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最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜  作者: 稲盛 皆藤
【第三部:伝説編 ―不滅の光と真の救済―】

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第43話:蒼海諸島連合

 潮風が、前世の記憶にある深夜のオフィス街の埃っぽさと排気ガスの混じった、

あの独特の倦怠感とは、決定的に違う、冷たく、清浄な香りを運んできた。


 蒼海諸島連合。


 この美しすぎる海域は、今、荒れ狂う暴力の渦中にあった。

俺の乗る外洋旗艦、『ルミナス・レイ』。


(……やりすぎだ。絶対にやりすぎだ、フィオナ)


 全長数百メートルに及ぶ白銀の船体。

それはかつての俺が深夜のコンビニから見上げた、どの高層ビルよりも巨大で、

どのネオンよりも眩しく輝いていた。

 光のレールを海上に直接投影し、摩擦係数をゼロへと書き換えて突き進む

その姿は、もはや船という概念を置き去りにしている。


「マロー様!。

 見てください、この流体力学を

 無視した推進効率!。

 これぞ光科学の極致です!。」


『ルミナス・レイ』の周囲で、

 海面が爆発したように盛り上がる。


「ギギ……!。

 陸の猿どもめ!。

 この海は俺たちの食い扶持だ!。

 命も、金目の物、

 全て置いて沈むがいい!。」


 醜悪な魚の頭を持った「魚人(ギョジン)」たちが、三叉槍(トライデント)を構えて

気勢を上げる。

その数は、3,000を超えていた。だが、彼らは前座に過ぎなかった。


 海面が爆発したように盛り上がり、水平線そのものが鎌首をもたげたかの

ような錯覚に陥る。

 浮上してきたのは、青白い光を放つ外殻に覆われた、巨大な「海の意志」

そのものだった。


「……海王ポセイドリス・Ω。

 この海域の最終障壁(ラスボス)、か。」


 俺の口から漏れたその名は、かつての俺の平穏を幾度となく奪った絶望の記号だ。

前世の国民的ゲームにおいて、数多のプレイヤーを引退に追い込んだ

『絶対切断の門番』。

 その手に握られた三叉槍(トライデント)が微かに動くたび、俺が敷設した

フォトニック・レールの演算値が、エラーを吐き出しながら消滅していく。


(……笑えない。マジで笑えないぞ。攻略Wikiの初手は『全バフ解除』

  からの『強制HP1固定』だったはずだ……!)


 かつてモニターの前で、カップ麺の残り汁を啜りながら絶叫したあの夜。

今、目の前に君臨する『Ω』は、あの時よりも遥かに冷徹で、

圧倒的な質量を伴って俺を射抜いている。


(……嘘だろ。しかも、あいつ、第二形態まであったはずだぞ)


「小癪な光の神よ。

 この海に夜を拒む輝きは不要。

 我が三叉槍(トライデント)の錆となれ!。」


 彼らは「奪うこと」でしか、自らの存在を維持できない。

 終わりのない競争社会に身を置き、精神を摩耗させていた、

かつての俺の同僚たちに、その濁った瞳が重なって見えた。


(……救わなきゃいけない。力でねじ伏めるだけじゃ、

  彼らはまた、闇に飲み込まれてしまう。)


