ばーか、の意味
なんで、と聞かれても答えはひとつしかない。
「……怒らない?」
「回答次第かな」
そう言われて、私は一度深呼吸をした。
「好きだから……。私、長塚君に嫌われたくないもん」
素直に答えると、長塚君からの返事がない。
「…………」
「ごめん! 迷惑だよね!」
慌てて叫んだ私に、
「迷惑じゃ、ない。……けど」
そう呟いたきり、再び沈黙が落ちた。
――けど?
けどって何よ!
やっぱり迷惑だったんだ……と、涙が込み上げかけたその時。
「……恥ずい」
ポツリと、そんな声が聞こえた。
「嬉しいけど……恥ずい」
その一言で、私の心臓は鷲掴み。
(ちょっと待って! なんで今、電話なの!?
その顔、直接見たいんですけど!!)
心の中で叫びながら、ベッドのスプリングをバシッと叩く。
しかも、「嬉しい」って何!?
ベッドの上で悶えながら、
「迷惑じゃないなら、良かった!」
と笑って言うと、
「迷惑だなんて思ったこと……ないから」
食い気味に返ってきた長塚君の言葉に、思わず胸を撫で下ろした。
すると、続けて彼が言った。
「大体さ、好かれて迷惑とか、絶対にないから」
「……相手が、私でも?」
「だからだよ!」
その言葉に、泣きそうになる。
「喋るの苦手なのに、毎晩電話で話すかよ」
その一言で、胸いっぱいに幸せが広がった。
――神様、仏様。
私、明日からみんなに優しくなります。
心の中でそう誓っていると、
「今日は余計なこと話しすぎた。もう切るからな」
通話を終わらせようとする声がする。
「あ! 待って! 最後に、最後に……!」
「なんだよ!」
「長塚君、大好き」
「…………知ってるよ」
そう答えたあと、受話器の向こうから小さな笑い声が聞こえた。
そして、少し間を置いて――
「……ばーか」
照れた声。
付き合って三ヶ月目。
初めて、カップルらしい会話ができた気がした




