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見えない境界線

「た〜まちゃん、おはよう」


学校へ向かって歩いていると、後ろからち〜ちゃんに声を掛けられた。

隣には新井君が並んで歩いている。


「あ!ち〜ちゃん、新井君。おはよう」


笑顔で答えると、


「昨日は、あれから楽しめた?」


と聞かれた。


「うん、楽しかったよ」


少し照れながら答えると、


「あ! モッキーのキーホルダー。買ったの?」


目ざといち〜ちゃんの一言に、一瞬言葉を失う。


すると新井君がニヤニヤしながら、


「違うんじゃない? 買ってもらったんじゃないの?」


と言ってきて、思わず赤面してしまった。


それを見て、ち〜ちゃんも楽しそうに笑う。


「へぇ〜。長塚もやるなぁ〜」


そう呟いた、その時。


「噂をすれば……だな」


新井君がぽつりと言ったので、視線の先を見ると、長塚君が前方を歩いていた。


「長塚、おはよう」


新井君が駆け寄ると、長塚君は少しぼんやりした顔で振り向き、


「あぁ、おはよう」


と答えてから、私たちの方へ視線を向けた。


そして――

私の鞄についているキーホルダーに気づくと、一瞬だけ目元を緩め、すぐにいつもの表情に戻る。


新井君と並んで話しながら歩いていく長塚君の背中を、私は少し後ろから見つめていた。


「行かないの?」


ち〜ちゃんにそう言われて、私は小さく首を横に振る。


「迷惑になっちゃうから」


そう呟くと、


「え? そんなことないんじゃない?」


と、ち〜ちゃんは驚いた顔をする。


でも――

以前、何度か声を掛けて、そっけなく拒まれた記憶が蘇って、どうしても足が前に出なかった。


その時。


「そこのお二人さん、歩くの遅いよ!」


そう言いながら、新井君が振り返って私とち〜ちゃんを手招きした。


「ほら、ね?」


ち〜ちゃんに背中を押されて、私は渋々、前を歩く長塚君の隣に並ぶ。


「……おはよう」


「おはよう」


ぎこちなく交わした挨拶に、新井君が呆れたように言った。


「お前ら、昨日のあの仲の良さは何だったんだよ?」


そんな空気の中――


「長塚君、おはよう!」


私とは反対側から、青山さんが駆け寄ってきた。


長塚君はちらりと一瞥して、


「おはよう」


と答えただけで、相変わらずの鉄壁対応だ。


それなのに、青山さんは気にする様子もなく、長塚君の腕に手を回して、


「もう! 今朝、いつもより早かったでしょう!

私、待ってたんだよ」


と、不満げに文句を言い始めた。


「約束してないよね?」


長塚君が淡々と言うと、


「してないけど!

帰りも一緒に帰ってるんだから、朝も一緒で良いじゃない!」


と、意味の分からない理屈を並べ立てる。


すると長塚君は、ぴたりと足を止めて、


「それ、前から言ってるけど。

帰りは星川たちと帰ってるだけで、青山さんと帰ってるつもりはないから」


と、きっぱり言い切った。


思わず、私は顔を上げる。


その横顔は無表情で、

感情が読めない分、どこか冷たく、怖ささえ感じるほどだった。

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