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最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜  作者: 稲盛 皆藤
【第二部:建国編 ―人魔共栄の理想郷―】

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32/48

第32話:光神共栄国ルミナス・マロー・ガイア ~鉄錆の荒野(ジャンク)に灯る、天網の産声~

全48話の構成を守るため、削るに削れず一話に熱量を全て詰め込みました!

かなりの長編(理想の約2話分)になっています。

お時間に余裕がある時に、ゆっくり「二晩」かけて楽しんでいただければ幸いです!

 自由商業都市マリーナ・シンガでの「公開処刑」に近い国際会議を終え、

一行が向かったのは、島の北西部に位置する広大な廃棄区画――

 通称『鉄錆の荒野ジャンク』。

 今やマローの国、「ルミナス・マロー・ガイア共栄国」の領土となった、

再生を待つ死にていの土地だ。


 ゼノスが用意した巨大なキャタピラを備えた多脚型の魔導重装機、通称

『地這い』に揺られながら、マローは変わりゆく景色を眺めていた。


 だが、サトシの頭の中には既に、この荒野へ999号を直通させる、

恐るべき物流の青写真が描かれていたのだ。


 そこは、世界中から集まる物資の成れの果てが積み上げられた、

巨大な鉄の墓場だった。潮風に焼かれた魔導機械の残骸、用途不明の

魔石の欠片。


 そこには、行き場を失った多種族の浮浪者が居た。

 旧世界の釜ヶ崎を彷彿とさせる、年季の入った「元現場の男たち」。

潮風に焼かれた顔に、深い皺を刻み、ワンカップの酒に似た

魔導薬の瓶を焚き火のそばで転がしている。

 

 かつては大陸の巨大建築を支えていたであろう、節くれ立った大きな手。

だが今は、消えかかった街灯の下、明日の仕事も、寝床もないまま、

幽霊のように静かに蹲っている。

 

