表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜  作者: 稲盛 皆藤
【第二部:建国編 ―人魔共栄の理想郷―】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/48

第24話:共栄圏の夜明け、最初の試練

「……光の街への全街道が、完全に封鎖されました。

 聖教国を中心とした六国連合による、『ルミナス・禁輸条約』の締結。

 これにより、我が国への穀物、及び衣類の流入は停止しました。」


 リグ事務局長の重苦しい報告が、静まり返った光子官邸の管制室に響く。

先日敷設したばかりの『情報の光』は、今、マローに冷酷な現実を、

突きつけていた。


「笑わせるな。」


 ドワーフのバラムが、分厚い拳を鉄製の机に叩きつける。


「俺たちの魔導具や鉄道の恩恵は存分に受けておきながら。

 自分たちの腹が減りそうになれば、即座に門を閉じるとはな。

 恩知らずの連中め!」


「怒っても腹は膨れませんわ、バラム様。

 今は現実を見るべきです。」

エルフのルミナが、悲しげに蒼い瞳を閉じる。


「街の中核となる住民は、すでに三千人を突破。

 さらに近隣の村々からは、『街ごと傘下に入りたい』という

 悲痛な申し出が、一日に何十件も届いているのですから。」


 マローの『光』は、今や単なる照明ではない。冬でも凍えず、夜でも魔物に

怯えなくて済む、多種族にとっての、『生存の絶対条件』へと進化していたのだ。

 だが、その期待の光が大きければ、食糧難という影もまた濃く落ちる。


 マローは、空中を漂いながら、激しく、鋭く、明滅していた。

これは羞恥心ではない。前世で何度も味わった『理不尽』に対する、

丸尾一(まるお かず)としての静かな怒りだった。


(……コンビニの納品が、大雪で完全に止まった時のことを思い出すな。

 あの時も、客は店員を怒鳴り散らし、店長は本部に頭を下げ続けた。

 でも、今は違う。俺はもう、頭を下げるだけの店員じゃない。)


「カイル。フォトニック・エクスプレスの、

 現在の稼働状況を教えてくれ。」


 マローの問いに、騎士カイルが鋭い眼光を向けて答える。


「妨害工作により、一部のレールが物理的に、破壊されています。

 ですが主力車両『サンライズ号』及び『999号』などは、

 稼働可能です。

 しかし、周辺国がレールの、立ち入りを公式に、

 拒否している以上、物理的なルートがありません。」


 今やレールの上を走るのは一編成ではない。

食糧を運ぶ『サンライズ号』をはじめ、複数の『999(スリーナイン)型』車両が、

マローの神経(光ファイバー)に連動して無人で街を駆け巡っている。


「ルートがないなら、作ればいい。

 ……いや、物理的な概念を、俺たちの光で、

 塗り替えてしまおう。」


 マローの体が、青白い静かな光から。

意思の強さを物語る黄金色へと、劇的な変化を遂げた。

 その神々しさに、フィオナが呟く。


「……尊い。

 支配者の輝きですわ。」


 彼女はタブレットのシャッターを、無意識に連打し始める。


「フィオナ。先日成功させた、『遠隔操作魔法』。

 あれを、レールの制御システムに、応用できるかい?」


「……!

 もちろんですわ、マロー様!

 光子信号による、『空間干渉』と『軌道固定』。

 これを使えば、レールが物理的に寸断されていても。

 マロー様の光さえあれば、列車は虚空を走れますわ!」


「いいだろう。これより、第一次・経済反撃作戦を開始する。

 彼らは鉄道を、便利な乗り物だと思っている。

 だが、違うんだ。諸君!

