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消しゴムひとつ分の距離

4月になり、クラス替えがあった。

私は長塚君と別のクラスになってしまった。


(しかも、星川君は長塚君と同じクラスになるなんて……ずるい)


そして、新しいクラスで隣の席になったのが田川君だった。

気付けば、いつも私の隣には田川君がいる。


授業中、消しゴムがないことに気付いて周囲を見渡すと、

なぜか田川君が、当たり前のように私の消しゴムを使っていたりする。

それに、他の席はほどよく距離があるのに、

なぜか私と田川君の机だけ、いつも不自然なほどくっついている。


「ちょっと! なんで机をくっつけるのよ!」


小声で文句を言うと、


「消しゴム。それしか無いから」


そう言って、私の消しゴムを指さした。


「それ、私の消しゴムですから!」


「お前の消しゴムは俺の消しゴム。

 じゃあ、俺の消しゴムはどこ行ったと思う?」


「知るか!」


思わず声が出てしまい、


「田川、田上! うるさい!」


先生の雷が落ちる。


「お前のせいで、俺まで怒られたし〜」


唇を尖らせる田川君に、私は小さく呟いた。


「あんたのその口、縫い付けてやりたいわ」


すると田川君は、わざとらしく肩をすくめて、


「怖い怖い」


震える真似をして、ニヤニヤ笑っている。


(くっそ……田川の奴……)


睨みつけていると、


「そんなに見つめられると、照れるな〜」


なんて、平然と言い出した。


(亀ちゃん……あなたは、こんな奴のどこが好きなの?)


シャーペンを握りしめ、心の中で呟く。


「おい」


怒りを必死で抑えている私の腕を、田川君が軽く叩いた。


無視して教科書を睨み続けていると、


「おい、田上」


小声で呼ばれる。


「うるさい! 黙れ!」


勢いよく顔を上げた瞬間、目の前に立っていたのは数学の先生だった。


「田上さん?

 さっきから呼んでいますけど。授業、ちゃんと聞いていますか?」


キッと田川君を睨むと、

あいつは声を出さずに、口だけでこう言った。


──『バ〜カ』


……満面の笑みで。


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