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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

甘!甘!スローライフ送っていたらのに!電脳世界を壊すことになった件につて~

作者: 猫八

登場人物

 ビル=マアク

 マアケリ伯爵

 マアケリ婦人

 警部補

 宗助

 真人

「殺さる」

 雪景色の中で遭難した話をしてくれたのだが、私には彼女を話している暇などなかった。銀色のコートが彼女の前髪のかきあげるのを助ける、私には彼女にとって駒でしかないようだ。私は四宮と言うと彼女が手に持っている銀色のペンダントを放り投げた。

「だれか、助けてくれ」

 マアケリ伯爵が床で包丁に刺され死んでからもう一週間が経とうとした。ビル夫人は活発で横に太い体型をしていたが、大らかで気の長い女性であった。ビル婦人はいつもの日課である新聞の購入を済ませようとしていた。新聞は一つの辺が13センチ程の大きな新聞であった。彼女が新聞を見ることにより夕方までにどのようなことが起こるのかを推測するのが彼女の日課である。ビル婦人はいつもの通りにスウザンの婦人と談話を終えると自身の足を使い新聞屋へ赴く。

 彼女は自身の視線を気にするような人種ではないのだが、今回に限っては隣町に住んでいる少しボケたお婆さんが毎日乗り遅れているお婆さんをバスがバス停に停まる時に乗るまで見送るのだが、私を見た途端「結構です」と断った。ビル婦人はビル婦人がお婆さんは身よりのないことを知っていたし誰かの嘘を素直に信じる人間でないことを知っていた。

 首てお店に入ると彼女を知っている人は誰であれ彼女に挨拶をするのだが、今日はされなかった。私から話しかけたら挨拶をするのだが彼女へ返事をする人は誰一人としていなかった。ビル婦人は今日の朝刊を取るとレジカウンターの前に行き会計を済ませようとした。その時である、お金を渡そうとすると従業員の彼は困惑した表情と確かな戸惑いの顔を見ていたのだ。ビル婦人は背筋に冷える何かを感じたため会計を済めせてそそくさと店を出ることにした。

 夜明けまでまだ時間があるから私はどうにかそれまでにもやもやを解消したかったため、彼女は朝刊を開いた。

 その一面記事にはビル婦人の丸くて頬が垂れている顔が『殺人犯』と言う名前と共に載っていたのだ。

「警部補捕まえました、犯人です」

 警部補は困っていた。犯人が供述している人相の人間が誰も見つからないのだ、警部補は自身のパンツと青色のショーツからフリスクを取り出すとそれを噛んだ。その時である警部補のマイクが私に向かいとんでもないことを言いただしたのだ。候補となる人物の身元を洗ったあとなので私はそこまで期待をしていなかった。

「おうようくやった、そいつは」

 マイクが提示した人間は頬が垂れていて、顔にはニキビの斑点と潰した後にできたクレーターが特徴の太った女性であった。彼女の右手には赤い粘り気があるように見える液体が付いた包丁が持たれていた。

「主婦のビルです」

 手と握られている接続部には合成のような暈しが入っていたがそれが決定的な証拠になりうる可能性を否定することはできなかった。マイクはこの写真を警部から渡されたと聞いた。つまり警察がこの捜査に全力を出すということだとにんしきした。

「ビルか、おいビルお前の職業は何だ」

 ビルは以外にも大人しかった。私はもっと抵抗されるのかと予想していたからだ。警部補が日の出前の時間に彼女が行く新聞屋の『二三●』へ警察車両で行った時には真っ青な顔をしていたからだった。動揺していることは取り調べをしなくても明らかであった。彼女はパトカーが来た時には意識を失い混濁していた。私たちは取り調べをするよりも先に警察病院へ入院し治療をさせなければならなかった。 

「私の職業は氷菓子職人です」

 取り調べをするのは一か月後になった。私たちはそれまでに犯人の特徴となる証拠を集めることに奔走していた。私は彼女が入院している間毎日見舞いに行くことにした彼女の話によれば、殺人が行われた12月21日も同じように生活をしていただけだと言っていた。

「ビルよお前には犯罪の疑いがある。しかし証言する内容によってはお前の不利になることがあるので言わないのも一つの手だ」

 しかし取り調べ以外でも尋問は証拠として採用してはいけないため、私は彼女に取り調べをした。私はいつもの口上を言うと彼女へ尋問を開始した。私は例の写真を提示するとビル婦人は驚いたような眉を垂らしたような顔をした。

 ビル婦人は空き部屋の鉄製のロッカーに私物及び貴重品ないし通話機器を置くように指示すると一通り世間話から始めるようにした。重い雰囲気を演出しようとしたがビル婦人は目を閉じ膝を握り拳で結んで背筋を伸ばしそのまま大仏が如く固まった。

 尋問からはすでに十二時間が経つが彼女はうごかないヒナは体から吊り上がり彼女に怒声を浴びせた。しかし彼女は瞬きはおろか言わず何もしなかった。実際彼女のしていることは正解だった。であるがそのまま膠着するのは忍びなかった。

「つまり黙秘権が有ると言う事です」

 ついに話したのが、三件目の火事の際に消防に助けを求めることであった。私はとうとう尻尾を掴んだとおもいほくそ笑むと、なんと本当に消防へ連絡していたのである。元来より警察である以上疑いもせず信じず証拠を確かめるために尋問をすることを心がけていたが、彼女の胆力に恐れ入った。

「13時13分ビル=マアクを逮捕する」

 しかしこれは驚いたのだが彼女は有罪になったのである。彼女が話した証言に信憑性が無いのかそれとも私が集めた証拠が充分に証明したのか定かではないが、最高裁判所はビル=マアクの弁護を棄却したからだ。

 それは梅雨が来る前の月のことであった。彼女は二年間拘留されていた。その間の尋問は彼女の十八番の黙秘権であった。それを見れない君たちは損をしているだろう程に。


「お願いします」

 宗助は悩んでいた。目の前にいる女性はノックをすると確認もせずに部屋へ飛び込んできた。生来宗助は自分が許可した人間だけしか部屋に入れない主義を持つ人であった。そのため真人は部屋に入ると警察を呼ばなければならなくなるのではないのかと身構えていた。

 しかし彼は私が建てた予想よりも大らかな態度で彼女を出迎えた。宗助には女性を毛嫌いするけいこが有った。それは彼の母が自分の主張は通すが宗助のすることなすことを否定する模範的な人格破綻者であったからだ。男性は特に問題はないのだが、女性に関しては昼のコーヒーブレイクですら緊張して行えない程だ。

「ふむどうしたものか」

 真人は自身のポケットに入っている携帯から『110番』する算段を取ってた。それは忍ばせていた携帯の『通話』のアプリケーションを見ずに手の感覚だけで押すと言うことであった。宗助は荒れ狂う彼女を諫めると自身が飲んでいる嗜好品を渡した。これは台所で聴いた話であるが黒く暖かいそれはコーヒーであった。宗助は依頼人であるマアケリ婦人と30分ほど談話すると緊張もほぐれて来たのか、その顔には笑顔が戻っていた。

