あれ、ヘッダーに収まらない……
その日、アレクトゥス王国の王宮では、盛大なパーティが開かれていた。
参加者の数をもってしても有り余るほどのディナーが並べられ、参加者は皆、宝石やドレス、スーツを身にまとっている。
アレクトゥス王家の力を示すためだけに用意され、開催されたパーティ。
それは、毎夜趣向を変えて行われ、貴族はその力を畏れながらも、自らもその恩恵に与りたいと王家にすり寄っていた。
パーティも中盤に差し掛かるころ、王が指示をすると、ぼろぼろな青年とメイドが会場に来させられた。
二人は王の面前まで引きずられると、騎士が頭を抑えつけた。
王は満足そうな顔で言う。
「今日の余興は……そこの反乱分子の処刑じゃ」
「そやつは愚かにも横のメイドと結託し、我の命を狙った」
「しかしな……単に首を落とすというのもつまらんからな。ほれ」
王はメイドの少女の前にナイフを投げ落とした。
「お前がこいつを殺すというのなら、お前だけは見逃してやろう。できないというのなら、お前の家族、友人及び関わりのある者、全ての命はない」
王は笑う。
そんな王を睨み、自身の無力さに口を噛むことしかできない青年。
しかし、自分ができることなど一つしかないだろうと、口を開く。
「リナ、俺を殺せ」
「え……」
「俺の命一つでみんなが助かるんだったら安いもんさ」
「ユール……」
リナは、震える手でナイフを取った。
――二人は幼馴染だった。
二人はこの国の腐敗の被害をずっと受けてきた立場だった。
人々は飢え、奪い合い、苦しんで死んでいく。
貴族は私腹を肥やし、税と称して何もかもを取り上げていく。
変えたいと願った。終わらせたいと願った。
幸か不幸か、メイドとして見初められたリナ。
彼女の手引きで、王の首を取るために潜り込んだが、失敗に終わった。
「王よ」
「なんだ?下民よ」
「いつか、お前らを終わらせる者がきっと現れる。それはきっと遠くないだろう」
ユールの精一杯の負け惜しみ。
王はそんな彼の発言を鼻で笑った。
「それはないだろう。……おい、そろそろ準備はできたんだろうな?」
「はい。今すぐにでも実行可能です」
王はそれを聞いて醜悪な笑みを浮かべる。
「今、この王国全土の人間を生贄にする大魔術の準備が整った」
「……は?」
ユールは目を見開く。
隣にいたリナもナイフを落としてしまった。
「常々考えてはいたのだ。この国に巣食うただ飯食らいをどうするべきか、と」
「処分するにしてもコストが高い。放っておいても賊になったりして面倒じゃ」
「そこで、だ。我らが不老不死になるための礎になってもらうことにした、という訳じゃ」
周囲の貴族たちは「素晴らしい!」「流石だ!」と拍手を持って歓迎する。
二人は言葉を失う。
あまりにも人を人として扱わないようなその態度。
その醜悪さにもはや何を言っても無駄だという確信を得てしまった。
「そこな女がそいつを殺せば、少しの猶予はやっても良いかもしれんな」
「——早く俺を殺せ!そして逃げるんだ!」
王がそう言うと、ユールはリナにそう叫ぶ。
リナは、ナイフを手に取ったものの、涙を浮かべ始める。
「ユール……私……!」
「すまないリナ、お前にこんなことをさせたくはない……しかし、そうしなければ皆が!リナが!……頼むっ……!!」
リナは呼吸が荒くなりながらもじっとユールとナイフを交互に見つめ、ゆっくりと息をする。
そんな二人の様子を見ながら、王はほくそ笑んだ。
(さて、“少し”考えるとは言ったが、このメイドが城を出て、30秒、といったところかの)
つまるところ、王はリナも、彼女の周囲の人物を助けるつもりも一切なかった。
ただただどうやら恋仲に近かったであろう二人が命を天秤にかけられ、どのようにふるまうかを見たかっただけである。
まぁ、結果としてつまらないことになったと王は不満げだが。
(次は、勝った方を生かすとかやってみようかの?)
