ラッキーハプニング?優里の平手打ち!
「わぁ! こんなに情報集めてくれたの? ありがとう!」
昼休み。
私の身体測定の紙を見た“罰”として、田川君の身体測定の情報も見せてもらい、それをメモして亀ちゃんに渡した。
頬を染めて喜ぶ亀ちゃん。
今日も安定の可愛さだ。
そこへ、理恵ちゃんがメモを覗き込む。
「身長、体重、胸囲、腹囲、握力、肺活量……たま、あんた……」
まるで覗き魔を見るような視線を向けられた。
「ち、違うよ! これは本人に見せてもらったの!」
慌てて否定すると、
「え? 本人にって……どういうこと?」
三人から一斉に、痛い視線が刺さる。
仕方なく、私は事の成り行きを説明した。
⸻
そもそも、私が頼んで見せてもらったわけじゃない。
田川君が、体重まで書いてある私の身体測定用紙を奪って読んでいたところを──
バスケ部“三馬鹿トリオ”のリーダー(らしい)、石橋君に目撃されたのだ。
「女子の身体測定の用紙を奪うとか、聡、最低だな!」
石橋君は、魔王が降臨したかのような怒りっぷりで、
「田上さん、ごめんね。
こいつの身体測定なんて興味ないだろうけど……」
そう言いながら、田川君の身体測定用紙を私に手渡した。
この日初めてちゃんと話した石橋君は、近くで見ると──
好みではないけど、普通にイケメン。
確か理恵ちゃん曰く、かなりモテるらしい。
泣かせた女子は数知れず。
「すれ違っただけで女子を妊娠させそう」
真顔で言っていた理恵ちゃんの言葉を思い出し、思わず腰が引けた。
すると石橋君の隣から、
「いきなり健ちゃんから渡されたら、田上さん驚くでしょ」
そう言って現れたのは、
長い漆黒のストレートヘアに、すらりとしたスタイル。
文句なしの美少女──石塚繭花さんだった。
石橋君の彼女だ。
(大人しいって聞いてたけど……こんな美人だったんだ)
ぼんやり見ていると、繭花さんはふわりと微笑んで、
「それ、見たら聡に返してあげてね」
そう言って、石橋君と並んで席に戻っていった。
(美男美女カップルだなぁ……)
思わず溜め息をついていると、上から声が降ってくる。
「健太は、石塚一筋だぞ」
田川君だった。
「え?」
「今、健太に見惚れてただろ?」
なぜか、不機嫌そう。
「あ……」
ぼんやり返しかけて、ハッとする。
「ち、違うから!
石橋君じゃなくて、石塚さんが……美しすぎて……」
「え? そっち?」
「そっちって、どっち?」
「健太に見惚れてたんじゃないの?」
「だから!
何で私が石橋君に見惚れなきゃいけないの?」
私は両手を頬に当てて、うっとりと言った。
「私は、自分の彼氏が世界で一番カッコイイと思ってるから」
そう。
私は彼── 一筋なのです。
……と、思っていたら。
「彼氏……マジでいたんだ」
田川君が、ぽつりと呟いた。
「え? 何か言った?」
「なんでもない!
チビのくせに彼氏いるとか、生意気!」
そう言って、私の鼻を摘む。
「ちょっと!」
怒る私を見て、
一瞬だけ、田川君が寂しそうに笑った……ような気がして、首を傾げた。
「彼氏、ロリコン?」
「何でよ!」
「だって、童顔で幼児体型じゃん?」
「幼児体型じゃないもん!」
「はいはい、見栄張りたいよね~」
頭を撫でようと、田川君が手を伸ばした──その瞬間。
運悪く、私が席を立った。
──ふに。
胸に触れる感触。
見下ろすと、
田川君の手が、私の胸にタッチしていた。
固まる私。
固まる田川君。
次の瞬間、真っ赤になった田川君が叫ぶ。
「ち、違う!
ごめん! そういうつもりじゃ……!」
そして──
椅子ごと、盛大にひっくり返った。
「田川君、最低!!」
慌てて起き上がった右頬に、
私の完璧な平手打ちが炸裂したのは、言うまでもない。




