中
玲子に手を引かれ、雪紗は広い廊下を歩いた。
光が差し込む障子の向こうには、手入れされた庭が見える。
畳の香り、木の温もり、細やかな欄間の彫刻――全てが、雪紗の知っている家とは比べ物にならなかった。
「ここが、あなたの部屋よ」
玲子が静かに声をかける。
雪紗は小さな手でドアノブを触り、少し緊張した様子で中を覗いた。
部屋は広く、障子の向こうに小さな庭が見える。畳は新しく、ふかふかと柔らかい感触がする。
「……わあ……」
雪紗は小さく息をつき、目を大きくして白い髪を揺らした。
透き通る青緑の瞳が、部屋の光を受けてさらに輝く。
「ここ……ぼくの……?」
お祖母様は優雅に頷き、雪紗の肩に手を置いた。
「ええ。今日から、ここであなたが暮らすのよ」
雪紗はまだ5歳ながら、胸の奥で自分だけが今この家にいる特別感を感じた。
家の広さや美しさに圧倒されながらも、目の前の玲子の落ち着いた姿に、少しずつ心が落ち着いていく。
雪紗は小さくうなずき、少しだけ頬を赤くして答えた。
「……うん」
玲子は微笑みながら、雪紗の白い髪をそっとなでた。
「さあ、荷物を置いて少し休みなさい。今日からここがあなたの家よ」
雪紗は小さく息をつき、窓の外に広がる庭を見つめた。
透き通る青緑の瞳に映る景色は、これから始まる新しい日常――自分だけの世界。
胸の奥には、まだ言葉にできないわくわくと、不思議な静けさが混ざっていた。