 宗助は何でも聞いた。特に近くの大型ショッピングモールの特売日の話で盛り上がることが多かった。マアケリ婦人は宗助にうっとりとした、それでいてどこか低い声で尋ねるようになった。どうしたものか彼女には私が見えていないのか、お替りをするときには自身で行こうとした。しかし彼はそれを止めて自分で行こうとする。

「どうしたもこうしたもないだろう」

 台所で二人は話していた。宗助の驚きように驚いていた。私は彼の目を見るとあのリスクを取る時の危険な目であった。私は彼に耳打ちをした。彼女は或一部、新聞を持って来た。そこには『マアケリ伯爵夫人死去』と大きな文字で一面を飾っていた。

「確かにね」

 マアケリ伯爵が本当に死去したとなると遺産相続の関係から『親族』とされる人間をよばなくてはならないのである。それはマアケリ伯爵が元来あまり人と交流しない性分であるからだ。そのため身内を新聞広告などで呼び戻さないといけないのである。

 しかし最近になり彼が死んでいないのではないのかと言う都市伝説が出回ったのだ。彼女は信じていないらしいのだが、もし万が一本当ならば死去自体が嘘になり彼の地位と名誉が地の底へ崩れ落ちるからである。

 そのため彼女は彼に捜査の依頼をしたのである。あまりにも突拍子のない話に彼も頭を抱えていたが何とか話を聞くまでに精神力が回復していた。

「宗助先生、どうかお願いします。私の夫はこの刑が確定したらもう破滅です」

 マアケリ婦人がその見たという新聞を持って来てくれた。確かにこれは新聞の中に入ってるのが一般的に販売されている紙より上質な厚めの和紙であった。マアケリ婦人は小汚い皮の破れたジーンズや靴を履いており煤けた上着を着ているが、実は意外とお金を持っているのではないのかと感じた。新聞は表と裏が薄い名前らかな生地になっているが双方の中には厚めの和紙が入っていたから、一部をつくるのに発生する原価が高いためである。

「夫は、ということは、貴方は違うのですか」

 彼女は口を手で覆うとポケットからハンカチを取り額に当てた。真人から見ても彼女が汗をかいているのは明白であった。マアケリ婦人が話を始めると彼女は主語もまともに言えないまま何をしたのか、たどたどしい言葉を言うだけであった。

「それは離婚をしますので」

 彼女は話を聴いていると彼女は大きな課題があったと言う事だ。それは彼から慰謝料を貰うという明確な任務であった。私は一人の男としてこれほど背筋が凍ったことは無いだろう、しかし同時に激しい感情も湧き出て来る。「そうですか」と一言だけ言った。

「きくに堪えないだろ、僕は元来より女性を信頼しているが、君のような人種とだけは相いれないと、相場が決まっているのだよ」

 感極まってしまい自身が持っているコーヒーカップが震えていた。マアケリ婦人もなぜだが頬を緩めて慈しみの顔をしていた。宗助も激しい感情を露わにして怒声を浴びせることになった。私にとって本当の恐怖とはこのことかもしれない。

「貴方は探偵でしょう、事業所を書いて、探偵の専門学校に行き、十二年間の下積みが有るというのにどうして、そのような薄情なことが言えますか」

 彼女がコーヒーカップを置き整える。嘆き悲しむように彼の話を聞いていた。わたしはそれに話を合わせて、何度もうなずくことしかできなかった。彼女が話終わると私は口を開き答えた。

「では一つずつお答えします。僕は探偵ですが私立探偵ですから人を選べます。下積みをしていたのはそれが必要であったからではなく、金に困窮していた時期があっただけです。そして探偵の専門学校に行ったのはそれ以外興味が無かったからです、貴方に言われなくともそこら辺の大学程度ないら余裕で入れました。これで分かったでしょう、私と貴方では相いれないと分かったでしょう」

 コーヒーカップを置くと彼女は眉をひそめたような顔になりわなわなと震えている。それだけではなく床を何回も叩き彼女が貧乏ゆすりをしていた。しかし彼女の顔には笑顔が張り付いていたのだ。私はそれが虚勢ではないのかと察した。

「まあその辺にしてやれ」

 あまりにも見るに堪えなかった。堂々とした宗助の風格に気おされて彼女は言葉を失った。その啜る動作一つが神秘的と想えるほどであった。

「あなたが考えていることはどうでもいいけれど、ここまで言ったのだからやってくれない」

 矛盾したことを言ってるようでもあった。私は彼女に話を聴いているとその女性が生来、飢えた肉食獣の目をして殺気立っていること知った。このまま彼女の要求を飲まなければ食い殺されるだろうと言っているようでもあった。

「無理だね、どして離婚を前提としている夫婦の仲の改善をしなければならないのかな、とても矛盾していることだと私は思うよ」

 私はそれっきり話をしていないようにも気がした。彼女は今にも飛び掛かりそうな勢いであったがそ宗助からしれ見ればいつもの事であった。彼女に最上級の紅茶の束をふんだんに使いもてなす。私には市販の茶葉であるが。

「それはそうだろうけれど、表立って離婚するけれど親父さんの潔白だけは証明して欲しいなんていてないだろ」

 私は笑うことを話している時に彼女は眉をひそめた。手を叩くと私は召使いとしてその場の書類をしまった。マアケリ婦人はさぞかし驚いていただろうが私はそんなことは無視して皿を用意する。人格破綻者ではなるがせっかくの客人でもてなしたいという欲求が強くなった。彼は葉巻を取り出した。先端を切り取りチャッカマンで焼く。立ち昇る煙からはいい香りが充満する。

「それは確かに」

 良い匂いが彼の奥の暖簾の中から嗅ぐことができた。彼女は料理を出される内に若返るかと思える笑顔を発し、彼に断りを入れずかぶりつこうという気にさせていた。葉巻の臭いと彼の香水のみずみずしい匂いが混ざり中和されている。

「なら話せばいい」

 暖簾の奥から来た料理たちは心躍る海老、アボカド、ニシン、鮭であった。彼女はかぶり付いていた。それだけはなく一心不乱に食べていたのだ。であるが宗助がマアケリ伯爵の話をすると一層不機嫌になった。宗助とマアケリ婦人は楽しく談話していると私は想えた。しかし急にマアケリ婦人は鬼の目つきになりテーブルを叩いた。真人の料理が口に合わなかったのだろうか。

 トマトとアボカドを基調として鰹節と海老と調味料としてレモン果汁と醤油とオリーブオイルを大さじ二杯程度をかけた。トマトと鰹節は始めに入れて一度電子レンジで加熱してから海老を投入するためだ。

「何をいっているの。もし依頼の内容を聴いておいて帰そうとするなら、訴えますからね。それで良いのなら帰りますけれど」

 マアケリ婦人は私がファイルに納めて保管していた『業務締結書』を出すように催促した。しかし私は依頼人でもないのに、そんなものを相手へ渡すことはできないと言った。であるが彼女が自身の個人情報を勝手に見られたと言いプライバシーの侵害であると言及したのだ。