 彼らが吐き出す紫煙と、「……ケッ、今更何が光だ」という掠れた呟き。

それは、世界から切り離された男たちの、剥き出しの虚無感だった。


 重苦しい空気と、錆びた鉄の匂い。それは、かつて丸尾一(まるお かず)としての

人生を終えたあの夜の、湿ったアスファルトの匂いに、どこか似ている

ような気がした。


「……サトシ。ここ、僕が死んだ時の夜の道に、

 少し似ているんだ。暗くて、冷たくて。

 誰も、見てくれない。」

青年勇者の姿のマローは、かつての深夜残業の帰り道を思い出して、

小さく身震いする。その体からは、彼の不安を映し出すかのような、

冷たく透き通った青白い光が、弱々しく漏れ出していた。

それはまるで、今にも消えそうなあの夜の街灯のようだった。


 孤独な死。あの時、消えた街灯の下で感じたのは、世界から

切り離されたような、剥き出しの虚無感だった。


 その隣で、サトシは胸に輝く金色の『A→Z』のバッジを親指で弾き、

力強く笑った。


「だからこそ、ここを『不夜城』にするんすよ、丸尾さん。

 あんたの光が届く場所なら、ゴミだって資源に変わる。

 俺が前世のコンビニで学んだのは、棚に並んでいない

 モノこそが、次のヒット商品になるってことっす。」


 サトシは、背後に控えていたドワーフの巨漢、バラムと、短く視線を

交わした。

 バラムは、その太い腕を組み、不敵な笑みを浮かべて頷く。

サトシという男の「合理的な設計」に、職人としての一流のプライドが

応えようとしていた。


 バラムは、マローから分け与えられた「赤の波長」を全身に漲らせ、

その分厚い肌を灼熱の溶岩のように発光させている。


「おう、サトシの旦那。設計図プラン

 完璧に頭に叩き込んだぜ。

 マロー様の『熱源ソース』さえあれば、

 一晩でこのゴミ溜めを『宝箱』に変えてやるよ。」

バラムの足元から、地響きのような唸りが上がる。


 これが彼の超越能力――

【マロレッド・定着】。

 マローが放つ光子エネルギーを、熱として、そして質量を持つ

『物質』として空間に固定する、ドワーフの生産術の究極系だ。


「よし……。じゃあ、マロー様。

 ちょっとだけ、例の『恥ずかしいやつ』、お願いします。

 建設用の高出力エネルギーが必要なんで。」


 サトシがニヤリと笑う。

 マローは嫌な予感に、その凛々しい肩を強張らせた。


「ま、待って。さっきの会議の、

 あの羞恥心で、さっき爆発したばかりだよ。

 もう、精神的なMPが空っぽなんだってば……!」


「大丈夫っすよ。ほら、これ。

 ゼノスの旦那から預かってきた、

 あの国際会議の『マロー様ファンクラブ設立届』の束。

 あと、さっきの皇帝から届いた、熱烈な

入婿いりむこ打診の親書』っす。」


「……っ!?」

マローの脳内で、先ほどまでの「公開処刑」の記憶が、

鮮烈なフラッシュバックを起こす。

 青年勇者の姿で、世界を救う凛々しい演説をしたはずが、

結果として世界中の権力者に「守ってあげたい」という狂った

信仰を植え付けてしまった事実。


(毎晩、隣で、輝いていてほしい……?)


 その一文が脳裏をよぎった瞬間、マローの思考回路が焼き切れた。


「うわあああああああ!

 やめろおおお!

 思い出させないでえええ!」


 羞恥の臨界点を突破したマローの体から、暴力的なまでの

全波長光子波が放射された。

 極光神へと進化したその力は、恥じらいという負の感情を燃料にして、

無限の輝きを放つ。

 マローは涙目でサトシの裾をギュッと掴み、顔を真っ赤にして縮こまった。


 その背後には、繊細な白銀の虹のような後光が、幾重にも重なり夜空を

白銀に染め上げていく。


「計測開始ですわ!

 マロー様の赤面度上昇に伴い、

 赤外線領域の熱量が最大値に到達!

 バラム様、チャージ完了ですわ!」


 フィオナが即座に、最新の魔導タブレットを操作し、その奔流を解析

・誘導していく。


「よっしゃあ!マロレッド、出力全開!

【極光熱・一晩建立ワンナイト・ビルド】!」

バラムが両拳を大地に叩きつける。


 マローから溢れた羞恥の熱が、バラムの魔力を通じて『鉄錆の荒野』の

残骸を飲み込む。錆びた鉄屑は瞬時に融解し、バラムの意図するままに、

幾何学的な構造物へと再構成されていった。


 そこには、マローが前世で見た、怒号の飛び交う過酷な建設現場の影は

ない。ただ、整然とした光の粒子が、精密なパズルを組み立てるように

静かに、しかし光速で巨大な建物を形作っていく。


 ルミナが白銀の杖を掲げ、近くで震えていた浮浪者たちに柔らかな

光の粉を振りまいた。

精神浄化メンタル・クリーン』。


「皆さん、怖くないですよ。

 この光は、皆さんの新しい家を建てるための、

 優しい光ですから。」


 絶望を安酒で流し込み、「もう人生、上がりや」と背中を丸めていた

男たち。その濁った瞳に、かつてない安らぎが染み込んでいく。

 

 それは、単なる慈悲ではない。バラムが叩き出す鉄の音と、

マローの極光が照らし出す、自分たちがまだ「役立てる」

という名の、明日への現場。

 

