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お約束

食事を終えた雪紗は、まだ少し緊張したまま座っていた。

玲子は静かに微笑み、ゆっくりと話し始める。


「雪紗、この家には少しだけルールがあるの。まず、廊下や庭は走らないこと」

雪紗は首をかしげ、小さくうなずく。

「……はしっちゃだめ……?」


「ええ、障子や家具を大切にしたいの。それに、広いから危ないわ」

玲子は優雅に言うが、その声には確かな落ち着きがあった。


「あと、夜は必ず自分の部屋で寝ること」

雪紗は小さく息をつき、透き通る青緑の瞳を大きく見開く。

「……おへや、ひとつ……?」


「ええ、あなたの部屋だけよ。広いでしょう?」

雪紗はゆっくり頷き、白い髪を触りながら小さな声で言った。

「……うん……ひろい……」


玲子はにっこり微笑み、雪紗の手を軽く握った。

「さあ、少し探検してみましょう。家の中を知ることも大事なことだから」


雪紗は小さな手を引かれ、廊下を歩き始める。

障子の向こうの庭、床の間の掛け軸、木のぬくもりのある柱――

目に映る全てが、まだ知らない世界で、胸が少し高鳴る。


「……すごい……」

雪紗は小さな声でつぶやき、白い髪を揺らした。

透き通る青緑の瞳に映る景色は、自分だけの新しい世界そのものだった。


玲子は後ろから静かに見守りながら、雪紗に少し質問する。

「雪紗、どこが一番気に入った?」


雪紗は考え、少し考え込むように顔を上げた。

「……ここ、たたみのへや……」

小さな声ながらも、嬉しそうに答える。

玲子は微笑み、静かに頷く。

「ええ、ここならあなたも落ち着けるでしょう」


雪紗はその言葉に小さくうなずき、窓の外の庭を見つめる。

まだ言葉にはできないけれど、この家で過ごす時間がこれから始まることを、胸の奥で少しずつ理解していた。

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