お屋敷
しばらく車が走り車は静かに広い敷地の門をくぐり、ゆっくりと止まった。
雪紗は窓から目を大きく見開き、白い髪を揺らしながら外を見た。
「……すごい……」
広い庭、手入れの行き届いた石畳、遠くまで続く木々の列――
全てが、雪紗が今まで知っていた家とはまるで違っていた。
黒塗りの車から降りると、玲子がゆったりと雪紗の手を取り、歩き出す。
「さあ、雪紗。今日から、私の家で暮らすことになるわ」
雪紗は小さくうなずき、まだ少し緊張した様子で後ろについて行く。
玄関には大きな木製の扉、欄間には細やかな彫刻が施され、畳の香りがかすかに漂っていた。
家の中に入ると、広い廊下、吹き抜けの天井、障子の向こうに見える庭園――
雪紗は思わず目を見張る。
玲子は静かに微笑みながら雪紗を見下ろす。
「ここが、これからあなたが暮らすお家よ。安心して過ごしなさい」
雪紗は小さな声で答える。
「……うん、わかった……」
お祖母様は雪紗の白い髪をそっとなで、優雅に頷いた。
「ええ。ここなら、不自由はしないわ」
雪紗はまだ5歳ながら、広く大きな家に包まれる感覚と、胸の奥が小さくざわめいているのを感じた。