 これは、この大陸の、喉元を掴む『物流兵器』だと、

 教えてあげようじゃないか。」


 マローの言葉に、その場の全員が息を呑んだ。

かつて社畜として、物流の末端を支えていた男が。

今度は『物流の支配者』として、牙を剥いた瞬間だった。


 マローは光ファイバー網を通じて、大陸全土にメッセージを放った。


「六国連合の諸君。君たちが閉ざしたのは、

 ただの街道ではない。自分たちの未来だ。」


 作戦は、あまりにも鮮やかだった。

 マローが放つ、圧倒的な光子エネルギーが。

 夜の闇を切り裂き、寸断されたレールの上に、『光の橋』を架ける。

 それは、マローが前世で憧れた、あの銀河を駆ける鉄道の姿。


 無人で暴走するかのように、加速するサンライズ号。

封鎖線を嘲笑うかのように、光の速さで、空中を駆け抜けるその姿は。

 地上で見上げる連合軍の兵士を、恐怖のどん底に突き落とした。


「サトシ君、準備はいいかい?」


『ああ、いつでもいけるぜ、丸尾さん。』


 通信の向こうで、サトシが不敵な笑みを浮かべる。


『あんたが列車を走らせて、光の街の健在」をアピールしてくれたおかげで。

 周辺国の市場は大パニックだ。商人たちは、光の街と、

 敵対すれば技術も魔法も失うと確信した。

 今、一斉に自国の通貨を売り払って……。

 「ルミナス・クレジット」への両替に殺到してるぜ。』


 そう、マローが鉄道を走らせた目的は単なる食糧輸送ではない。

『光の街』というブランドの、信用を絶対的なものにし。

周辺諸国の通貨価値を、暴落させることで、経済的に相手国を支配下に置く、

『通貨戦争』を仕掛けたのだ。


「……鉄道模型にある時期没頭していた、前世の孤独な趣味の一つが。

 まさか他国の経済を、破壊する力になるなんてね。

 皮肉なもんだ。」


 マローは自嘲気味に呟いた。

 かつて深夜、一人で精密なレールの模型を磨き、

理想の街を夢想していた自分。

 その純粋な『構築』の意志が、いまや国家を揺るがす

『支配』の手段に変貌している事実に……

 マローの光が『もじもじ』と、居心地悪そうに揺れた。


「……マロー様。また、体がピンク色に発光していますよ?」


 フィオナがタブレットを片手に、薄笑いを浮かべて近づいてくる。


「あ、いや。これは……その。

 自分の性格の悪さに、ちょっと自己嫌悪というか……。

 恥ずかしくてだな……。」


 光の球体は、羞恥心により、淡い桜色から、鮮やかなピンクへと。

『ぷるんぷるん』と震えながら、変化していく。



 一方、聖教国の深部、『至聖所』では......。

 この経済敗北を受け、教団最高位の執行騎士、トモエが。

 静かな、しかし冷徹な殺気を帯びて、主の前に跪いていた。


「……神の光だと? 傲慢な。

 あれは信仰を奪う魔の輝き。

 この私が、その偽りの光を、

 断ち切りましょう。」


 教団長は頷き、その傍らに控える聖騎士、エレーナを指し示した。


トモエよ。まずは視察員として、エレーナを送り込め。

 奴らの『光の正体』を暴き、内側から崩すのだ。 

 ……夜を忘れ、闇を恐れぬ者に、真の絶望を教えてやろう。」


 光の街は、最初の試練を、『経済』という名の、 

無血の武力で鮮やかに乗り越えた。

 だが、その勝利は、周辺国の恨みを買い、聖教国という巨大な蛇と、

その最強の牙である、トモエを本格的に、目覚めさせてしまった。


 建国祭への準備が進む中。

マローの心には、サトシが進める『巨大商流』への、一抹の不安と。

拭いきれない前世の影が、消えないノイズとして、響いていた。


 (俺は、本当にみんなを、幸せにできているんだろうか。)


 光が強まれば強まるほど、運命の歯車は、後戻りできない場所へと、

加速していく。

 それでも、マローは止まらない。

 二度と、あの孤独な夜を、誰にも味わせないために。

もしよろしければブックマークや評価☆☆☆☆☆などで応援をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