超スナフキン
長塚君は、人と争うのを嫌う人だ。
クラスでも、あえて目立たないように振る舞っているように見える。
それでも女子から密かに人気があるのは、きっと整った顔立ちのせいなんだろう。
私には感情を剥き出しにするくせに、他の人に対しては基本的に淡々としている。
それが嬉しくもあって、そして——こんな時には、ひどく悲しくなる。
そんなことを考えていると、
「まさかとは思うけど……お前の彼氏って、長塚じゃないよな?」
田川君がポツリとそう言った。
思わず顔を上げて彼を見ると、田川君は驚いたように目を見開き、
「マジかよ……」
と呟いた。
席に戻ると、心配そうな顔をしたち〜ちゃんが身を乗り出してくる。
「どうしたの? 長塚、なんだって?」
私は笑顔を作ることしか出来なくて、曖昧に首を振った。
すると突然、
「っていうかさ! なんで田川が怒ってるのさ!」
ち〜ちゃんがそう叫んで、田川君の頭にチョップを落とした。
「田川さ、愛想の良さ取ったら、ただのスナ○キンだからね!」
真顔で放たれたち〜ちゃんの一言に、私は思わず田川君の顔を見てしまい、吹き出した。
「何笑ってんだよ!」
ますます不機嫌になる田川君に、私は涙が滲むほど笑ってしまう。
「似てる! スナ○キン!
もう、スナフ○ンにしか見えない! 超スナ○キン!」
机を叩いて笑っていると、
「超スナフ○ンってなんだよ!」
そう言いながら、田川君は私の鼻を摘んだ。
「ちょっと! なんでいつも私の鼻を摘むわけ!」
「摘みたくなる鼻してるお前が悪い」
「はぁ?」
言い合いをしていると、
「そこ、田上、田川! うるさいぞ〜」
先生がそう言いながら教室に入ってきた。
「お前のせいで怒られただろ」
小声で文句を言ってくる田川君に、
「私のせい?」
と言い返しかけて、先生の視線に気づき、慌てて口を閉じた。
——この後、田川君から長塚君のことについて、何か言われることはなかった。




