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夢の国デート 帰り道

(もう……長塚君ってば、ここでも方向音痴を発揮してる)


私は小さく笑い、人の流れと逆方向へ進もうとしていた長塚君の腕を掴んだ。


「長塚君、パレードはあっちだよ」


人並みが向かっている方向を指さすと、


「え?……あぁ、そうか。パレードか」


と、少し間の抜けた声で呟く。


(ん? 会話の流れでは、パレードを見る予定だったよね?)


首を傾げていると、長塚君は苦笑いを浮かべ、


「じゃあ、行こうか」


そう言って、人の流れの中へ歩き出した。


「あれ? もしかして、他に行きたいところでもあった?」


はっとして聞くと、長塚君は小さく笑って、


「もういいよ。パレード、見たいんでしょう?」


そう言って、少し早足で歩き出す。


パレードの時間帯は、アトラクションに人が集中していて、どこもガラガラみたいだった。

だから余計に、もしかして乗りたいアトラクションがあったのかな……なんて、不安になる。


パレードを見ている横顔が、ほんの少しだけ不機嫌そうに見えて、


(私、何か失敗したのかな……)


そんなことを考えて、胸がきゅっと縮んだ。


華やかなパレードが終わり、

「そろそろ帰ろうか」という話になる。


閉園間近は電車も混みそうだし、という理由で自然と意見がまとまったけれど、

なんとなく沈黙が続いてしまう。


(今、ち〜ちゃんカップルの援護が欲しい……)


そう思っていた、その時だった。


駅のホームに着くと、長塚君がポケットから小さな袋を取り出して、


「これ……」


と差し出してきた。


両手で受け取り、何だろう?と思いながら中を開けると、

そこにあったのは――さっき返品していたはずのキーホルダー。


「え? これ、返品したんじゃなかったの?」


驚いて聞くと、


「店の人がさ。ぬいぐるみが抱いてる石で意味が違うから、女の子にプレゼントするならこっちの方がいいですよって……変えてくれたんだ」


相変わらず淡々とした口調だけど、鼻の頭をかいている。

――照れている時の癖だ。


モッキーとモニーが抱いているのは、淡いピンク色の石だった。

私が最初に手に取っていたのは、青い石。


(長塚君、青が好きだから……無意識に選んでたんだ)


「これ……もらっていいの?」


そう聞くと、


「俺が着けてたら、さすがにヤバいでしょ」


と真顔で言われて、思わず想像して吹き出してしまう。


「そこ、想像しなくていい!」


そう言いながら、軽くゲンコツで頭を叩かれた。


「ありがとう。これ、大事にするね」


笑ってそう言うと、長塚君が、優しく微笑み返してくれた。



夢の国のデートは、本当に楽しかった。

十年分の幸せが、一気に押し寄せてきたみたいな一日だった。


行きはあんなにワクワクしていたのに、

帰りはどうして、こんなに寂しくなるんだろう。


夢の国のデートは、本当に楽しかった。

十年分の幸せが、一気に押し寄せてきたみたいな一日だった。


行きはあんなにワクワクしていたのに、

楽しかった分、バイバイする時間はどうしても寂しくなる。

あっという間に最寄り駅に着き、改札の前で立ち止まる。


「あ! 長塚君、これ。お姉さんに」


そう言って、夢の国のお土産を手渡した。


「え? 別にいいのに……」


少し驚いた顔をする長塚君に、


「ううん。今日は本当に楽しかったから。お姉さんに感謝の気持ち。……まあ、ほんの気持ちだけどね」


と苦笑いすると、袋を受け取って、


「分かった。姉貴に渡しておく」


そう言って、微笑んだ。


そのまま、名残惜しさを抱えたまま立っていると、

長塚君がぽつりと呟いた。


「楽しかった分……この時間が寂しいね」


その一言に、胸がぎゅっと締めつけられて、

泣きそうになってしまい、思わず俯く。


すると、長塚君の大きな手が、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。


「じゃあ……また明日、学校で」


そう言って、ゆっくりと踵を返し、歩き出す。


私は顔を上げられなくて、俯いたまま、長塚君の足元を見つめていた。

数歩進んだところで、ふっと立ち止まり、ゆっくり振り返る。


「家に着いたら、連絡するよ」


その言葉が嬉しくて、思わず顔を上げ、


「うん! 待ってる」


と、笑顔で返した。


長塚君は、そんな私を見て小さく微笑むと、

軽く手を上げてから、再び背中を向けて歩き出した。


私はその後、

長塚君の背中が見えなくなるまで、ずっと見つめ続けていた。

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