救って欲しかった気持ち、救われた想い②
「だって、消しゴム勝手に使うし。意地悪するし」
「意地悪って……」
唖然とする田川君に、私は続けた。
「でも、良い奴だって分かったから。消しゴムのことは許してあげる」
そう呟くと、
「俺の評価基準、そこなのかよ……」
田川君は呆れたようにぼやいた。
少しずつ泣き止んできた私の顔を見て、田川君は立ち上がる。
「もう大丈夫そうだな。じゃあ、俺は部活行くから」
「田川君! ありがとう!」
教室の出口へ向かう背中に向かって叫ぶと、田川君は足早に戻ってきて、いきなり私の鼻を摘んだ。
「鼻水、垂れてるぞ」
そう言って、笑い出す。
「ちょっと! その状態で鼻つまんだら、余計出るでしょう!」
思わず叫びながら、田川君の腕を掴んだ。
……彼の指先には、やっぱり私の鼻水がついていた。
「うわっ……!」
慌ててハンカチで拭こうとすると、
「別にいいよ。どうせ手、洗うし」
そう言って、田川君は気にした様子もなく笑う。
「……ありがとう」
私がそう言うと、田川君はハンカチで手を拭きながら、
「サンキュー」
それだけ言って、走って行ってしまった。
遠ざかる足音を聞きながら、私はそっと机に顔を埋める。
本当は──
長塚君に、こんなふうにしてほしかった。
優しく慰めてほしかったのに、
そばにいてくれたのは、田川君だった。
「ねぇ……長塚君」
誰もいない教室で、私は小さく呟く。
「私って……あなたの、何なの?」
その問いに、答えが返ってくることはなかった。