 それは私たちにとって非常に感化できない者であった。ここまで狂うと私個人の責任を超えている。そのため私は宗助へ指示を仰いだ。宗助は沈黙しているようであったが、一分とすると手を横に振りまわした。それは『渡せ』と言う合図であった。


「それは好都合ですね。では勝手口は私から見て右側にあるのでどうぞお帰りになってください」

 彼は私の心を汲んでかあからさまに見える態度で右の扉を指さした。彼女が拳を震わせると私はマアケリ婦人を睨みつけるが如き目で仁王立ちした。そこは宗助が椅子に座っている席の後ろであった。

「あなたたちね」

 彼女はそれが当然であると思っていた。彼女はクリアファイルごと重要書類を手渡ししようとしたときに手が引きちぎるほどの握力で渡したからだ。神経が逆なしてしまうのは貰うときに乱雑に扱うと皺ができてしまうためである。

「さようなら」

 彼女は大きな音を立てて玄関の戸を閉めた。今日の昼はどうにも小鳥の鳴き声を聴くと憂鬱な気持ちになった。しかし彼女は朝食と昼のコーヒーまで嗜み帰っておそらくは自身の自宅まで行くことにむかっ腹が経った。それを私は許せなかった。

 もうセピア色の花が芽吹くころだというのに人の心は花よりも美しく進化しないと言うことの現れであろうか。それは彼女が横柄な態度をしたからではなく、彼女が自身の感情を抑制し対応しなければ望まない結果を得られない社会が彼女の行動とかみ合わないから、マアケリ婦人自身が損をするためであった。

 しかし宗助は違った挑戦的でどこか手を組んだり話したりしながら不敵な笑みを浮かべ、時には体を振るわせていた。彼はおもむろにタンスから作業着から着想を得た分厚のズボンと生地が熱く少し薄手の上着へ着替えると私にも着替えることを催促したため、真人はそれが冒険の始まりのような予感がした。

 私は偶然にもトマトとアボカドとレモンという好物を食べたばかりであったため、宗助が催促をしても何なら腹を立てることなく受け入れることになった。

 



「すみません、丁度宜しいですか」

 私は女性から話を聴こうとするとその女性は頬がこけていて、どちらかと言うと不健康そうな女性であったため、聴取すら中断し病院へ入院させようと彼女に自身が栄養失調の可能性が有ることを説明していたから、マアケリ伯爵の聴取は難航していた。

「どなたですか」

 私は夫マアケリ伯爵の復活の真相を究明するため、私の友人である宗助の判断材料を多くすることを使命として事実の獲得のために、我が友人でもあるマアケリ伯爵の聴取をしようとしていた。私たちはどうしても彼から蘇生した仕組みを聴きだす仕事をしなければなかった。

「私は宗助と申します」

 綺麗な花場と布で中身を隠したバケットをこれ見よがしに見せつけていた。彼は「つまらないものですが」と言い彼女にそれを手渡した。真人は事前に中身が何なのかは知っていた。中身は500gの居イチゴとオリーブオイルとアボカドであった。

「そしてこちらが真人です」

 私が驚いたのはそれは主の物ではなく、全て使用人であるさとこ夫人の所有物になるということであった。これは後で宗助から聞いたのだが彼が『おもてなし』としていつも行っていることであった。使用人は衛星状態はいい物の給料の格差から買えないものがあるのだから、お金を持っているのならばそれを他者に使うのは当然のことだと言っていた。

「私にはどうしてもマアケリと話すのがいいのかと思いましてね、こちらを開けてはもらえませんか」

 彼女のことを話していたが女中は宗助を部屋の中へ入れると彼女のことを話した。それは彼女が話している女性が恰幅が良く横に太く大きな女性であるからだ。それは前日私たちの探偵事務所に来訪した婦人であった。

「宜しいですよ」

 彼女は嬉しそうに頬を緩ませてそれから彼女の話をしていた。それだけではなく、彼女が話している陽気な言葉を何回も展開していた。それは多かれ少なかれビル婦人の事ではないのかと考えていたから、私に潔白を証明させるために話していたのだろう。

「ありがとうございます」

 明るい言葉は周囲だけではなく宗助を少なからず退屈から救い出していた。しかし彼からしてみれば捜査そのものが好きなのであり、彼女自身はどうでもよった。そのため彼女がマアケリ伯爵の前に立たせると能面の顔になり、マアケリ婦人のことを見やしない。

「ここは一階なのですか」

 伯爵は輪廻から解かれて蘇生された前には美しい肌も、転生後には色白の肌をしていて歯も何本かかけていた。私が来訪した際には美しい食事のマナーも今は人が変わったように租借音を優雅に奏でている。それは私にとって大変困惑する出来事であった。

「ええ、入って直ぐに中央階段が有りましてこちらから各部屋に招待されます」

 しかし宗助はそれを知らずに租借音にすら気を取られることなく部屋全体を見渡していた。私は彼に畏怖の念を抱いた。それは彼が彼女だけでなく人情や感情に心を揺さぶられることなく任務を遂行しようとする鉄の精神の持ち主であるからだ。

「無駄に広いな」

 彼が年季の入った重い声で言った。すると彼も笑い「そうですか」と軽く答えた。彼らは食事を済ませていてこの屋敷で食べ物を何かしら食べるということも無かった。それは伯爵も同様で先に食べていたのは私たちが朝食の時に来訪したためである。

「いえいえ、そんなことはありませんよ、この部屋も今度はもっとコンパクトになるのです」

 伯爵はそれを喜ぶどころかむしろ嬉しんでいる様にも思えた。真人は宗助に伯爵は何て心が広いのかを力説したが、彼はそれを笑いながら相槌をうち聞くだけであった。私にはそれがただ聞き流しているようにも思えた。

「それはどうやって」

 私が支配者であるマイケル伯爵から話を聞くと彼は笑いながら言った。そこにあったのは一台の無線ランであった。発信機及び受信機を基にしてつくられているそれは送信と受信が可能な機器であった。信号を受信するとあらかじめ組まれたプログラムが作動して独自のルートによりインターネットへ接続を可能にする装置である。情報はあらかじめ定められている機器に設定されている規格と同じ規格へ送信されるのである。

「インターネットが繋がるのと自然があるから」

 私はその技術に驚愕していた。インターネットと繋がるために他の企業を介さずに交信ができる装置を開発したということになる。それだけではなく彼は情報端末に思考補助システムを搭載した補助ツールを搭載しようとしていた。

 私はその自身の破滅をかえみらない善良な精神に心底感心していた。しかし宗助は煙草をふかし顎を突き出して足を組みながら頷いているだけであった。私はその非協力的な姿勢に心底腹が立つのであった。

「それなりには快適そうですね」

 カメムシや蝉やカブトムシが当たりを闊歩する鳥たちはカブトムシを捕獲しようとしたが硬い甲羅に覆われていたからうまく嘴でつばむことができずに捕獲することを諦めた。しかし食べるという目的を諦めていないため動物はけたたましく地面へと向かいミミズを捕る。

