かみ合わない気持ち
その日の夜、長塚君から着信があった。
また何か言われるのだろうかと、胸に小さな恐怖を抱えながら電話に出ると、返ってきたのは意外な言葉だった。
「……朝はごめん」
「え?」
驚く私に、長塚君はぽつりと続ける。
「喧嘩をしたかったわけじゃなかったし、嫌な思いをさせたかったわけでもなかった」
「ううん……私こそ、ごめんなさい。田川君とは、隣の席で仲が良いだけで……」
誤解を解こうとした私の言葉を、長塚君は遮った。
「聞きたくない」
「え?」
「今は、俺との時間なんだから。他の奴の話は聞きたくない」
きっぱりと言われ、私はそれ以上言葉を続けられなくなった。
結局、話題は夢の国のことなど、当たり障りのない内容に流れていく。
長塚君は、嫌な話をなかったことにしてしまうタイプだ。
だからといって、納得しているわけでもない。
溜め込んで、溜め込んで、溜め込んで──
そしてある日、爆発して、私を責める。
どうして、うまくいかないんだろう。
私の何が悪いんだろう。
長塚君のことが大好きなのに、モヤモヤした感情だけが胸に残る。
そのときだった。
「……羨ましいと思うよ」
「え?」
「お前みたいに、すぐ誰とでも打ち解けられるのが」
ぽつりと落とされた言葉に、胸がぎゅっと締めつけられる。
「いつも友達の輪の中心にいて、楽しそうに笑ってるだろ。ああいうの、いいなって思ってた」
一瞬、耳を疑った。
「……長塚君、私のこと、そんなふうに思ってたの?」
驚く私に、長塚君は深く息を吐いてから、呆れたように言う。
「どう思ってると思ってたんだよ」
「……変な奴?」
そう答えると、電話の向こうで「ぷっ」と吹き出す音がした。
「ちょっと、そこ笑うところ?」
「いや……変な奴ってのは、否定できないなって」
「ひどい!」
くすくすと続く笑い声に、やっぱり好きだな、と素直に思ってしまう。
「……でも、嫌われてないなら、それでいいや」
何気なく呟いたその一言で、長塚君の笑い声が止まった。
代わりに、深い溜息が聞こえる。
「……なんで?」
「え?」
「なんで、いつも俺に対して、そう思うんだ?」
さっきまでの柔らかさは消え、硬い声が返ってきた。