 俺は一歩、甲板の先へ出た。

第六段階『至純光帝ルミナス・カイザー』。

 俺の体から漏れ出す金色の粒子が、全波長のオーロラを形成する。

 本当は「品がない、恥ずかしい」と叫び出したいほどだが、

今はこれこそが神としての威光になる。


「……検収不合格だ。

 君たちの歪んだ生存戦略を、

 俺が根底から書き換えてやる。」


 俺の声は、魔導科学装置によって増幅され、海域全体に響き渡った。


「マロー様、解析完了しました。

 ポセイドリス・Ωの魔力波形は、

 極度の飢餓と焦燥にあります。

 周囲の魔素を、強引に

 奪い合っていますね。」


 フィオナが冷静に、魔導デバイスの数値を読み上げる。


「最適化されていない弱肉強食。

 それは、誰も救われない、

 非効率な地獄ですわ……。

 マロー様、彼らに光を。」


 ルミナが胸元で祈るように手を組み、俺を見上げる。

 その信頼に応えるため、俺は右手を静かに、海面へと向けた。


光子重力干渉(ルミナス・グラビティ)。」


 ドォォォォンッ!。

 白銀の光が、一般相対性理論を超えた「重力の枷」となって、

海域全体を叩いた。


 迫りくるポセイドリス・Ωの大津波は一瞬で霧散し、海王を含む3,000超の

海魔たちは、物理的な質量の壁に押され、海面に完璧に固定された。


「……な、なんだ、この重さは……。

 海王たる我が、

 指一本、動かせぬというのか……っ!。」


「……たす……助けて、ください。

 俺たちは、ただ腹が減って……。

 奪わなきゃ、

 死ぬしかなかったんだ……!。」


 一人の魚人(ギョジン)が、海面を這うようにして乞うた。

その瞬間、俺の「羞恥心」が強い「共感」へと変わる。


 前世の俺も、そうだった。

ブラック企業の椅子を奪い合い、誰かを蹴落とさなければ、生きていけないと

錯覚していた。


「……分かればいい。

 俺の国民になるなら、

 君たちを縛る『不条理』から、

 今ここで、解き放ってあげよう。」


 白銀の光が収まると、そこにはかつての絶望の姿はなかった。

海を割る巨大な光の翼と、白銀に輝く硬質な装甲。

 それは、失われた神話の時代の『至純の海竜ルミナス・シー・ドラゴン

そのものの威容だった。


 だが、俺の視界に表示されたシステム・ウィンドウだけが、厳かな空気を

無慈悲に破壊していた。


【種族:至純の海竜(ルミナスシードラゴン)

【個体名:キング・ポコ】


(……ああああああああああ!。やめてくれ!。

 そんな格好いいポーズで『キング・ポコ』として登録されないでくれ!)


 俺の全波長発光は、羞恥心という名の燃料が尽きない限り止まることを知らない。

俺は、頬を伝う熱い涙(恥ずかしさ)を拭いもせず、皆に向かって無理やり神の

仮面を被り直した。


「……一同。彼は、海王ではない。

 今日から、我らの海路を導く

 『キング・ポコ』だ。」


「キング……ポコ……。

 なんと……、深淵な響き……!」


 感動に震えるルミナの言葉が、俺の心に致命的な追撃(ダメージ)を与える。


「……よし、検収完了だ。

 この血生臭い戦場を、

 今日から世界で一番安全な、

 『海の玄関口』に作り変える。」


 俺は、キング・ポコの額に指を触れた。

臨界点を超えた羞恥心を、建設エネルギーへと一気に変換する。


白銀の虹(ルミナス・アーク)!。」


 絶叫と共に放たれた光が、海域の物理構造を書き換えていく。

荒波を穏やかな「波のプール」へ、断崖を「クリスタル・スライダー」へ。


(うわあああ!。恥ずかしい!。

 俺はいま、海全体を巨大な海のテーマパークに塗り替えてる!)