「ワイフォンのスポットも三つで大丈夫なのですよ」

 マアケリ伯爵はかねてより日本が好きであり平屋で過ごしたいという夢があった。しかしそれの夢を実現するには虫や風土になれる必要がりそれにとても苦労したと言った。であるが私からしてみればそれは苦しいことではないためあまりよく分からなかった。

「すごいですね」

 宗助も首を傾げていたが五十を過ぎた男には適応力は無いのだと痛感させられた。真人に到底理解できない身体の衰えが有ると痛烈に感じた。それは彼がカップを持つ時に震えながら指先の力だけで持っているのを見て明かである。

「こちらの客間にお通りください」

 宗助は渡米した際にイチョウ街に住まわれている今の屋敷はどうするのか聞いた。マアケリ伯爵はこの別荘を売り軽井沢に行った後アメリカに行くため、この別荘は一週間以内に取引先を見つけることになるだろうと知った。

「それにしても知的な女性だな」

 話は先日逮捕されたビル=マアケリ婦人に移った彼女が伯爵ご自身を殺害したと嫌疑をかけられていることは本当なのかきいた。するとマアケリ伯爵はうつむきなんと笑ったのだ。私が「笑いごとではないのですが」と言うと彼は「そんなものどうして彼女が犯人であるはずがない、日本の警察も優秀だと聞いていたがまさかこのような見間違いをするとわな」と言う。

 しかし宗助は「ご自身で警察署に赴き、蘇生されたと説明すれば良いではないのですか」と言うがマアケリ伯爵は「いや、私は忙しいのでね、本人が来ないのであれば出頭はしないよ」と言う。宗助が席を立ち大きなため息をついた。

 私は彼女が髪が白髪の女中であることを知っていた。偶然だとマアケリ婦人は言う。それは彼女にはいつも客室以外の内装を手伝っていた。彼女は買いたい本が有るためここで使用人として働いているとのことだった。

「奥さんいますよね」

 実を言えばマアケリ伯爵の婦人に移った彼女は私に依頼をしたこと、彼女が彼の様子を心配していたことを話した。マアケリ伯爵は目をうようよさせていたが彼女は愛人であることを明かした。彼はもちろんのこと彼女は実の夫が居るのだ。

「そんなことは、どうでもいいよ、重要なのは彼女が今まで何をして来たのかだよ。もちろん、それは主にも言えるのだが」

 宗助は渡米した際にイチョウ街に住まわれている今の屋敷はどうするのか聞いた。マアケリ伯爵はこの別荘を売り軽井沢に行った後アメリカに行くため売るのだ。この別荘は一週間以内に取引先を見つけることになる予定だ。

「勝手に歩かないでもらえるかね」

 私と彼はとうとう堪忍袋の緒が切れた。彼と別れると私は彼女に話を聞くために立ち去ることにした。

「もし私のことを信頼しているのならば、この廊下すら自由に歩いてもいいだろう」言うとマアケリ伯爵は「君には分からないだろうが廊下で歩いたカーペットですら生涯にわたり稼ぐ額よりも価値がある代物なのだよ」と言うので私は「そうれならばその価値が分からない私たちはさっさとこの屋敷から退散するべきだな」と宗助は言い返した。

 彼は目が泳いでいたが「いや、結構」と言うと私は「分からない」と返してやった。「もう結構だ、私の時間を無駄にした罪は重いが彼を丁寧にもてなして返してやろう」彼が言うと私は二人の使用人に同行されて玄関のホールを跨ぐように促される。

「マアケリだよ」

  聞いた話によると彼女の友人であるビル=マアクは依頼人になるかもしれない今、居間に居るマアケリ婦人の学生時代の親友だ。そのため彼女が三週間前になるが朝刊に載ったときにはとても驚いたそうだ。それが吉報であればよかったのだが悲しいことにビル=マアクは殺人事件の犯人として仕立てあげられてしまったのだ。

「しかしあの別荘からは追い出されてしまったが収穫はあった。大層にこしらえたにしては有益な情報が一週間後にアメリカへ移住することと軽井沢に行くことだとは何とも貧相な城だと僕は感じるね。これならどこかのファミリーチェーンに足を足を運んだ方が多くの情報を得られる」

 そしてホームズは商店街に着くと『祝賀会』と称して店の暖簾を潜ったのだった。


「おはようございます」

 私は朝食を済ませ彼の家へと行こうとした。私が彼と言っている人は基本的に夜型で朝は昼から行動を開始するような人間であった。彼の人とはダアレンと言う細長く筋肉質な男性であった。マアケリは胴がサイトを運営しておりそのサーバーを保有していた。

「おはようございます」

 マアケリは余裕の笑みをつくり握手を求めた。彼は朝食を一緒に取らないかと誘ったが私は断り彼だけが一人で済ませることになった。

「それにしてもあなた方はしつこいですね」

 私はダアレンに宗助とマアケリ伯爵のいきさつを話した。当然宗助からは昨日の晩に許可を貰っていた。私はダアレンをワインを伸び比べていた。他人の酒だと言うのにいつもよりも何倍もの量を飲んでしまった。

「何がですか」

 私は予想だにしない言葉が帰って来たので驚いた。薄暗い暗誦に豆電球の橙色をした光と薄暗いカーテンの中での会話は密会をしているようでとても楽しかった。彼は笑いながらも小指で私を指しグラスを傾けた。

「君は今探偵の助手だろ」

 彼は空になった自分のボトルにワインを注ぎ込んだ。それは何とも形容しがたいスムージーの抽出機の形状をした装置がワインのコルクに付いていた。

「マアケイリの殺人事件を解決するとか」

 ダアレスはどこから仕入れたのか私たちがマアケリ殺人事件に取り組んでいるのを知っていた。私は彼に気取られたかと感じたが彼は直感より論理を優先する人間なのでそんなことは無いと断言できた。

「気に入らないのか」

 私は強い口調で言ってみた。するとマアケリは仰け反るような仕草をして手を振っていた。私は彼がこの件に関わるのか気になっていた。

「気に入らないわけではないが、あれは警察が捜査しているのだろう」

 彼は若干後ろの本棚のことを気にしていた。それは彼が人生を掛けて集めて貯蔵した蔵書であった。彼はそれを大事にしていたのだ。観賞用の本を愛でると彼はいつも通りのダアレスになった。

「その警察から今回殺人事件を解決するように言われたのですよ」

 私は個人的に動いているのではなく、その行動が社会通念上正当であることを証明した。彼も納得しているのか、それともフリだけなのか相槌を打ち聞いていた。

「実際には捜査に必要な証拠を探すように言われていますが、それを提示するか否か私が決めることができるよ」

 彼がそれを言うと好機の目である瞳孔が開く仕草をしていた。彼が前のめりに前へ出ているということからも興味があることは明白であった。

「ところでマアケイリはどのような事業をしているのですか」

 彼は日本に居る間に自身の個人事業主として会社をたてそこに代表取締役として優秀な人材を投下していたのだ。

「動画配信をしています」

 彼はその内容まで呆気からんに言う。私はその胆力に心底感服した。こんな男も居るのだろうか。しかし私が独り身あれば彼と一緒に仕事をしたのだが、私はあいにく宗助とシェアハウスをしているのでそれは叶わなかった。

