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最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜国民的ゲームの主人公になって、絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜  作者: 稲盛 皆藤
【第一部:黎明編 ―光神の目覚めと仲間たち―】

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第12話:神様はピンクに光って再会する

 静寂が、戦場だった広場を、重苦しく支配していた。カイルたちが剣を握り直し、ルミナが矢を番え直し、乾いた衣擦れの音さえ、今は不吉な予兆に聞こえた。


 無理もないことだった。

 全波長照射という神の権能。

 その眩い光の渦の中から。

 この大陸のどの種族も纏わぬ。

 青と白の縞模様の装束を着た。

 一人の男が現れたのだから。


「何者だ、貴様。!」

「その汚らわしい手を。マロー様から退けろ。!」


 カイルの鋭い怒声が飛ぶ。彼は騎士としての本能で、マローという「完璧な神」を、守ろうと必死に間合いを詰める、その剣気は、本物だった。


 だが、青い縞模様の制服――。コンビニのバイトリーダー、サトシは殺気などどこ吹く風で、小指で耳をほじりながら、眩しそうに「光の球体」である、俺をじっと見つめていた。


「誰っすか、マロー様って。。」

「これ、どう見ても。。」

「丸尾さんでしょ。。」

「その追い詰められた時に出す。。」

「絶妙にキモい。営業スマイルの波動。。」


「なっ……! 貴様、今。!」

「マロー様を。キモいと言ったか。!?」


 カイルが驚愕で目を見開く。崇拝の対象を侮辱された。彼のプライドが音を立てて軋む。


「カイル、落ち着いて。!」

「でも、マロー様の。光が乱れているわ。。」


 ルミナが困惑しながら俺を見る。

 俺は必死だった。  

 思念波をサトシだけに絞り。  

 全力の懇願を叩きつける。


(サトシ! お願いだ。。) (声が、デカい。!) (空気を読んでくれ。!)


「空気読むも何も。。」

「丸尾さん、あんた。。」

「なんでそんな。電飾みたいな姿。?」

「新手のコスプレ。?」


(コスプレじゃない。!) (これでもこの世界の。八百万の光を束ねる神なんだ。!)

(お願いだ、今は。話を合わせてくれ。!)


「神様ねえ……。。」

「あ、そういえば。。」

「丸尾さん、あんた。。」

「昔、店の裏で。。」

「俺はいつか光になる、って泣きながら。。」

「おでん食って、ましたよね。?」


「やめてええええ。!!」


 俺の絶叫が思念波となって。  

 広場全体に響き渡った。  

 孤独な夜にノートへ綴った。  

 自作の痛いポエム。  

 その断片を白日の下に晒され。  

 俺の光子エネルギーが暴走する。


 俺の体は、一瞬で、どぎついピンク色に染まった。


「おお、なんという慈愛。!」

「マロー様が。桜色に輝いて……。。」

「勝利を。祝っておられるわ。!」


 ルミナが感激で涙を流す。


「違うわ、ルミナ。!」

「この波長は。慈愛なんかじゃない。。」

「隠し事が見つかった。拒絶反応よ。!」


 フィオナの計測器が。火を噴かんばかりに回転する。


「余計な分析はやめろ。!(泣)」


 俺はピンクに明滅しながら、必死に抵抗を試みる。だが、その間にもサトシは、俺が酔って語った、設定の数々をバラそうとする。


「おい、縞々の男。!」

「マロー様と、どんな。知り合いだ。!」

「正直に話せ。!」


 バラムが重い槌を肩に担ぎ。一歩、サトシへ詰め寄った。


「知り合いっていうか。。」

「この人、俺の元先輩。。」

「あ、最後、先輩就職する前に、俺の方が先にバイトリーダーになったから。。」

「俺の元部下っすね。。」


「ぶ、部下ぁ。!?。世界を救った神が。貴様の部下だと。!?。」


 カイルの剣先が震える。「神」という崇高な存在が、「コンビニの部下」という概念に上書きされていく。。。


(待てカイル! 落ち着け。!) (彼は、異世界の。。) (インフラ整備の。最高責任者なんだ。!)


「また、さらっと。嘘つきましたね。?」

「俺、店員っすよ。。」

「弁当やサンドイッチの廃棄の管理なら。まあ負けませんけど。。」


 サトシは呆れ顔で、手に持っていたビニール袋を、ひょい、と差し出した。


「ほら、これ。。」

「丸尾さんが俺に取り置き頼んでた。新発売のからあげ弁当。。」

「冷めてますけど。食います。?」


 からあげ弁当。その響きが、凍りついていた俺の意識を、優しく溶かしていく。

 深夜のオフィス街、消えた街灯の下で、俺が最後に求めていたのは、ただ、この安っぽい食事と、「お疲れ様」の声だった。


(……サトシ。。) (お前、それを。持ってきてくれたのか。?)


