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最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜  作者: 稲盛 皆藤
【第三部:伝説編 ―不滅の光と真の救済―】

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第47話:万国諸王会議終焉(世界の接続)

 泥にまみれた重厚なブーツが、ぬかるんだ大地を力強く蹴り上げる。

 ここは大陸中央部に位置する、名もなき荒野の中心であった。

 降り注ぐ冷たい雨の中、天網商会(アマ・ゾーン)の頂点、

サトシは泥だらけのまま叫んだ。


「最終ノード、接続を急げ!。

 魔導ケーブルの同期まで、

 あと300秒しかないぞ!。」


「了解っす、管理者(トップ)!。」

サトシの咆哮に呼応し、数千人の作業員たちが一斉に動く。


 彼らが敷設しているのは、単なる物資の輸送路ではない。

 マローの放つ光子エネルギーを、光の速度で大陸全土へ伝播させる、

「世界の血管」の完成であった。


 北の氷晶の王国ノルンから、南の灼熱砂漠共和国ザハラまで。

 東の覇道帝国ドラグーンから、西の自由商業都市同盟ベネトまで。


 かつては数ヶ月を要した情報の伝達。

 それが、相対性理論の壁すら超え、今、一瞬で繋がろうとしていた。


(……丸尾さん。あんたが死んだあの夜みたいな、

  暗くて寒い道は、もうこの世界のどこにも作らねえ。)


