幼稚舎?
朝の光が障子を通して差し込む部屋で、雪紗は布団の中でまだ少し眠そうに丸まっていた。
透き通る青緑の瞳がゆっくり光を帯びる。
「雪紗、あなたは今年でいくつになるのかしら?」
篠宮玲子が静かに声をかける。
雪紗は手を布団の中でぎゅっと握り、舌足らずに答えた。
「……ごさい……」
玲子は少し考えるように頷く。
「なるほど、五歳……幼稚舎に通う年齢ね」
雪紗は首をかしげ、眠そうに目をこする。
「……ゆうち……え?」
「幼稚舎よ。五歳くらいから通うところ、普通の子は通うの」
玲子は柔らかい声でそう説明する。
でも心の中では、お金で無理やり入ってきた行儀の整っていない子達に合わせるのは嫌だわと思っていた。
幼稚舎に通っている子達、全員がそうだとは玲子も思っていない。
でも、少なからずいることはわかっていた。
雪紗は幼稚舎と聞いてお母さんとお父さんが話していた近くの幼稚園のことかなと思った。
雪紗は白い髪を指でくるくる触る。
でも、行かせてくれなかったな。
雪紗は小さく首を窄め、布団の中で足を動かす。
「……ぼく、いったこと、ない……」
玲子は微笑み、頷いた。
「そう……あなたは行ったことがないのね。でも大丈夫。行かなくてもいいわ。ここで少しずつ覚えていきましょう」
雪紗は小さく頷き、白い髪を触りながら、透き通る青緑の瞳で障子の外の庭を見つめる。
「……わかった……」
玲子はその背中を静かに見つめ、内心で決める。
この子には、幼稚舎に行かせる必要はない――ここで、必要なことを学べばいい
雪紗はまだ言葉にはできないけれど、胸の奥に小さなわくわくと、少しの戸惑いを感じていた。




