功労賞はタマ! やっぱり私はタマ(猫)枠でした
(見てて飽きないって……)
長塚君の横顔をぼんやり見つめていると、
「た~ま~ちゃん?」
そろそろお怒りモードの林田さんの声が飛んできて、慌ててスマホのレンズへ視線を向けた。
「たまちゃん、表情が硬いよ~」
必死に笑顔を作るけれど、右腕に当たる長塚君の腕の感触が邪魔をして、どうしても緊張が抜けない。
血が右腕に集まっているみたいに、じんわりと熱い。
「じゃあ、撮るよ~」
林田さんの声は、心臓の音にかき消されて遠くで響いているようだった。
――カシャ。
シャッター音が聞こえた瞬間、もうドキドキは限界だった。
「長塚君、ありがとう」
触れていた腕から逃げるように一歩下がり、ぺこりと頭を下げる。
「もう良いの?」
そう訊かれて、私は何度も頷いた。
長塚君はいつもの無表情で私を見下ろすと、
「じゃあ、帰るね」
それだけ言い残し、星川君たちに声を掛けて歩き出した。
「長塚、この写真どうする?」
廊下へ向かう背中に林田さんが声を掛けると、長塚君はゆっくり振り返って、
「打ち上げ会場で貰う」
それだけ答えて、今度こそ行ってしまった。
姿が見えなくなった途端、私は腰を抜かしたようにその場に座り込む。
長塚君の声が、腕に触れていた感触が、頭から離れない。
頬が、どうしようもなく熱かった。
「たまちゃん! ちょっと、ちょっと!」
興奮気味の林田さんの声に、ぼんやり視線を向ける。
「振られたって本当? あれ、どう見ても脈ナシじゃないよ!」
真っ白な頭でその顔を見つめながら、私はふと気付いた。
(……あぁ、そうか)
林田さんが頼んだから、長塚君は写真を撮ってくれたんだ。
着ぐるみ姿の私なら、断りにくかっただけ。
それだけのこと。
頭の中でそう整理すると、少しずつ冷静さが戻ってくる。
「はぁ……」
ゆっくり息を吐き出して、立ち上がりながら言った。
「違うよ。林田さんが頼んでくれたからだよ」
「たまちゃん……」
林田さんは、何か言いたげな顔で俯いてしまった。
「ほらほら、打ち上げ会場行かないと! みんな幹事待ってるよ」
そう言って、私は笑顔を作る。
一度振られた相手に、そんな都合よく好かれるわけがない。
――それくらい、分かっている。
打ち上げ会場のカラオケボックスに入ると、すでに大盛り上がりのパーティールーム。
「今回の功労者、たまー!」
千田君の叫びと同時に、派手なクラッカーが鳴り響いた。
その後、ようやく千田君グループから解放されたのは、打ち上げも終盤になってからだった。
「たまちゃん、お疲れ~」
亀ちゃん、理恵ちゃん、夏美ちゃんとようやく乾杯しながら、
私は心の底から思った。
――もう二度と、あのグループに巻き込まれませんように。