「動画配信ですか、それはいいですね」

 私は学がなかったので波など数学など言われても分からないから、とりあえず相槌を打っておこうとした。しかし彼はそれを許さずにいた。

「でも動画の質を担保するのも大変でしょう」

 私は帰ればまた勉強の続きだと確信した。彼から学んだことはこれぐらいだった。

「ええ、ですから専用のスタッフを雇っています」

 話は盛り上がり彼に不利益が出ないのならば聞いてみようと考えいたのだ。彼はそれを待ってましたと言うように、数冊の数学書の中でもとりわけ角度と波に関する概念を、学んでいた。彼はそれを動画に応用することで良質な音声を発生させることが可能ではないのかと考えるからであった。

「実際には業務提携契約でしょ」

 それならば音の周波数ごとに人の耳がどの程度のストレスを感じるのかを実験で明らかにすればいいのではないのかと進言した。

「そうです、自身のことは自身の事ですることになっています」

「貴方がたの雇先と話してみたのですが、実際には元々孤児だったり経済的に困窮している人たちがいるようですね」

「それがどうしたのですか」

「いいえ、何も」

「そうです、ちょっと警戒しているかもしれませんが、彼らが自分の意志で仕事をしているのですよ」

「仕組み自体に罪が無い」

「経済的に困窮している人たちが飼い主の言葉を断りますかね」

「それは敗者ですから」

「そうですか」

 私は静かにグラスを傾けた。


「警部補捜査の方は順調ですかな」

 巡査はマイケルのことを話していた。宗助は警部補と一緒にその扉を話した。彼はそれを見ているとどうしてもうずうずした気持ちになるそうだ。警部補は彼と一緒に現場のブルーシートの場所に行く。するとそこには紛れもなくマイケル伯爵の死体がそこには有ったのだ。

「いやまったく、これと言って進展はありません」

 かれは驚いたようなそれでいてどこか焦った顔で宗助を見ていた。宗助も目頭に手を当てて悩んでいた。その時真人は友人の家に行くとのことでいなかった。彼は一言「いてくれたらいいのにな」と呟き捜査を開始した。

「正直で結構、死体はうごかしてないかな」

 彼は警部補に確認を取る彼は神に誓って動かしてないと言うだろう。実際警部補が彼に応援を要請したのはついさっき電話したばかりであり、人込みもあり、そしてなによりこれほどの好待遇なのだからまず間違いないだろうと確信する。

「はい、全くと言っていいほど動かしてはいません」

 私は彼女が言っていたそれを見ることになった。それは苦悶の表情をして地に伏しているマアケリ教授本人にも思えた。宗助は埃が舞う前に彼の目の瞳孔を確認した。そこは大きく黒塗りの死んだ魚の目をしていた。

 間違いなく死んでいた。しかし彼からは死人特有の重い石のような感覚はしなかった。自分の手では大きな岩を手に持っているようであった。死体は大きな口を開けて幽霊を見た顔であった。

「宜しい、私は彼の話を聴いているから、その開いた口から見える二番目と三番目の乳歯について詳しく見ててくれるかい」

 警部補は私だけでなく彼の女中にも話がしたいと考えていた。それを宗助は承諾してマアケリ伯爵の住所と電話番号を書いた紙を警部補に渡した。彼は以外にも50歳は超えているのにも関わらず奥歯は乳歯のままであった。

「わかりました」

 警部補に宗助なりの検死が終わったことを伝えると警部補は自身が確保したと言う墓守が居ることを宗助に伝えた。目撃者がいることを知ると直ぐに宗助は「合わせてくれ」と警部補にせがんだのだ。

「こんにちわ、ボウウルスさん」

 宗助は華やかで美しい声をして証人となるボウウルスの名前を呼んだ。ボウウルスは酷く混迷していたので、宗助は首を後ろから手を伸ばし引くと片方の空いた手で右手の脈を測り「160,180,200」と数を数えた。

「どうですかボウウルフさん、少しは元気になりましたか」

「ええ、まるで肝臓を現われた気分です。だいぶ良くなりました」

「そうでしょう、自分の身体は自分が良く分かっていないといざと言う時に役には立ちませんからね」

 私は彼女に話を聞くと彼から大きな長い財布を捕る。それは目で彼が動かない手の代わりに示してくれた証拠であった。

「こんにちわ、あんた彼の知り合いかだったら恐ろしい事を聴いているだろ。あんな恐ろしいことを聴いておいてよく冷静になれるな」

 彼が診察をするとまるで見違えたかのように彼が話していた。私はそれを快諾し私は懐からいくつかのメモ用紙を取り出した。私は彼に話を聞くときは腰を斜めにして話を聴いていた。

「落ち着いてくださいボウウルスさん私は今来たばかりです。警部補からは何も聞かされていません。私は捜査に入るときにはまず誰にも話を聞かずにありのままの状態を見てそれから話を聞くのです。ボウウルスさん何を見たのですか」

 私は腰の低い高音の声で話を聴いていた。音は高く唇は最小限の動きであり、そして背筋に力を入れて話していた。彼はゆっくりとその重い口を開けた。

「墓から人が蘇るところだ」

 彼は震えていた。それは誰も信じないからではなく、自身が見ていたことをうまく説明できない事象を目の当たりにしたからであった。

「蘇るとは蘇生という事でしょうか、もともと誰かが入っているという事ではなく」

 彼は煙草をふかしながら、俯いていた。ボウウルスは確かに鋭い目で話していたが、宗助に審議は分からなかった。

「ああそれで間違えない、あれは蘇生されたマーケリーの悪霊だ」

「悪霊とはまた大きな事を言いましたね、悪霊がその墓石を内側から破壊し蘇ったと言いたいのですか」

 宗助は語気を強くして言った。彼が被せて言うので「それならば彼は本当に蘇ったことになるのか」と心の中で思った。

「あんたも信じないのだろが、そのあとに俺はその幽霊と握手したんだ」

 握手と言うと彼は自身の両手を使い深く握り込む動作をした。それを彼は煙草をふかしながら聞いていた。

「握手ですか、とういうことは実態が有ると言う事ですね」

 彼は煙草だけではなくそこら辺を見渡しながら彼の迫真の供述を聴くことになる。ボウウルスにとっては自身の経験したことを話す絶好の機会であった。

「やっぱり信じちゃいないだろ」

 タバコに煙管とスパスパ吸い、ついにはコーヒーや緑茶を飲みだした彼をボウウルスは小指で指した。しかしかれは目を見開き彼の意見を否定する。

「信じますから具体的に」

 朗らかな笑顔を見せると彼は話を続けた。

「俺は墓守の仕事をしているんだ、このご時世にしてみれば珍しいことではあるのだがな、何せ楽なバイトを探していたから、時間もあるし飛びついたんだ。一週間は何もなかった、普通の墓地だったよ。二週間ぐらいから成る音がしたんだ。俺は内側から何か壊す音がしたと思ったらそこには居たんだよ彼が二週間前に死んだはずの彼が、そして俺に満面の笑みをしたかと思うと一言『ありがとう』と言い俺はそこから自分の庭のように入り口の門に行き解錠したんだ、鍵は俺が持っていたんだよ」

