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最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜  作者: 稲盛 皆藤
【第二部:建国編 ―人魔共栄の理想郷―】

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第23話:光科学・通信網の開通

「あーあーマイテス。……本日は晴天なり?

 テステス。マイクテスト。

 光の街の皆さん、おはよう。元気ですかー。

 (わたくし)はマローです。」


 街中の街灯、駅のホーム、そして家庭に配られた魔導端末から。

穏やかで、少しだけ照れを含んだ「声」が流れる。


 フィオナが陣頭指揮をとり、フィオナ直属の部下たちが魔法技術を

駆使して敷設した光ファイバー網に乗せ、

通信魔法の応用で空気振動魔法を使った、世界初の「試験放送」だった。


 マローは無自覚だが、その声は神の権能により、聞く者の心を癒やす、

究極のアルファ波を帯びている。


 放送中、緊張のあまりマローの光がピンク色に、

「ぷるぷる」と震える様は、まさに破壊的な愛らしさであった。


「マロー様! 完璧ですわ!

 音声の減衰率、わずか0.02パーセント!

 これで『情報の光』が、我々勢力圏全土を網羅しました!」


 光子官邸の管制室で、フィオナが狂喜乱舞しながらコンソールを叩く。

彼女の背後には、カイル、ルミナ、そしてバラムといった主要メンバーが

揃い踏みしていた。


「凄まじいな……。今までは伝令を飛ばして数日かかっていた報告が、

 瞬時に届くとは。」


 カイルが驚愕の面持ちで端末を見つめる。


「これなら、不審な動きがあれば即座に動ける。

 マロー様、これは単なる放送ではなく、究極の『防衛網』です。」


「ああ。でも、あまり監視を強めすぎるのも、考えものだよ。

 元バイトリーダーが言ってたけど、防犯カメラが多いと

 一目で分かる店は、客もスタッフも緊張するよ、ってね。」


 マローは苦笑混じりに光を揺らした。

その時、ルミナが優しくマローの光に触れた。


「マロー様。あなたの声が届くたび、人々の不安が消えていく。

 街全体の波長が整うと、精霊たちも喜んでいますわ。」


「……そうだと、いいんだけど。」


 マローはふと、前世の記憶を反芻する。

深夜のオフィス街。孤独死した自分。

 あの時、もし一本でも、電話をかけられる相手がいたら。

もし自分の「助けて」という声が、誰かの端末に届いていたら。


 (俺の声は、誰にも届かなかった。でも、今は……。)


 数万の民が、自分の声に耳を傾け、安心した顔で仕事を始めている。

届かなかった「丸尾一(まるお かず)」の声が、

今、時空を超えて「情報の光」として結実していた。


「しかし、マロー様。

 このシステム、少し『便利すぎる』かもですぞ。」


 ドワーフのバラムが、顎髭をいじりながら、モニターを指差した。


「この通信網を使えば、遠く離れた場所の魔導具を、

 ここから直接動かせるんじゃないか?」


「ええ、その通りですわ!」


 フィオナが瞳を輝かせて割って入る。


「光子信号をバイパスすれば、国境沿いの防衛兵装を、ここから『遠隔操作』。

 兵を危険にさらさず、マロー様の意志一つで敵を殲滅できる……。

 究極の無人防衛システム!」


 その言葉に、室内が一気に凍りついた。


「……遠隔操作で、人を撃つのか?」


 マローの光が、血のような赤に一瞬だけ染まる。


「それは……それは、俺が望んだ、『光』じゃない。」


「ですが、マロー様。周辺国の経済包囲網は、

 日増しに強まっています!」


 リグ事務局長が、厳しい表情で割って入る。


「聖教国の息がかかった商人たちが、食糧や

 魔石の流入を遮断しました。

 このままでは、冬を越せぬ民が出ます。

 平和を守るための武力は、必要不可欠です!」


「……リグ様の、言う通りですわ。」


 セレナが悲しげに俯く。


「信者の間でも、この街を『魔王の巣窟』と呼ぶ声が、

 広がっています。

 光が強ければ強いほど、外側に落ちる影も、

 また濃くなるのです。」


 重苦しい沈黙を破ったのは、カイルの報告だった。


「マロー様、フォトニック・レールの第三区画で、

 レールが物理的に破壊されました。

 連合軍による、明らかな宣戦布告なき妨害工作です。」


「ついに実力行使に、出たか……。」


 マローは、サトシの言葉を思い出す。

 『丸尾さん、店を守るってのは、掃除するだけじゃねえんだ。

  時には、万引き野郎を全力で追い出す覚悟も必要なんだよ。』


「……フィオナ。君が言った、『遠隔操作』。

 研究は続けてくれ。」


 マローの光が、静かに、しかし冷徹な青白さに変わる。


「ただし、それは、人を殺すためじゃない。

 この街の『血管』である、物流を守るためだ。

 ……カイル、全警備隊に告ぐ。

 これより、フォトニック・レールの

 『特別運行モード』へ移行する。」


 マローは通信網を通じて、街全体に布告した。


「光の街の民よ。もうあんな夜の闇は来ない。

 私が、この道の先を、照らし続ける限り。」


 その放送を、国境付近の馬車の中で聞いていたサトシは、

耳につけた魔導イヤホンを外してニヤリと笑った。


「丸尾さん、いい声出すように、なったじゃねえか。」


「……さて。こっちも、

 『情報の光』を、利用させてもらうぜ。」


 サトシの手元には、通信網の隙間を縫ってやり取りされる、

周辺諸国の機密経済データが積み上がっていた。


「レールを壊したところで、もう遅いんだよ。

 あんたたちの国の財布は、もう俺の……いや、

 丸尾さんの、手の内だ。」


 勢力圏全土およびその周辺国家にまで届く声を手に入れたマロー。

だが、それが平和を呼ぶ福音であると同時に、

世界を焼き払うかも知れない『情報の引き金(トリガー)』になり得ることを。

 この時の俺はまだ、痛感してはいなかった。

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