そうこう考えているうちに、リナはようやく覚悟を決め、ユールの前に立って、ナイフを掲げる。
今まさに、振り下ろそうとした瞬間。
「おやおや、やっぱりこの部屋が一番綺麗で『いいね』を貰えそうな場所でござるな~~」
そう言いながら手に持った黒い板——スマホと呼ばれる魔法による小型高速演算器——をあちこちに向け、パシャパシャと写真を撮っている青年が現れる。
青年は場に全く合わないぼろきれを身にまとい、腰には二振りの刀を携えている。
突然の乱入に気分を害された王は、「その者を捕らえよ!」と怒鳴り声を上げる。
慌てて騎士たちは男を拘束するために男を囲む。
しかし。
「しかしてまぁ、どうやったらバズるのでござるか~?やっぱり、4Kとやらを試してみる……この景色なら、4Kで見たら綺麗でござる」
騎士たちの猛攻を気にも留めず、男はエックス——世界中(この国を除く)でよく使われている世界中の人たちとの交流ができるアプリ——を開く。
足元の刃をひょいと飛び越え、大振りの一撃をくるりと回避しつつ、男は自分のアカウントで『4Kで見て』と王宮内部の写真を貼りつける。
「これでよし、と。後は——」
男は騎士たちの猛攻をひらりと回避し、呆気に取られていたリナとユールの二人をも置き去りにすると、王と向かい合う。
「なんだ……!?我に何か用か……!?」
王は騎士たちを赤子のようにひねる男に対し、焦りを隠しきれない、といった表情だ。
「そうでござるな……」
そう言うと男は王をパシャリと写真に収める。
「ヒッ……!」
それだけで王は尻餅をついた。
が、男は気にも留めず、自身のアカウントで何かを打ち込んでいる。
「えっと……ヘ、ッ、ダ、ー、に、お、さ、ま、ら、な、い、っと」
男が何をしているのか理解できない王は半狂乱のまま立ち上がり、叫ぶ!
「誰かっ!そいつを殺せっ!何でもやる!」
ただ、半狂乱になって叫ぶ王に、だれも動かない。
いや、動けないでいた。
何しろ、この場にいる全員が荒事の経験など無いのだから。
騎士が勝てない男に勝てる道理など無い。
下手に手を出して、殺されるよりかは、このまま静観した方が良いと結論づけたのだ。
そんな中で、男が口を開いた。
「——さて、あのブクブクと太った御仁をヘッダーに収めるには一つしかないでござるな!」
男はそう言うと、自身の腰に差した刀を抜く。
その姿を見て、一歩後ずさる王。
「金か?地位か?名誉か?何でもやる、だから助——」
瞬間、王の首が飛んだ。
男は王の首が飛んだ瞬間にスマホを構え、シャッターを切る。
「できた、でござる!!」
男は、自身のアカウントに、『できた!』と投稿し、自身のヘッダーに王の生首の写真を載せる。
「いや、これで拙者も万バズ使いになれるでござる~!」
男は鼻歌交じりにスマホを見て、そして後ろの貴族たちへと振り返る。
「ま、後は頑張るでござる!」
男がそう言うと、扉の向こうから、どたどたと物音が聞こえてくる。
貴族たちが訳も分からず呆然としていると、扉は勢いよく開け放たれた。
そこには、大量の民衆がいた。
「……貴族だ!やっちまえ!!!」
「「おう!!!」」
――その日、一つの王国が滅んだ。
その国はその後、一人の勇敢な若者の元、民主国家となり、世界に名を馳せていくことになる。
なお、その後、その若者がスマホを手に入れたとき、「あれ、あの人のアカウントがない……」とぼやいていたことが有ったそうな。
なお、男のアカウントは過激な暴力描写により、凍結されていた。
ムサシ☆ミヤモト
@miyamiyasamurai
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
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あなたの読書人生に良い本との出会いがありますように!




