日常
夜が静かに訪れ、障子の外には月明かりが差し込んでいた。
雪紗は自分の部屋の畳に座り、小さな手で布団を整える。
広い部屋、窓の外に見える庭の影、畳の香り――全てが新しく、少しだけ不思議な感覚だった。
「……ぼく、ここでねるの……」
透き通る青緑の瞳で、まだ少し戸惑いながらも、小さくつぶやく。
白い髪が月光を受けて静かに光る。
部屋の扉をそっと開けると、篠宮玲子が優雅に立っていた。
「雪紗、夜はもう遅いわ。今日はゆっくり眠りなさい」
雪紗は小さくうなずき、布団に潜り込む。
「……うん……」
玲子は柔らかく微笑み、障子の外を一瞥する。
「明日から少しずつ、この家のことを覚えていきましょう」
雪紗は目を閉じ、透き通る青緑の瞳に映っていた光景を思い出す。
広い廊下、障子の向こうの庭、木の香り……
すべてが胸の奥で小さくざわめき、新しい日常の始まりを静かに告げていた。
⸻
翌朝。
雪紗は朝の光に包まれて目を覚ました。
窓の外には庭の木々が輝き、鳥のさえずりが聞こえる。
小さな手で布団を押さえ、まだ少し眠そうに言った。
「……おはよう……」
白い髪をかき上げ、透き通る青緑の瞳で外を見つめる。
部屋の扉が開き、玲子が入ってきた。
「おはよう、雪紗。よく眠れたかしら?」
穏やかだが、どこか毅然とした声。
「……うん……ねむれた……」
雪紗は小さくうなずき、布団から起き上がる。
玲子は微笑み、静かに頷く。
「では、朝ご飯を食べましょう。今日からあなたの新しい日常が始まるわ」
雪紗は少し緊張しながらも、透き通る青緑の瞳を輝かせ、白い髪を揺らして部屋を出た。
広く大きな日本家屋の中で、新しい生活の一日目が静かに動き出していた。




