終わり



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