救って欲しかった気持ち、救われた想い
私は、傷口に塩を塗られたような気持ちのまま教室に戻った。
足取りは重くて、歩きながら考えてしまう。
——私は、長塚君の何なんだろう?
付き合うって……こういう関係なの?
「友達から始めよう」って……友達ですら、なれていないじゃない。
惨めな気持ちのまま机に突っ伏していると、
「やっぱり一人で泣いてる」
そんな声がした。
顔を上げると、体育着姿の田川君が立っていた。
「なんで? 部活は?」
慌てて涙を拭う私に、
「あ、先輩にちょっと遅れますって連絡してきた」
そう言って自分の席に座り、
「で、何があった?」
と、静かに声を掛けてくる。
——優しくしないでほしかった。
弱っている時に、こんなふうにされたら……頼ってしまいそうで、怖かった。
私が首を横に振ると、
「そっか……。まぁ、お前が泣き止むまでは、隣に居てやるよ」
その一言で、堪えていた涙が一気に溢れた。
泣き出した私の頭を、田川君はぽん、ぽん、と優しく撫でて、
「お前さ、少しくらいは頼っていいんだよ。
消しゴム借りてる分くらいは、優しくしてやるからさ」
と呟いた。
思わず吹き出してしまい、
「なにそれ。消しゴムのお礼なの?」
と泣き笑いで言うと、
「理由なんて何だっていいよ。で、どうした?」
その声に、今しかない気がした。
「……私さ、好きな人がいるの」
そう告げると、田川君は短く、
「うん」
と頷いた。
「出会ったのは入学式でね。ずっと、ずっと好きだった。
今年のバレンタインに告白して……『友達から始めよう』って言われたんだけど」
言葉が詰まる。
「……友達にすら、なれていない関係なんだ」
田川君は、深く深く息を吸ってから、
「そっか……それは、辛いな」
と、静かに言った。
「それで? お前は、どうしたい?」
そう聞かれて、
「分からない……。学校では冷たいのに、電話だと優しいの。
二人きりの時の顔と、学校での顔が違いすぎて……どっちを信じればいいのか、分からないんだよ」
泣きながら話す私に、
「それでもお前、そいつが好きなんだろ?」
と、田川君が言った。
私は彼の顔を見て、ゆっくり頷く。
「だったら、頑張れるところまで頑張ってみたらいい。
それで辛くなったら、俺に愚痴れよ」
そう言って、少しだけ照れたように笑う。
「聞いてやることくらいしか出来ないけどさ。
……それだけでも、少しは楽になるだろ?」
その言葉に、胸がじんと熱くなった。
「田川君……あんた、嫌なやつだと思ってたけど、いいやつだったんだね」
泣きながらそう言うと、
「えぇ!? お前、俺のことそんなふうに思ってたの!?」
と、素っ頓狂な声を上げた。