 失われていた「職人の顔」が、極光の反射を受けて、その深い皺の奥で、

静かに、熱く、燃え上がった。

 絶望に沈んでいた彼らの瞳に、かつてない安らぎと、「仕事」という

名の希望の光が、マローの極光に反射して宿る。


 マローは、涙を拭いながらそれを見つめていた。


「……すごいな。

 あんなにボロボロだったみんなの目が、

 あんなに輝いてる……。

 仕事って、本当は苦しくて、自分を

 削るだけのものだと思っていたのに……。」


 マローの視線の先では、『人生あがり』を決め込んでいた男たちが、

バラムの構築した最新鋭の設備を前に、まるで宝物を見つけた

子供のように、熱心に議論を始めている。


「……あんなに嬉しそうに

 働く現場なんて、

 僕、初めて見たよ……。」


 前世のブラック企業で、納期に追われて心身を削り、深夜の

暗闇で果てた自分。

 その魂の傷が、目の前の「光科学による建設革命」によって、

静かに癒されていくのを感じる。


 ――明け方。

 霧が晴れた『鉄錆の荒野』には、昨日の面影はどこにもなかった。

中心にそびえ立つのは、巨大な全天候型物流倉庫。


 その壁面には、サトシのバッジと同じ、マローの極光を反射する

巨大な『A→Z』のロゴマーク。

『天網商会アマ・ゾーン:マリーナ・シンガ第一配送センター』が、

朝日と共に産声を上げたのだ。


 周囲には、整然と並ぶLED風の魔導街灯。

 アスファルトのように滑らかな光子定着路。


 倉庫の入り口付近には、24時間営業の「直営店舗」が併設され、

そこにはサトシが会議で交渉をまとめてきた、

 湯気を立てる「おでん」の什器まで完備されていた。


「丸尾さん。

 これが俺たちの『光の街』のインフラっすよ」


 サトシは誇らしげに親指を立て、広大な敷地を指し示した。

そして、傍らに控えるカイルへと合図を送る。


「カイル、頼むわ!」


「おう、待たせたな」


 最短波長の青い光を纏ったカイルが、一瞬で現れた。

その背後には、同じく青いジャケットを着た多種族の

『検収チーム』が整列している。


「丸尾さん、彼らは倉庫の管理から

 品質チェック、配送までを秒単位で

 こなす、物流のスペシャリストっす。

 不良品は一個も通さない。

 ここじゃ『カイル便』の

 看板背負ってるんで」


 サトシの言葉通り、彼らの動きには一切の無駄がない。

それはかつてマローが深夜のコンビニで見た、テキパキと検品をこなす

サトシの姿そのものだった。


「マロブルーの機動力、最高だぜ。

 この拠点さえあれば、島の端から端まで、

『15分』でいける。

 文字通り、光速のデリバリーだ。」


 サトシは満足げに頷き、マローを振り返った。

「……あー、サトシ、さん。

 あのアマ○ンの倉庫と配送を

 一つにしちゃった感じ?

 ……すごいね、本当に。」


 マローは、目の前でテキパキと動く多種族のチームを見ながら、

かつて深夜の日本を支えていた巨大インフラの幻影をこの異世界に

見ていた。


「これで、もうこの島から『夜の空腹』と

 『孤独な暗闇』は消えますね。」


「……あ、丸尾さん、

 ちなみに。この倉庫の運営資金、

 さっきの『マロー様神光ブロマイド』の

 先行予約で、十年分くらい稼げましたよ。」


「……っ!!」


 マローの体が、再び鮮やかなパステルピンクに輝き出す。


「売るな!そんなもん売るな!

 っていうか、僕の恥ずかしいポーズの紙切れに、

 そんな価値なんてないから!」


「いやぁ、需要と供給のバランスっすよ。

 エリアマネージャーとしては、

 在庫(マロー様の肖像権)は

 有効活用しないと。」


 サトシの軽口に、仲間たちがどっと沸く。


 かつてのゴミ溜めは、今や世界で最も明るく、活気ある「不夜の拠点」

へと生まれ変わっていた。


 地平の端で、深い紺青と淡い金色の境界が静かに溶け合うように繋がる。

それはかつてマローを孤独に突き落とした「闇」が、自身の望んだ

「光」へと生まれ変わる儀式のようだった。


 マローは、新しく完成した、決して消えることのない街灯の下に立ち、

その光の波紋を眺めていた。


 自分の掌を見つめる。あの日、街灯の下で冷たく震えていた指先が、

今は朝日の熱を吸い込んで、世界を優しく照り返している。


 境界は、もうない。夜は、もう許さない。


(……二度と、夜を許さない。……けど、サトシのあの商魂にだけは、

 神様もお手上げってところかな。)


 ルミナス・マロー・ガイア共栄国。

その「光のインフラ」は、物理的な夜だけでなく、人々の心にある

「諦め」という名の闇をも、一晩で焼き尽くしていった。

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