 宗助はどうでもいいように彼の話を聴いていた。

「うん、そうか、わかったありがとう、君の証言は僕たちの捜査に大きな光をもたらしてくれた僕はこれなしに捜査をすることはできなかっただろう」

 彼の手を力強く話した彼は自身の話を聴いてくれたことに最大級の感謝をしていた。私は苦笑いをしてその場をそそくさと立ち去った。「ここには、何も私が得られるべきものが無いということが分かったというだけでも収穫としよう」と言った。

「もう、ここに居る必要もないな」

 彼が話を終えると真人が丁度友人宅から帰るところであったが彼と遭遇した。本当に偶然かと思った。しかし宗助からしてみればそれは必然だと言うことらしい。

「なら車でかえるのか」

 私は徒歩で行くことを提案した。しかし宗助は徒歩で行くことを否定し、タクシーで行こうと言った。宗助はそのあとタクシー会社に電話しタクシーを一台来てもらうことにした。「真人、君はどうするんだ」彼は言った。「私はタクシーが来るまで待っているよ」彼はそうするとおもむろに煙草を吸った。

「今日はタクシーを利用しよう、利用したい気分なんだ。それについて行きたい」

 彼は照れた顔をして頬を隠した。それは、垂れた裾を振り姿が見えないようにしようとしたから顔は見えなかったが彼がせき込んでいるのが、分かったためだ。

「私は別に構わないが、どこまで行くんだ」

 どこに行くのか私は分からなかったため「どこに行くんだい」と言うと彼は「自宅に」とあっけらんと言う。私は期待していたので肩の荷が下りたような気がした。

「具体的には駅へ行く、そこから帰る、そして家でゆっくりと推理の続きをしようじゃないか」

 彼は腕を大きく挙げてダチョウのようなポージングをした。それはマアケリ婦人が自身の自慢話をしているときに似ていた。しかし彼女と彼は違った。それは彼が文句を言わないことであると考える。

「今回の犯人は極めて単純でマアケリ伯爵だ、隻眼である彼がどうして両目とも見えていたのかはなのだが、かれは墓石を内部から破壊し外へ脱出、その後自分で門を開けて外に出てタクシーを捕まえた。僕たちが今しているようにね」

 私は静かに期待をしていた。「では、いつものように仕事が終わったら推理を再開しようではないか」私は大きく咳払いした。


「盗品蔵にはいい物がなかったな」

 彼は自身の家に居た。彼自身はこの家以外にもほかに自宅を持っていた。私はそこに一回だけ行ったが他には自分から行きたいと思ったことは無かった。彼は何度か誘ったが自身の仕事が忙しいので行くことは難しかった。

「僕の貯蔵している私物を盗品と言うのは辞めてくれ」

 彼は冗談交じりに言う。私は触ろうとすると彼が目くじらを立てるので私はひょいと手を取り上げた。彼はホットしたように胸を撫でおろした。

「わるかったよそれにしても彼女のこと、諦めてはいないのだろ」

 私は手を挙げて降伏したと言った。宗助はそう言うと懐からある一通の手紙を取り出し私に見せた。カナリアから貰う手紙よりも人工的でケミカルな肌触りがした。それを開封するといつも聞くような心地よい切れる音が聴こえた。

 私はそれを「女中からの手紙だな」と言った。

「ああ、そうだよ」

 彼が肩をひそめて言った、それは給仕が手に取るに最良な安価で市販されているものであるから、カナリア程の物好きでもない限りは知的階級に居る人間は使わないだろうと判断した。

「それにしてもだ、彼、マアケイリ伯爵が言った蘇生とはなにだろう」

 私は腕を組んで彼から真実を聴き出そうとした。しかし宗助は待って欲しいと手を出す。封筒には今夜十二時に彼が就寝すると書いてあった。それを見た宗助はほくそ笑みを浮かべた。

「伯爵が昨日十二時に就寝したのは記録しているだろ」

 宗助が真人に質問した。私はそれに首を縦にして答えた。その意図はもちろん『YES』であった。宗助はその答えを聴くとさらにほくそ笑みを浮かべた。

「もちろん」

 私は言語化するとこの言葉以外必要ないと考えていた。すると彼は私の言葉を聞くや否やその顔が真剣な顔に代わった。

「真人今日はもう帰り給え」

 私は彼の予想外の言葉に戸惑った。真人は「なぜ、どうして私も連れて行ってくれないのか」と言った。宗助はようやく重い口を開いて「私はこれから彼の屋敷に行く」と言った。「ならば私も付いて行く」私は何か危険のようなものを察し自身の拳銃のホルダーを確認した。しかし宗助は何人たりいても動かない鉄の意志を持ち合わせる人間だ。それが簡単に口を割るはずがなかった。「言いたいことが有るのならば言ってくれ、私たちは親友ではないか」私は熱く宗助へ言う。であるが宗助は首を横に振り「それが法を犯すことになってもか」と言った。私は戸惑ったのは事実だ。しかし彼の異質なやり方を見ていたが決して科学的賢智を忘れない姿勢に私は心を打たれたことにより決心した。「ああ、やっていいともしかし、絶対に無茶をするな」と言う。彼はそれを受け顔を手でべっとりと覆う、そして深い深呼吸をすると「分かった」と一言喝を入れるように叫んだ。

「君の熱は分かったよ」

 彼は付け加えるように指を立てる。

「それとは別に彼が十二時以降に別の趣味へ執心しているのも知っている。なぜなら彼の家の女中を口説いて私が聴き入れたのだからね」

 彼は先補の封筒の最後の宛名を見た。それは警察が最初に拘留した女性であるビル=マアクの名前が筆記体で書かれていたのだ。私は腰をその椅子に凭れた。真人は冷や汗が止まらなかった。

「では彼女は嘘を私たちに付いたという事か」

 私はあの診察した気が弱いが善良な女性が私に対して嘘を言っていた事になる。宗助は二ヤリと笑い胸を張って答えた。

「誰も初対面の人に家の内情をことごとく話す従業員などいないものだよ」

 私は言われてみれば至極当然のことだが彼から言われてみると確かに自身には不足していた情報であることが分かった。

「従業員?」

 私は宗助にきいた。「いったいいつ分かったのだ」彼は煙草のパイプをふかさなかった。「君が呑気に話した後さ。私は女中が君と話している時も、そしてマアケリ夫妻と話していることも知っていた。それはなぜかと言えば手紙だ。僕はビル=ジェイソンと言う架空の人物になりすまし女中と文通をしていた。しかしそこで予想外の事態が発生した。その内容とは手紙の内容が全く事実と違うということだ。私は一杯食わされたよあの女に、そして埒が明かないため私は急遽予定を変更し、ビル=マアクへ会いに行くはめになった。幸いなことに彼女のでたらめな手紙も名前だけは正確に合っていたということだ」