 サトシは泥を拭いもせず、巨大な光子束帯を素手で引き寄せた。

 彼の脳裏には、前世の記憶。

 深夜のコンビニの自動ドアが開き、疲れ切った丸尾一(まるお かず)が来店する、

あの日常の風景が焼き付いている。


「俺は深夜バイトのリーダーだ。

 店長が不在の夜の店は、

 俺が回してやるよ……!。」


 その時だった。

 上空の雨雲が不自然に割れ、黄金の光が荒野を照らし出した。

 神聖ローデリア教国の教皇レオンが、最後の牙を剥いたのである。

 異端審問官および聖騎士の精鋭部隊。


 万国諸王会議の成立を阻止せんとする、宗教国家の最後にして最大の特攻。


「愚かなる異端者どもよ!。

 偽りの光で世界を穢すこと、

 この神聖なる教義が許さぬ!。」


 教国の指揮官が剣を振り下ろす。

数千の魔法陣が一斉に展開し、致死量の聖属性魔力が収束していく。


 作業員たちが絶望の声を上げた。防ぐ手段など、何もない。

だが、その閃光が放たれる直前。


「――そこまでです。」


 凛とした声が戦場に響き渡った。

 サトシの前に立ち塞がったのは、かつて教国の刃として育てられた、

警備主任の巴であった。

 彼女は腰の聖剣を躊躇いなく捨て、その細い両手を大きく前に掲げた。


「我が名は巴!。

 『ルミナス・マロー・ガイア共栄国』の守護者!。

 すべての悪意は、私が引き受ける!。」


 ドゴォォォォンッ!。

 数千の聖なる砲撃が、巴の展開した防壁に直撃する。

 だが、防壁は揺るがない。

 彼女の瞳には、一切の迷いがなく、教国の呪縛は完全に断ち切られていた。

 騎士道というゲーム概念、『絶対防壁』と『挑発(ヘイト)』。

 巴の覚醒に呼応するように、サトシの持つ端末が緑色に発光した。


「最終ノード、接続完了!。

 丸尾さん、スイッチを入れろ!。」


 サトシの絶叫が通信網を駆け抜ける。

その直後、戦場の上空に、三十センチのピンク色の光球、

天冠無極光神マローが顕現した。


「神聖ローデリア教国よ。

 お前たちのやり方は、

 顧客満足度を無視しすぎている。」


 マローの言葉に、教国の騎士たちは唖然とした。

 顧客満足度とは何事か。

 神の御前で発する言葉ではない。


「祈った者だけを救済し、

 供物を捧げた者だけを愛する。

 そんな排他的なサービスは、

 今の時代には合っていないんだよ。

 ……俺の店は、年中無休の、

 二十四時間営業だからな。」


 マローがプルプルと震えながら、小さな光の腕を振り上げる。


「見せてやる。

 誰も見捨てない、

 最強のインフラストラクチャーを!。」


<< 告知。 >>

<< 万国共有インフラ・プロトコル、 >>

<< 『全波長発光レインボー』 >>

<< 大陸全土への送信を開始します。 >>

 ドォォォォンッ!。

 マローの全身から放たれた、「白銀の虹」が魔導通信網を駆け巡る。

 その光は、瞬時に大陸を一周し、二十を超える国々の王たちへと届いた。


 鉄鋼皇国バルカンでは、剛腕王ゴルムが、バラム(マロレッド)と共に、

フォトニックレールの輝きに、「これぞ生産超越だ!」と叫ぶ。


 静謐なる森のエルフ領では、大長老セレナが、ルミナ(マログリーン)の隣で、

暗闇を払うオーロラに涙した。


 覇道帝国ドラグーンでは、皇帝プーティーンが、経済封鎖の解除を願いながら、

光り輝く空に畏怖の念を抱き。


 自由商業都市同盟ベネトでは、大商人モルガンが、「おでん」の湯気の向こうに、

新たなルミナスクレジットの、莫大な利益を確信した。


 獣王開拓領フィングでは、獣王ガウルが、漆黒の魔導書を操る、

フィオナ(マロブラック)の、圧倒的な光科学の叡智に跪いた。


 魔導公国アステリアでは、大魔導公ヴァイス率いる魔物たちが、

「命名」の絆に感謝を捧げる。


 聖騎士領ローランドのリチャードは、追放したエレーナ(マロプラチナ)の正義を、

その眩い光の中に再確認し。


 暗黒大陸の影王シャドウは、「夜を許さない光」に焼かれつつも、

その深淵に潜む、マローの慈悲を認めざるを得なかった。


 光の伝播は止まらない。

 蒼海諸島連合の至純の海竜(ルミナスシードラゴン)のキング・ポコが、

深海まで届く虹の輝きに、魚人族との共栄を歌い。


 天空都市セレスティアのアルカは、地上の変化を静観するのを止め、

神官たちと共にマローを讃えた。


 氷晶の王国ノルンでは、極寒の地を温める、「光の暖房インフラ」が起動し。


 灼熱砂漠共和国ザハラでは、マローの浄化技術が、死の砂漠を黄金の沃土へ

と変えていく。


 忘却の地レムリアの古代遺跡、古龍の隠れ里ドラゴニアの頂、

精霊の箱庭スプリガンの森。


 深緑の迷宮国フォレストを、光の道標が真っ直ぐに貫き、

機巧都市ギルバートのゼンマイは、光子エネルギーを得て加速する。


 常闇の監獄島アルカトラズ。そこでは、最も野蛮な無法者たちが、

マローの放つピンク色の、あまりに気恥ずかしく温かな光に、


「……悪さをするのが、

 馬鹿らしくなっちまったな。」


と、武器を捨て、その場に泣き崩れていた。


 極彩色の楽園エデンの享楽主義者は、マローの発光を、

「宇宙最高のエンタメ」と絶賛し。


 静寂の湖畔ルナの月光派でさえ、太陽より優しいその光を、

新たな月の導きとして受け入れた。


 そして、鉄錆の荒野ジャンク。

 廃棄物が集まる地。

 そこには、サトシが整備した、フォトニックエクスプレス・

サンライズ号が滑り込み、大量の温かい物資を解き放つ。


「……なんだ、この温かさは。」


 神聖ローデリア教国の聖騎士たちが、武器を落として光の中に溶けていく。

彼らが信仰していた「神の恐怖」は、マローの「羞恥と温もり」によって、

完全に上書きされたのだ。


「誰も独りにはさせない。

 暗い夜に街灯を灯すのは、

 神様の仕事じゃない。

 俺たちの、インフラの仕事だ。」


 マローの言葉が、通信網ネットワークを通じて、大陸の全端末へ、

全広場へと響く。


 永久氷壁のアイスバーグ。世界の壁を守る無口な一族。

白氷竜の眷属ヴェルザードを中心に。

 その最果ての地においても、マローのピンク色のオーロラが、

空を優しく支配していた。


 光の中に浮かぶマローは、全大陸に自分の姿が中継され、

しかも全波長発光の副作用で、体がピンク色に輝いていることに、

致死量の羞恥を感じていた。


(……ああ、やっぱり恥ずかしい。こんな全裸でスポットライトを、

 浴びているような気分、神様じゃなきゃ耐えられないぞ。)


 だが、その羞恥の熱こそが、世界を温めるエネルギー源であった。

 孤独死を遂げた丸尾一(まるお かず)が、かつて抱いた「誰かと繋がりたい」

という切実な願い。

 それが今、物理的なインフラとして、大陸全土を結実させたのである。


「……マロー様。」


 防壁を解いた巴が、涙ぐみながら夜空を見上げている。


 泥だらけのサトシもまた、親指を立てて笑っていた。



 翌朝。

 ルミナスの議事堂には、歴史上かつてない光景があった。

 十二の主要国をはじめ、二十を超える全地域、全種族の、

代表者が一堂に会したのである。


「本日、ここに宣言いたしますわ!。

 我らルミナス・ガイア全ての国々は、

 『ルミナス・マロー・ガイア共栄国』を中心として、

 同盟を結び、運命を共にすることを!。」


 議長を務めるフィオナの宣言。

 地割れのような拍手が巻き起こり、空には祝祭のフォトニックレールが、

幾重にも架けられた。

 世界から「孤独な夜」が消え去り、全人類が「同じ明かり」を共有する、

新しい時代が始まったのだ。


 だが。

 祝祭の喧騒から離れた、天網商会(アマ・ゾーン)の暗い指令室。

 サトシは一人、モニターを見つめていた。


「……インフラが全土を繋いだ。

 だからこそ、聞こえるようになった、

 っていうわけか。」


 サトシの視線の先。

 大陸全土の通信を統括する、メインモニターの端に、赤い警告のポップアップが、

静かに、けれど激しく点滅していた。


<< 警告。 >>

<< 永久氷壁外ネットワークより、 >>

<< 未知の接続要求シグナルを受信。 >>


「……おいおい、マジかよ。」


 サトシの唇に、抑えきれない笑みが浮かぶ。

 それは、この大陸の地図にはない場所。


 未踏大陸、あるいは、さらにその先の次元からの、

「助けを求める声」かもしれない。


「……丸尾さん。

 俺たちが敷いたフォトニックレール、

 まだ距離が足りねえみたいだぜ。

 ……世界の果てまで、

 光を届けてやる必要があるらしい。」


 サトシは端末を懐にしまい、祝祭の主役である親友のもとへ、

歩き出した。

 手には、少し潰れた弁当と、これから始まる、さらなる泥沼の、

けれど最高の冒険の予感を携えて。


 最強の光神マロー。

 彼の物語は、ここで終わらない。

 一つの世界を救い、一つのネットワークを完成させた彼を、

また別の「夜」が待っているのだ。


 ――丸尾さん、無理しすぎ。

 ――廃棄じゃない弁当、

 ――まだ、山ほどあるんだからさ。


 光に満ちた大陸。

 その空を、フォトニックエクスプレス999号が、

未知なる領域を目指し、静かに発進していった。

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