表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜国民的ゲームの主人公になって、絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜  作者: 稲盛 皆藤
【第一部:黎明編 ―光神の目覚めと仲間たち―】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/12

第3話:交差する運命と、遠い湯気

 石門の修復を終えた村には、活気が戻りつつあった。バラムの指揮のもと、村人たちが瓦礫を片付け、避難していた者たちも戻り始めている。私はといえば、神殿の廃墟の片隅で、フィオナが用意してくれた寝床――とは名ばかりの、柔らかい布の山の上で浮いていた。


 実際、あの門の修復にはかなりのエネルギーを使った。核の芯が、少しだけ熱を持って疼いている。


「マロー様、お疲れではありませんか。  何か、私にできることがあれば……。」


 フィオナが心配そうに覗き込んでくる。私は「大丈夫だ。」と光を揺らして答えた。だが、その直後、私の周囲を漂う空気が、食欲をそそる芳醇な香りに満たされた。


 日が落ち、野営の準備が始まったのだ。バラムが器用に薪を割り、焚き火を起こす。その上で、フィオナが大切に持っていた干し肉と、村人から譲り受けた香草を煮込んだスープが完成した。パチパチとはぜる火を囲み、三人は美味そうにスープを口に運び始める。


「……美味い。仕事の後の飯は、これに限るな。」


 バラムが豪快に笑い、木製の器を傾ける。フィオナもまた、幸せそうに目を細めた。


「はい。体が芯から温まります。」


 楽しげな咀嚼音と、温かな湯気。それを少し離れた場所から、私はただ浮いて眺めていた。今の私には、胃袋もなければ、味を感じる舌もない。


(……美味そうだな。あの肉、柔らかそうだ。)


 前世の記憶が、不意に脳裏を掠める。深夜残業の帰り道、コンビニのレジ横で見かけた脂っこいホットスナック。疲れ果てた舌で感じた、あの塩辛い「生きてる味」。決して贅沢ではなかったが、あれは確かに、俺という人間を繋ぎ止める大切な儀式だった。


 今の私は神様と呼ばれ、圧倒的な力を振るっている。だが、この温かな輪の中に入って、同じものを「美味い」と共有することだけは、どうしてもできない。 (……俺は、光なんだよな。もう、人間じゃないんだ。)


 光核の芯が、キュッと締め付けられるように疼いた。その切なさに呼応するように、私の身体から、青みがかった寂しげな光が漏れ出す。


「……マロー様。 あんた、腹が減ってるのか。」


 バラムが不意に、湯気の立つ器を私に差し出した。


「食えねえのは分かってる。だが、その……なんだ。

 あんたの光は、空腹のガキみたいに震えてるぜ。」


 図星だった。私は少しだけ、その温かな湿気に身を委ねる。


「……あったかいな。いつか、みんなで。 同じものを食べて、『美味い』って。

 そう言える日が来るといいな。」


 独り言のような呟きに、フィオナが力強く頷いた。


「はい! 私が、最高のお料理を作りますから!」


 その温かな空気を切り裂くように、村の入り口から凛とした声が響いた。


「……信じられません。この地を蝕んでいた、 大暗黒の残滓が消えているなんて。」


 月の光を織り込んだような銀髪をなびかせる、一人の美しい女性。エルフのルミナが現れたのは、まさにその時だった。彼女は門に触れ、驚愕に目を見開いている。


 バラムが鼻を鳴らし、私のいる場所を顎で示した。


「おい、ルミナ。 あそこに浮いてるお方が直したんだ。

 ……光の神、マロー様だ。」


 ルミナの視線が、私を捉える。彼女はゆっくりと歩み寄り、私の前で優雅に膝を突いた。


「失礼いたしました。私はエルフの聖女、ルミナ。

 ……マロー様、貴方は本当に、この地を救うために降臨されたのですか。」


 問われ、私は反射的に身構えた。前世で、上司に責任を詰め寄られた時のような緊張感が走る。


「……救う、なんて大それたことは言えない。

 ただ、壊れたままなのが、見ていられなかっただけだ。」


 正直な気持ちを口にすると、ルミナはふっと微笑んだ。


「壊れたままなのが、見ていられない……。

 それは、慈悲という名の光ですね。」


 直後、私の体がボフッと鮮やかなピンクに染まった。


「……違う。慈悲とか、そういう高尚な……。ただの、こだわりだ。」


 逃げ場のない「肯定」を浴びて、私は激しく動揺する。ルミナは私の光を見つめ、切実な声を漏らした。


「マロー様。お願いがございます。 私たちの森も今、

 癒えぬ闇に侵されようとしています。どうか、その光で助けてください。」


 前世で誰にも必要とされなかった俺が、ここでは、次々と誰かに求められている。


「……わかった。約束する。

 俺が、君たちの森も照らそう。」


 こうして、一粒の光と、個性豊かな仲間たちの旅が、本格的に動き出すこととなった。

もしよろしければブックマークや評価で応援よろしくお願いします。

メジャーデビューした時に、「私が最初で最古の推し」と自慢して下されば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