「そもそもそんなことをしてまで働くことは無いだろうに」

しかしなぜそんなことが可能であるのか聞いた。

「そう、そこが問題だった。あの女中はマアケイリ伯爵と業務提携をして働いているのだ。だから従順なのだ、なまじやる気よりも納得する言葉で説明された方が聞き分けが良くなるのと一緒だ。一時ではあるが」

「つまりその女性は私に言ったのは」

「当然金の話だろうね」

「人脈イコール彼女の金の収入源になのと、費用の削減にもなるからね。かかり付けの医者はそんなに高額だったかな。それとも新しい可能性を開拓したかったのかは定かではないが、仕事熱心なことでいいね」

「とんでもない話だ」

「事実として彼女が私たちを説得しようとしたのは事実だ。事実である以上は警戒せざるおえない。マアケイリ伯爵は彼女を使い君を誘導しようとした、その結果何が得られただろうか、それは私の情報だ。」

私は彼女の病的なふるまいが演技であるとは到底思えなかった。宗助もその点は認めていた。確かに彼女は病弱だ。しかしビジネスの場で病弱と言う理由は価値にはならないと言った。

「宗助の情報」

 「彼女はゲス野郎だよ。病弱と言う理由から金品をむしり取ろうとする悪党」と称した。しかし真人は「実際に私は金銭の要求をされてない」と言う。「真人、これは影と影を見る争いだ。それを買ったという時点で君はその商品を支持したということだ。全てにおいてこの法則が適応されるわけでは無いが、人生と言う歴史の中で大きいな買い物をするだろうがそれは、私たちだけではなくその子供にも教授されるのだよ。それは個人から、組織になり大きければ大きいほどその影響は増す。例えば労働なんてのも経営の視点からしてみれば時間を合法的に買うための装置だ」

「警察は民事不介入だからね、個人の決まり事をいちいち監視することは無いし、監視したとしても事件性が無ければ動きもしないからね」

 「長々と言ってしまったがつまり、彼女は自身の影響力を誇示したいために君へ言い寄ったのだ。医者の君にね」

 私はどうしてそうなるのかは分からなかったが彼の言いようもない説得力に首を縦に振るしかなかった。

「質を担保するのに切り捨てるということか」

「そういうこと、私たちは選ばなくてはいけないな、そうでしょうマアケイリ伯爵」

私はどういう事なのか分からなかった。私は戸を見たすると色白の肌はやせこけている杖を突いた老人が居た。老人は彼を、そう宗助を見ていたのだ、その闘志を燃やす目で。


「マアケイリ伯爵」

 宗助はマアケリ伯爵に蝋燭の火の近づけると彼の目を良く見た。それは彼が死んでいるのか採算興味があったため、まじかで良く見たかったからだ。

「宗助君とか言ったな、何時から知っていた」

 宗助は彼が話していることなど知らずに彼の目くじらややせこけた手を見ていた。さすがに二の腕などは服に隠れてみることはできなかった。

「貴方の部屋にお邪魔したときから」

 彼はぶっきらぼうにそう答えた。彼は頷きながら宗助を見ていた、いや、眺めていたということの方が正しいかもしれない。彼は放心状態とも思える『サトリ』の状態に近い状態で我らを見ていたのだ。

「ほう」

 宗助はその贅沢な顎髭を引っ張ったりしていたが、彼に止めるように言われたのでしたがった。「君は無礼というのを知らないのか」と言った。しかし宗助は「生憎と犯罪者に対する礼儀を私は知らないので」と言う。「私のは犯罪であって犯罪ではないからな」「そうですか、では証明すればいいと言うことですね」

 彼は懐からタバコをふかした。

「額口の本棚にエリクソン心理学の入門書と応用のための本が有りましたのでもしかしたらと思いまして探っている内に、貴方が優秀な心理学者であることを思い出しましたから」

「それだけか」

「貴方には分からないかもしれませんが貴方の態度はとてもよそよそしかったので何か知っているのかなと思いまして」

「気に入らん、それに」

「お気に召しませんか」

「お前のせいで私の計画がパアだ本当は強奪しようと思ったのだがな」

「それはおあいにくさま、私の部屋には優秀な見張り番が居るのであなたを心配する必要はなかったのです。目的が本当にそれでよかった。もし、あなたが私の捜査資料を盗む目的であったのならば貴方はただでは帰れなかったでしょうな」

「言っていろ」

「貴方を迎えに来たバスですよ」

 私は耳を凝らした、そして遠くのコンクリートで敷かれた道を、想像した。しかし、バスの駆動音が聞こえて来ることはなかった。その代わりとして遠くからサイレンの音が聞こえた。音は低く、遠く、そして重い音であった。

「宗助さん、大丈夫でしたか」

 ある白い白濁の車が宗助の前に停まった。それを彼はまじまじと見ていた。宗助は満面の笑顔で笑っていた。否嗤ったようにも私は思えた。

「見張り番とはこいつのことか」

 彼は自信を持って「そうです」と答えたのだった。マアケリは不服にしてしては余裕のある顔をしていた。体をワナワナとして彼、宗助が逮捕される最悪の未来を想像してしまった。

「さあ、どうでしょう」

 警察官は車両から出て、私、そして宗助を通り抜けて駆け出した。目の前の道路を走り掛けると警官は白髪の初老の男性を取り囲んだ。その人とはマアケリ伯爵であった。

「マアケイリ伯爵、13時31分不法侵入及び器物は存在によりたいほする」

 その時マアケリ伯爵は薄弱の胃腸を抱え座り込んだ。警官は彼が逃げられないように手や肩を掴んだ。

(宗助が情報提供したので刑罰を執行した)




 魚介類スープを飲もう。溢れる魚介の旨味が話をしていたのだ。かなり前から私たちは他から得た養分を糧に私は枷を着けていた。

「宗助一体何をすればいいのかね」

 私は彼からある小道具を渡されたりとか彼から指示を得たわけではなかった。彼はただ椅子に座っているだけであった。しかし、彼にはいいよれぬ雰囲気があった。

「この世に天才が居るようになすことを天命にした人が出現したのならば、その人は誰にも邪魔されない環境で育つ。このように天命を受け持った人は人類の歴の中で事変や天災が起こる前に出現しやすい」

 インターホンが、鳴った。私は驚いたのだ、彼に会う知人がいたことを。「真人、申し訳ないが、私は手が放せないから客数の対応をしてくれないか」「お前がやれ」私は大きく息を吐いた。「わかったよ」しぶしぶとへやから出ていった。「私は給仕ではないのだよ

