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最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜国民的ゲームの主人公になって、絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜  作者: 稲盛 皆藤
【第一部:黎明編 ―光神の目覚めと仲間たち―】

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第2話:絶望の門と、頑固な守護者

 フィオナに案内され辿り着いたのは、深い谷の間に築かれた小さな集落だった。だが、そこにあるのは希望ではなく、今にも崩れ落ちそうな絶望の光景。村の入り口にある巨大な石門は、度重なる襲撃か、あるいは経年か。無数の亀裂が走り、無残に傾いでいた。


「バラムさん! 光の神様を連れてきました!」


 フィオナが声を弾ませて駆け寄る。門の影から現れたのは、岩をそのまま擬人化したような屈強な男だった。煤けた革のエプロンを纏い、手には巨大なつるはしを握っている。彼こそがこの集落の防壁を一手に担う、ドワーフの技術者バラムだった。


 バラムはフィオナの言葉を聞くと、面倒そうに鼻を鳴らし、私をジロリと一瞥した。


「……おいおい、フィオナ。腹が減って幻覚でも見たか? どこに神様なんていやがる。」


「目の前にいらっしゃいます! この、マロー様が!」


 フィオナが私を指差す。私は気まずさに耐えかね、ふわりとバラムの目の前まで浮上した。


「……あー、ええと。はじめまして。マローです。」


「……はぁ?なんだ、この浮いてるピンク玉は。」


 バラムはあからさまに、汚いものを見るような目を向けた。


「光の神だぁ?  笑わせんじゃねえぞ。 どっかの魔物が吐き出した、

 ただの不気味な光り滓だろ。」


「光り滓……。」


 前世の社畜時代。「お前は代わりがいる部品だ。」と言われた記憶が、チクリと胸を刺す。


「いいか、小娘。この門が崩れたら村は終わりだ。俺は忙しいんだよ。

 そんなヘンテコな魔物と遊んでる暇はねえんだ。」


 バラムはつるはしを肩に担ぎ、私を邪魔だと言わんばかりに手で払いのけた。


「光ってるだけで何ができる。そんな軟弱な灯りで、  

 この重い石が支えられるかよ。 消えちまいな、この出来損ないが。」


 バラムの言葉は、鋭く重い。彼は再び崩れゆく門に向き直り、震える足で巨大な石を支え始めた。その背中には、過酷な労働による無数の生傷。限界を超えてなお、自分の責任を果たそうとする意地だ。


(……ああ。この人、俺と同じだ)


 ボロボロの体で、誰にも頼れず、ただ崩壊を食い止めようとしている。


「……マロー様。すみません、バラムさんは  余裕がなくて……。」


 フィオナが申し訳なそうに俯く。だが、私は怒っていなかった。むしろ、静かな熱が光核の芯に灯る。 (……見てろよ、頑固親父。『ただの光』が、何を変えるのか)


 私はバラムの制止を無視し、大きく軋みを上げる石門の、最も深い亀裂へと突っ込んだ。


「おい、馬鹿野郎!  死にてえのか、どけッ!」


 バラムの怒鳴り声が響く。その直後、谷全体を、真昼の太陽すら霞むほどの純白の閃光が飲み込んだ。


 視界のすべてが白に染まる。バラムが反射的に腕で目を覆い、絶叫に近い声を上げた。


「ぐわっ!?なんだ、この光は……!?」


 光は暴力的なまでの輝きを放ち、門を構成する石の「記憶」を辿るように隅々まで浸透していく。キィィィィィン――。大気を震わせる高い音が響き、重力に抗うように、崩落しかけた石材が浮き上がる。


 亀裂に滑り込んだ光の粒子は、瞬時に超高密度の結晶へと変わり、欠けた岩肌を溶接するように繋いでいく。それは単なる補正ではない。物質を素粒子レベルで組み替える、神の領域の「再構築」だ。


「……な、なんだ。地響きが止まった……。」  


 バラムが恐る恐る腕を退ける。目の前に広がっていたのは、彼が知る「朽ちた石門」ではなかった。かつての名工が築き上げた、全盛期の姿をも上回る美しさ。純白の輝きを放つ大理石の門が、そこには毅然と立っていた。


 亀裂一つない滑らかな表面。複雑に施された守護の紋章は、魔法の光を宿して青く拍動している。


「おい……うそだろ。夢でも見てんのか、俺は。」


 バラムの手から、愛用のつるはしが滑り落ちた。彼は震える手で、その石門に触れる。


「……冷たくねえ。いや、生きてるみたいに温かいのか?この強度は……金剛石以上だぞ。」


 数分前まで「光り滓」と蔑んでいた存在が、ドワーフの常識を粉々に砕いた。私は、門の頂上からゆっくりと降りてくる。エネルギーを使いすぎたせいか、光の輪郭が少しだけ揺れていた。


「……マロー様!すごいです、門が……門が新品みたいです!」


 フィオナが駆け寄り、ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ。私は照れ隠しに、精一杯の「神」らしい口調で言った。


「壊れたままなのは……  落ち着かないからな。 これで、少しは安心だろう。」


 すると、バラムがのっそりと私の方へ歩み寄ってきた。その顔には、先ほどまでの不遜な態度は微塵もない。彼は深く、地面に額がつくほどに腰を折って頭を下げた。


「……光の御方。さっきまでの無礼、このバラム、

 首を差し出して詫びる所存だ。許してくれ。」


「え、あ、いや!  首とかいいから!  顔を上げてくれ、頼むから!」


 必死に叫ぶ私の体は、動揺のあまりパッと鮮やかなピンクに染まった。


「……ふ。そのピンク玉……いや、マロー様。」


 バラムが顔を上げる。その瞳には、確かな敬意と、職人としての熱が宿っていた。


「あんたの『光』は本物だ。俺の目は節穴だった。

 ……なぁ、マロー様。あんた、何者なんだ。」


「俺は……。」


 私は、門を仰ぎ見る村人たちの希望に満ちた顔を見渡す。


「夜を許さない、ただの光だよ。」


 社畜だった男の、ささやかな、けれど決然とした異世界での宣戦布告。バラムが豪快に笑い、私の前に大きな手を差し出した。


「気に入った。この村の、いや、この大陸の闇を全部塗り替えてやろうぜ!」

もしよろしければブックマークや評価などで、応援よろしくお願いします。

メジャーデビューした時に、「私、最初で最古の推し」と自慢して下されば幸いです。

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