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置き去りにされた想い

「……どうして、何も答えてくれないの?」


責めるような長塚君の声に、喉の奥が焼けるように熱くなった。

言葉を探しても、胸の奥で絡まって、うまく声にならない。


「だって……長塚君は、学校で私と話をしたくないんでしょう?」


絞り出すようにそう言うと、彼は苛立ったように声を荒げた。


「そんなことないって言っただろ!」


「でも……現実は違うよ」


胸の奥に溜め込んでいたものが、抑えきれずに零れ落ちる。


「昨日だって……本当に辛くて……長塚君に助けてほしかったのに。

私を置いて、帰ったよね?」


「あれは……!」


言いかけた彼の言葉を遮るように、私は問いを重ねてしまった。


「ねぇ……私って、長塚君にとって何?」


答えは返ってこない。

沈黙だけが、非常階段に重く落ちた。


その沈黙に耐えきれず、奥歯を噛みしめた瞬間、予鈴が鳴り響く。


「……戻らないと」


そう言い残し、長塚君は私に背を向けた。


「そうやって……自分に都合の悪いことは、いつも答えてくれないんだね」


思わず零れた言葉に、彼が弾かれたように振り向く。


私は、泣きそうになるのを必死で堪えて、無理やり笑顔を作った。


「でも……悔しいけど。

私が好きなのは、長塚君だよ。ほかの誰でもない」


その瞬間、彼が何か言おうとして口を開きかけた――


けれど。


非常階段のドアが勢いよく開く。


「あ!こんな所に居た。長塚君、朝礼始まるよ!」


そう言って、彼の腕に絡みつく手。


顔を上げると、得意げな笑みを浮かべた女の子が、私を見下ろしていた。


「あれ?同じクラスの子じゃないよね?

なに?朝から告白?バッカじゃないの」


胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。


その瞬間――


「田上?ここに居たんだ。探したよ」


二人の間に割って入るように、田川君が私の前に立ち、腕を掴んだ。


「言っとくけどさ」


振り返り、冷たい視線でその女の子を睨みつける。


「田上は長塚に連れ出されたんだ。

勘違いしてんじゃねぇよ」


そして今度は長塚君を真っ直ぐ見据えて、吐き捨てるように言った。


「お前、なんで庇わないんだよ。

お前が連れ出したんだろ?」


長塚君は何か言おうとして――

結局、何も言えずに俯いた。


……もし、立場が逆だったら。

私が守られる側だったら、どんなに嬉しかっただろう。


でも、それが叶わないことくらい、もう分かっていた。

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