夢の国への誘い
「で?どうしたの?」
「え?」
その日の夜、いつもの定期連絡を入れると、長塚君からの第一声だった。
「あの時、みんなで調べ物する約束だったから、ごめん」
そう言われて
「ううん……。もう、大丈夫だよ」
と呟くと
「そうなんだ」
って返事が返って来た。
「あ、ねぇ、今月末の日曜日、空いてる?」
珍しく長塚君からスケジュールを聞いて来た。
「うん、今の所は予定無いよ」
カレンダーを見て答えると
「姉貴から夢の国のチケットもらったんだけど、行かない?」
の言葉に、あんなに萎んでいた心が一気に膨れ上がる。
「行く!」
食い気味に答えた私に、スマホの向こう側の長塚君の笑い声が聞こえる。
「じゃあ、待ち合わせ場所や時間を決めちゃおうか?」
そう言われて、開園時間に到着するようなスケジュールを決めて終話した。
ベッドに座って話していたので、そのままベッドに倒れ込む。
「夢の国かぁ~」
ポツリと呟いてから、ベッドから飛び起きてその日に着ていく洋服をあれこれ考え出す。
長塚君とのデートを思い浮かべて、胸がぎゅっと痛くなる。
ドキドキするのも、胸が痛むのも、切なくなるのも長塚君だけ。
でも……
ふと、田川君の事を思い出した。
一緒に居て楽しくて、いつも笑っているのは田川君と居る時だった。
心配して撫でてくれた手は、大きくて温かかったな……。
そんな事を思い出している自分にハッとして、首を降って邪念を払う。
(田川君は亀ちゃんの好きな人)
自分に何度も繰り返し、言い聞かせる。
待ち受けに写る長塚君の画像を見つめ、そっと画面を撫でる。
学校では星川君達にしか見せない、長塚君の笑顔。
「辛い時に優しくされたから、ちょっと気になっただけだよね」
自分に言い聞かせるように呟いて、そっとスマホを机の上に置いた。




