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局地的静電気発生!

翌朝、下駄箱でばったり長塚君と会ってしまった。


「おはよう」


笑顔で声を掛けると、長塚君は照れくさそうに、はにかんだ笑顔を浮かべて

「……はよ」

とだけ答えた。


でも良いの!

ハニカミ笑顔、いただきました!!


心の中でガッツポーズをしていると、


「長塚く〜ん、おはよぅ」


という甘ったるい声がした。

星川君の友達の青山さんが、長塚君の腕に絡みついてきたのだ。


驚いた長塚君がその腕を振り払うと、

「もう〜、照れ屋なんだから〜」

と、まるで意に介さず、さらに距離を詰めてくる。


私はその光景を唖然として見ていた。

前は気づかなかったけど……明らかに嫌そうな顔をしているのに、

あんなふうにガンガン行けるのは、ある意味すごい。


すると、私に気づいた青山さんが、


「あれ? 田川さん、おはよう」


と、明らかにわざと間違えた名前で声を掛けてきた。


カチンと来たけれど――

(優しい人になるって誓ったから。怒らない、怒らない)


そう自分に言い聞かせて、


「おはよう、青山さん。私、田上だから」


にっこり笑って答えた。


そんな私を、長塚君が心配そうに見ている。


(大丈夫よ、長塚君。今の私は仏の心だから)


……なんて、勝手に目で会話しているつもりだった、その時。


後頭部に、軽く鞄が当たった。


「痛っ」


思わず声を上げると、


「あ、悪い。小さくて見えなかった」


という田川君の声。


その瞬間、長塚君が田川君を睨み上げた。


長塚君、身長一七二センチ。

田川君、身長一八二センチ。


十センチ差で睨み合う二人。


(え……? なんでこんなに空気が重いの?)


戸惑って二人を見比べていると、


「ほら、旦那様が来たから行ったら? 田川さん」


と青山さんの声。


(……あ、そういえば青山さん、いたんだっけ)


思い出して、私は一歩前に出た。


「青山さん。何回も言うけど、私、田上だから!

それに田川君とは友達。勘違いしないで!」


今度は、私と青山さんが睨み合う。


きっと外野から見たら、完全に修羅場だろう。

その空気をぶち壊したのは――田川君だった。


「ふわぁ〜」


と大きなあくびをして、


「青山。朝からバカがバカな発言すんな。くだらねぇ。

ほら、行くぞ、猫」


そう言って、私の頭をくしゃくしゃっと撫でる。


「ちょっと! 頭撫でないでよ!」


「悪い悪い。ちょうどいい位置に頭があるからさ」


そう言いながら、さっさと歩き出した。


慌てて長塚君の顔を見ると、


「猫、何してんだよ。行くぞ」


と呼ばれてしまう。


「その“猫”って何?」


反論しながら一歩踏み出した瞬間、


「ほら、私たちも教室行こう」


そう言って、青山さんが長塚君の手を掴んだ。


――私、まだ触れたこともないのに。


カチンとした、その時。


「引っ張らなくても行くから」


長塚君は、いつもの淡々とした口調で、青山さんの手を外した。


……長塚君なりに、私を気遣ってくれているみたいだった。


二人が歩き出すのを見て、

私は少し遅れて、ゆっくりとその後を歩き出した。


「てか、その猫って何?」


「はぁ? お前、“たまちゃん”なんだろ?

だったら猫じゃん」


「その理屈……バカなの?」


「バカってなんだよ! たまのくせに!」


「たま言うな!」


言い合いをしながら、私は田川君の少し後ろを歩く。


その時、前方に亀ちゃんの後ろ姿が見えた。


「亀ちゃ〜ん! おはよう!」


階段を上りながら手を振ると、亀ちゃんが振り返り、


「あ、たまちゃん……と、田川君! おはよう」


と、少し驚いた顔で挨拶を返してくる。


「お〜、おはよう」


田川君は眠そうに欠伸を噛み殺しながら答えた。


「田川君、今朝も朝練?」


頬を染めて話しかける亀ちゃん。


(くぅ〜! 今日も亀ちゃん、可愛すぎる!)


私は歩くペースをほんの少しだけ落として、

二人を後ろから見守ることにした。


(うんうん。並んで歩いてると、やっぱりお似合いじゃない)


まるで近所のお節介なおばちゃんみたいに、

私は心の中で何度も頷きながら、二人の背中を見つめていた。


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