 だが、これは単なる遊び場ではない。

この地は、世界最大の海上テーマパーク『ルミナス・オーシャン』にして、

 灼熱の砂漠共和国ザハラへと続く、新たな「命の航路」の起点なのだ。


 光科学による、「海水の真水化技術」。

 これをザハラへ輸出することで、渇きに喘ぐあの国に救済の光を届ける。

 これこそが、我が国の輸出戦略。

 物流と慈善の完璧な融合だ。


「キング・ポコ。

 君に最初の使命を与えよう。

 この聖域を絶対安全拠点として

 永遠に守護し、

 ザハラへ向かう船団を先導しなさい。」


 海を割る巨大な翼を広げ、かつての海王が、その美しい両眼に「使命」を宿した。


魚人(ギョジン)たちよ。

 君たちは今日から、

 この聖域の『アテンダント』だ。

 その醜い魚の顔を捨て、

 ゲストを導くための、

 端正な面差しを与えよう。」


 指を鳴らすと、3,000人超の魚人の顔が光の粒子となって霧散する。

次に現れたのは、彫りの深い、美しい人間の顔だ。

輝海人(ルミナス・マーマン)』への進化。

 彼らは鏡のような海面に映る「清潔な自分の顔」を見て、咽び泣いた。


 だが、インフラと教育。

 それこそが、前世のコンビニ経営で学んだ「最強の武器」だ。


「アルト、テノール!。

 出番だよ。

 新入社員の研修、

 よろしく頼むね。」


 転送門を通って現れたのは、スライムのアルト率いる、純白の制服に身を

包んだ「センパイ眷属」たちだ。

 彼らはサトシから叩き込まれた『おもてなしの魔導書』を手に、誇らしげに

整列した。


「マロー様!。

 お任せくださいっす!。

 新入社員の皆さん!。

 略奪より儲かる、

 『サービス業の真髄』を、

 教え込んであげるっす!。」


 アルトたちの熱血指導により、海域全体に活気が満ちていく。

キング・ポコも、「挨拶の角度」を学び、その目に「働く喜び」を宿していく。


 俺は、その光景を眺めながら、前世の孤独を、少しだけ許せるような気がした。

 

 その時。俺の背後で、凛とした空気が揺れた。


「……見事なものだな。」


 振り返ると、そこには神聖ローデリア教国の最高位執行騎士、

巴が、兜を外して立っていた。


「巴……君。

 俺の行い、近くで見守るんじゃ

 なかったのかよ。」


「……偽神だと思っていた。

 だが、その光がもたらすのは

 破壊ではなく、再生だ。

 略奪に明け暮れた海魔たちが、

 あんな風に、

 誇りを持って笑うなど……。」


 巴は言葉を切ると、俺の正面に歩み寄り、騎士の礼を取った。


「私は神聖ローデリア教国を捨てる。

 ルミナス・マロー・ガイア共栄国。

 君の描く『人魔共栄』の真偽、

 隣で、最後まで見極めよう。

 これからは、私の剣、君のために使おう。」


 あの強情だった執行騎士が、これほど真っ直ぐに、「転職」を決意するなんて。


「……いいのか?。

 教国に帰れば、君は英雄なんだろ。

 俺のとこに来たら、

 君はただの、新入りだぞ。」


 巴はフンと鼻を鳴らした。

その表情はどこか不器用で、わずかに頬を赤らめている。


「……勘違いしないでほしい。

 君を信じたわけではない。

 君の掲げる『効率』とやらが、

 世界を救うのかどうか、

 監視したいだけだ。

 ……それに、あのサトシとかいう男。

 あいつの無礼な態度も、

 私が矯正せねばなるまい。」


「……よろしく、巴。

 君みたいな戦力が加われば、

 これほど心強いことはないよ。」


 俺が右手を差し出すと、彼女は力強くその手を握り返した。


 ――キィィィン。


 光のネットワークが、物理的に切断される耳障りな音。

空に広がる「白銀の虹」の一部が、黒い煤のような影に蝕まれていく。


『……裏切り者、巴よ。

 汝らに、聖なる断絶を。』


 空から響くのは、神聖ローデリア教国の司祭たちの冷徹な声。

物流の阻害、精神的な重圧、そして、陰湿な経済制裁。


「……チッ。

 やっぱり、一筋縄じゃいかないな。

 サトシ!。

 教国の嫌がらせ、

 マニュアル通りに対処できるか?。」


「誰に言ってんだ、丸尾さん」

サトシの魔導通信装置からの弾んだ声が響き渡った。

「もう、手配済んでるよ。」


「さすがだ、サトシ君!

 持つべきはやはり友だねー。」

マローの愉快そうな会話に巴が割り込んだ。


「……フン。

 こんな姑息な真似、

 今の私が全て斬り伏せよう。

 マロー、君は……、

 その、どっしり構えていろ。」


 巴が俺の前に立ち、剣気を放つ。

 不器用ながらも俺を支えようとする 彼女の背中は、かつての孤独な俺には

なかった、最強の盾だ。


 ただ一つ確かなのは、俺たちは、二度と夜を許さない、ということだけだ。

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