お風呂
夕暮れが差し込む頃、玲子は雪紗に声をかけた。
「雪紗、そろそろお風呂に入りましょう」
雪紗は小さくうなずき、白い髪を揺らしながら小さな声で答える。
「……うん……」
案内されたのは、広くて古風な日本式の浴室。
木の香りがかすかに漂い、窓から庭の緑が見える。
雪紗は浴槽の大きさに目を見開き、少しだけ戸惑った。
「……ひろい……」
透き通る青緑の瞳が光を反射して、まるで小さな宝石のように輝く。
玲子は微笑み、優雅に声をかける。
「ええ、このお風呂ならゆっくりできるでしょう。さあ、服を脱いでお入りなさい」
雪紗は服を脱ぎ少し恥ずかしそうに体をそわそわさせながらも、浴槽の縁に足をかける。
湯気の立つお湯にそっと手を入れ、温かさに小さく息をついた。
「……あったかい……」
玲子は浴室の入口で見守りながら、静かに言った。
「ゆっくり浸かりなさい。疲れた体も少しずつ落ち着くわ」
雪紗は目を閉じ、透き通る青緑の瞳が閉じる瞬間も光を帯びる白髪を揺らしながら、静かに湯に浸かる。
体も心も、今日の新しい生活の重みを少しずつ受け止め始めていた。
湯から上がると、玲子が用意してくれた柔らかい着物を手渡された。
雪紗は小さな手で着物をつかみ、少し戸惑いながらも身につける。
「……ふわふわ……」
小さく感嘆の声を漏らす雪紗に、玲子は微笑みを返した。
「さあ、寝る準備はこれで整ったわ。明日から少しずつ、この家での生活に慣れていきましょう」
雪紗は小さく頷き、窓の外の庭を見つめる。
透き通る青緑の瞳に映る木々の影と夕焼けの光。
今日一日の出来事が胸の奥で静かに積み重なり、これから始まる新しい日常を、雪紗はまだ言葉にできないまま感じていた。