「極めてたぐいまれなる犯罪の才能だ、彼がその才を他の分野でいかんなく発揮したのならばそれはそれで成功しただろうね」

 彼には来訪者は来ないことで有名だ。彼は手紙を捨てるからだ。メールも破棄するからである。私は今日も断捨離する彼に呆れていた。

「究極ともいえる犯罪の才能」

 彼はそう言うと「マイケルだよ」と彼のことを紹介してくれた。「はじめまして。私はそ

「その名前はミス=マーケリーだ」

「マアケリは今どこに」

 彼の憎いかおを退けながら朗らかな顔で話そうとする。しかし、彼はそれをダバコの煙でごまかそうとした。正彦には一瞬にして看破したから笑ったのだろう。宗助は余計に不機嫌になった。

「僕にも分からない、それことこの国の警備隊ですら、彼の尻尾を掴むことができないのだからね。ああ、僕はたびたび警察を馬鹿にするがそれはなめているからじゃない。民事不介入のくせに人によって態度を変える一貫性の無さに呆れているからだよ」

「そんなことはないが」

「そんなこととは言わずにほら、今回の事件の報酬だ」

「マズウル侯爵から頂いた金貨だな」

 しかし金のにおいにつられたのである。

「これは芳ばしい良い香りだ。これで当面の生活費は確保できたな、マズウル氏には感謝してもし足りないな」

「どうするもない、他の人には彼を捕まえることはできないからな、私は彼女に話をしているのかね」

「宗助さん、どうかしましたかな」

「彼女は、もう少し居候させて良いかもしれないな、彼女のことを知っているのは私だけだからね」

 それはマアケリにいた女中であった。

「なっ、どうしてあの女が」

 たじろぐ私を宗助はがっしりと受け止めた。私は彼の腕にしがみつき、支えられた。「ありがとう」と言う。彼は人差し指で一の文字をつくった。

「どしました」

 私は完全に目が泳いでいた。正彦が純粋な眼で私を見る。宗助がニヤリと笑い。私は心でため息をついた。

「なんでもない」

 宗助がタバコをふかしていた。私は冷蔵庫からつまみのにっころがしを取り出し差し出す。

「戸籍がないからな」

 彼はにっころがしを食べる。正彦は食べながら話しても気にしていないようである。「自分も一つ貰いますね」正彦も蒸かした里芋をつまようじで指し、食べる。

「僕もその点は気になっていた、どうして彼女に戸籍はないのだろう」

 戸籍がなければ、事業提出届けを提出できないから正式に認められないのである。「まさか違法事業」と言う、「呆れたね、そんなの許すとは思えない。彼女の嘘だろう」

「まあ、それは後で分かる事さ」

 空虚に思えた日もいつしか切り取り運天の空が見えた。

「私は某に見てもらうようにしたい」

「SNSにも夢や希望は無いしね」

「着実にやっていくしかないか」

「ならさバーチャル拡張空間たろう」

私は彼から一冊の本を渡された。題名には「株式保有者」と書かれていた。「付箋のページに緑色でマーカーされている文を見るんだ」と言うので私は言うとおりに見た。

「拡張空間?」

 付箋紙にはそう書いてあった。その付箋紙のページには必ずマアケリ伯爵の名前がかかれてあった。

「普通はかたちから入るでしょう」

 私は仮想空間について聞いた。仮想空間とは二進数でつくられた空間だよ。「仮想事業者」が開発しようとしている事業は複数の地下施設に仮想現実を構築するための環境をつくり人を移住する空間である仮想移住の計画である。

「概念を先につくってそこに型を流し込む」

 彼は指をパチンと指を鳴らした。

「最初は軍人に入れられるだろうね」

 確かそうだな、彼らはそう、

「そうなれば終わりだ、その前に確保しなければな」

 しかしどうやってそれを実現た。

「自身と接続できるVRモニターとそれを実現するためにビットを細かくしたスリーディープリンターを創るということか」

 私は静かに息を飲んだ。


「マアケリ伯爵は今回の事件が元で自身の資産を改めなければならなくなる。検察は嫌でもその罪状を明らかにしなければならないだろう」

「しかし、ビル=マアク婦人が正式な妻でありその浮気相手がマアケリ婦人であると良くわかるな」

「その後マアケリ婦人ではないな、愛人から妻になるようにせがまれて、やむなく承諾をして愛人から婦人へ昇格だ。マアクにまた狙われないか危機感を抱き社会的に抹殺しようとした」

「経済的に余裕のある彼女は身よりのないスタントマンを雇い出所後一生自由に生きれる生活ができるとでも甘い話で誘いマアケリ伯爵の計画に加担させたのだ」

「それが事件の真相だ。その証拠に彼女は自白した。裁判と言う場に置いて特に刑事事件では自白は是非をはっきりさせる要素でしかないが、事探偵と言う仕事に関しては充分な成果だ」

 宗助は早口に言う。

「それにしても彼女は良く口を割るという選択をしようとしたな」

 私は映像に移るマアケリ元婦人へ指を指しながら言った。

「彼は責任感が強い男だからね、悪の道に落ちたとしても、仮に愛人だとしても、マアケリ元婦人の名前を出すことはないだろうと判断したからだ。なまじ実行犯の幇助として起訴されるよりは自身の非を認め浮気の加担者として損害賠償を請求された方が良いからである」

「さあそんなことは今、どうでもいい。今日は君以外に客人が二人いるからね。盛大に祝おう」

 私は「誰だ」と言うと彼が後ろを指さした。そこにはあの時の女中が居た。「彼女なしではこの事件は解決しなかったからね」

 私は納得してくびを縦に振る。

「もう一人は」

 私がそう言うと彼は煙草ではなく一枚の写真を取り出した。

「まあもう少しだけまて」

 彼はたばこをふかしていた。それの笑顔はあくまでも満足気でとても嬉しかった。私は一枚だけ写真を見ていた。するとインターフォンが鳴る。

「待っていろ自分が行く」

 宗助は真人の動きを制止させる。

「私が行くよ」

 そこにはひどく綺麗な女性が写っていた。その女性は頬が細くくびれが良く彼が話している女性であった。彼は話を聞くと話をしていた。私は話しているとインターフォンが鳴った。私が出てくると宗助が持っていた写真に似ているその人が居たのだ。

「来客ですか」

 その美しい女性を見て私は少なからず一目ぼれをしてしまうほどだ。

「今行くよ」

 彼が椅子から立ったことで写真が落ちた。私はすかさずその写真を見た。その写真を手に取ってみたがいたって普通の写真であった。私は気になり裏面を捲るとビル=バーンと書かれていたのだった。

「今日は楽しい祝賀会になりそうだ」

 宗助は静かに微笑んだ。

仮想現実・・・バーチャルリアリティーの技術を応用した仮想空間の概念的総称として使われる。

バーチャルリアリティー・・・VRとして仮想世界を構築する環境を整えるための周辺機器として登場。

仮想現実に囚われた人・・・配属先の部署が仮想現実で電話対応をさせるための仕事に従事させられた会社員

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