近くて、遠い人
バレンタインの告白のあと、私と長塚君はお互いの連絡先を交換して、そのまま別れた。
あまりにも予想外の展開に、私はしばらく呆然としていた。
そこへ、亀ちゃん達が勢いよく飛び込んで来た。
「良かったんでしょう? そんな気がしてたんだよ!」
そう叫びながら、亀ちゃんは呆然としている私に抱きついた。
亀ちゃん達の話では、以前から長塚君の視線が私を追っているのに気付いていたらしい。
「今日もさ、絶対に呼び出されるの待ってたもんね」
そう言って、亀ちゃんも理恵ちゃんも夏美ちゃんも、まるで自分の事のように泣いて喜んでくれた。
その姿を見て、私もやっと実感が湧いてきて――
私も、幸せになれるんだと、心から信じていた。
⸻
三月になり、春休みに二人で少し遠出をする、初めてのデートをした。
駅で待ち合わせをして、長塚君が実は方向音痴だという事を知る。
緊張しすぎて、曲がりストローを逆さに差してしまい、氷で必死に隠していると、
「……飲まないの?」
と、私のジュースをじっと見つめられてしまった。
諦めてストローを掴み、
「実は、曲がりストロー逆さに入れちゃって……隠してたの!」
と白状すると、一瞬きょとんとした顔をしてから、長塚君は大笑いした。
学校ではいつも無表情な長塚君が、楽しそうに笑っている。
それだけで、胸がいっぱいになった。
初めてのデートは緊張と失敗の連続だったけれど、
学校では見られない長塚君を知ることが出来て、本当に楽しかった。
――でも。
学校が始まったら、現実を思い知らされることになるなんて、
この時の私は、まだ何も分かっていなかった。
⸻
新学期が始まり、
「おはよう」
と声を掛けたら、明らかに嫌そうな顔をされた。
それは一度や二度ではなくて、
次第に私は、学校で彼に声を掛けること自体を控えるようになっていった。
私の夢は、学校の登下校を一緒に歩くことだった。
でも家の方向が真逆なこともあり、何より彼は恋愛より友達を最優先する人だった。
いつしか私達は、
夜に電話で話して、月に一度だけデートをする――
そんな付き合い方になっていった。
それでも、交互に電話をかけ合って、その日にあった出来事を話す時間は楽しかった。
学校では無口で「鉄面皮」なんて言われている彼が、
電話口では楽しそうに話してくれる声が、私は大好きだった。
「もっと学校でも話しかけてくればいいのに」
そう言ってくれる事もあったけれど、
星川君がいれば、彼が最優先される事は分かっていた。
──私達は、こういう関係なんだ。
いつしか私は、そう自分に言い聞かせて、諦めるようになっていた。