「たまたま持ってた。ら、穴が開いて。。」

「気づいたら、ここ。。」

「運ぶの、苦労したんすからね。。」


 俺は、決意した。

 神としての威厳よりも、友人が差し出したその弁当を受け取るべきだと、光を一点に収束させ、球体の輪郭を、解く。


 眩い光の中から。一人の男が、姿を現した。


「マロー様……。?」


 仲間たちが息を呑む。そこに立っていたのは。前世の、疲れ果てた、丸尾一(まるお かず)の姿ではなかった。


 かつて俺が、唯一の趣味で、死ぬほどやりこんでいた。シミュレーションRPG。その理想の主人公。  人魔共栄圏を築き上げる、気高く、美しい「英雄」の姿だった。


 銀色に輝く、光科学の意匠を凝らした装束、均整の取れた高い背丈、怜悧ながらも、どこか慈愛を感じさせる、彫刻のように整った顔立ち。


 カイルたちが、ひれ伏しそうになるほどの威風堂々たるその姿は、まさに、光り輝く神の受肉。


 しかし、その完璧な「英雄」の顔には、あまりにも似つかわしくない、死んだ魚の目をした、情けない営業スマイルが張り付いていた。


 そして、伝説の宝具でも握るような神聖な手つきで、彼は油の染みた、コンビニ袋を受け取った。


 蓋を開け、からあげを口にする。衣は少し湿気ていて、脂は白く固まりかけていた。けれど、涙が出るほど、懐かしくて温かい味がした。


「……あ、まい。。」

「美味いな……これ。。」


「でしょ。?」

「あんたが、死ぬほど。楽しみにしてたやつ。。」


 サトシが少しだけ、不器用そうに口角を上げた。彼は、俺が英雄の姿だろうが、神様だろうが、全く気にしていないようだった。


「丸尾さん、あんた。。」

「ここで神様やるなら。作っちゃえばいいでしょ。。」

「まず看板、レジ、カウンター、什器、ゴミ箱。。」

「それから。ホットスナック。。?」


「コンビニを。?」


「当たり前でしょ。。」

「俺が。リーダーなんですから。。」


 カイルたちが呆然とする中、俺とサトシの、奇妙で、けれど誰よりも確かな再会が果たされた。


 救世主の正体は、憧れの姿を纏った、社畜。けれど、その横に、弁当を差し出す友がいれば、二度と、夜を恐れることはない。


「あ、丸尾さん。。」

「あの『闇の堕天使』。。」

「続き、楽しみっすね。。」


「……お前は。今すぐ消しておく。。」


 弁当を食べ終えたマローは、また元の光の姿に形を変えて、ピンク色の光で周囲を照らした。


「マロー様、また愛らしい。。お姿に。。。触っても。。いいですか?。」

「いえ、マロー様。。私のおそばに。。」


 フィオナとルミナが、いつもの取り合いを始めたようだった。


賑やかな仲間の声と共に。  

ルミナス・ガイアの夜を。  

どこまでも明るく。  

けれど少しだけ。  

照れくさそうに照らし続けた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これにて第一部「黎明編 ―光神の目覚めと救済の灯―」完結です!


 暗闇の中で一人、誰にも気づかれずに消えた「丸尾一」が、異世界で信頼できる仲間を得て、

ついに前世の孤独を知る唯一の友・サトシと再会を果たしました。

  理想の英雄の姿を纏いながらも、その中身は冷めた弁当一つに涙する、かつての青年のまま。

 そんなマロー(丸尾)の歩みをここまで見守ってくださり、心から感謝申し上げます。


 第二部からは、いよいよ舞台は「建国編」へと移ります。

 マローが前世で夢見た「人魔共栄の理想郷」を築くため、サトシがもたらす現代の知恵と

マローの光科学を融合させ、夜の来ない都を創り上げていく物語が始まります。

 神として崇められながらも、相変わらず照れてはピンク色に光ってしまうマローの受難(?)

にも、ぜひご注目ください。


 もし「続きが気になる!」「マロー、第一部完結おめでとう!」と思ってくださったら、

ぜひブックマークや、下の【☆☆☆☆☆】から評価をいただけますと、

今後の執筆の大きな励みになります。


 皆様の応援こそが、マローが世界を照らし続けるためのエネルギー源です。

第二部も、どうぞよろしくお願いいたします!


 ご精読誠にありがとうございました。m(__)m

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