第2話 アルマニア王国
本日3話目となります。
よろしくお願いします。
第2話 アルマニア王国
ジェイさんは
「ワシらの住むアルマニア王国には大きく分けて3種類のお金が使われておる、何か分かるかの?」
「ハイハイハイっ!!」
ジェイさんの質問に対してアンナが勢いよく手を上げる。
するとジェイさんは穏やかな表情でアンナに回答を求める。
「ほい、アンナや。言ってご覧」
「えーっとぉ……まずは鉄貨でしょぉ。それに銅貨……あと銀貨! 正解だよね!?」
ジェイさんはあえて答えを告げず、少し意地悪な笑みを浮かべると、私に視線を向けて来た。
「マリアはどうかの?」
「うーーーーん……アンナので3つだけど、金貨は?」
「あっ!! 金貨忘れてた!!!」
慌てるアンナを横目に、ジェイさんは我が意を得たとばかりに大げさに頷いて見せる。懐から金貨銀貨銅貨を取り出すと、私達にその理由を解説してくれる。
「アンナは普段使っておる鉄貨の印象が強かったようじゃが、実は鉄貨は正式な通貨ではない」
「えーーー!? でもでも、私達がお手伝いしたら皆鉄貨を渡してくるんだよ!?」
これもジェイさんの予想通りの切り替えしだったようでニヤリと口の端が吊り上がっているのが分かる。
「鉄貨はのぅ、所謂貧乏人の使うお金なんじゃ。アルマニア王国が定めておるお金は銅貨、銀貨、金貨のみじゃの……ほれ、そう頬を膨らませるでないぞアンナ」
スラムでのやり取りは鉄貨が中心で、銅貨をたまに見る事がある程度。鉄貨が正式な通貨でなかったとしたら私達は今まで騙されていたんだろうか?
アンナも私と同じ考えに至ったみたいで、不安げにジェイさんに質問を返す。
「じゃあ私達が働いても意味がないって事ー?」
「チッチッチじゃよアンナ。鉄貨はの、金貨が流通する以前に銅貨の代わりとして使われておったんじゃよ。今でも鉄貨10枚で銅貨1枚と交換出来るしスラムや王都以外の街じゃあまだ使われておる」
チラっとアンナの様子をうかがうとジェイさんの説明が理解できていないようで、眉間に皺が寄っている。
「ぷふっ」
「あーーー! マリアが私の顔見て笑ったーー! せんせーーー!」
「む、今のは……そう、しゃっくりが出ただけだよアンナ、ぷふふっ」
「むむむむむ! マリアの嘘つきー! こうしてやるんだから!!」
「うひゃっ!? う、うひゃひゃひゃひゃっ!! わ、脇腹ダメぇっあはははは!!」
こうして仲良くじゃれ合うのもよくある事。
こうして適度にガス抜きしてあげる事によってアンナが暴走しなくなるのだ。ジェイさんのもそれを分かってか、やり過ぎない限りは微笑ましい物を見るように生温い笑顔で静観してくれる。
「それじゃあ説明の続きじゃがの」
「「あ、はい」」
「近年、といっても100年以上前の事ではあるが金の採掘が大規模に行われる事となったのじゃ。それによって国の王族以外にも金が行き渡るようになった事で鉄貨の価値が落ち、王国を始めとした周辺諸国は下落した鉄貨の存在を無かった事とする事にしたんじゃよ」
この頃の平民の暮らしは私達スラムに住む貧民より最悪であった、とジェイさんは実際に見たことがあるかのような口ぶりで教えてくれた。
それからも時間の許す限り、私とアンナはジェイさんのボロ小屋に通っては様々な知識を吸収した。
そうして私達が住んでいるアルマニア王国について、概要がうっすらとではあるけど把握できるようになってきた。
私達がジェイさんから教えてもらった事を簡単にではあるけど整理してみようかと思う。
アルマニア王国は大陸中央から海に面する南部にかけて、領土を持つ国で国王を頂点とする封建制度を用いて国を支配している。
国教は王都にアマリツィア教会がある事からも分かる通りアマリ聖教国に総本山があるアマリツィア教である。
王国周辺には、北西部にアマリツィア教の総本山であるアマリ聖教国、西には小王国群、東にはマリ共和国、北は広大な領土を誇るマーレーン帝国と国境を接している。
近年では北部のマーレーン帝国を始め海洋進出を目論む国々から圧力が増しているとか。
アルマニア王国は内陸国である聖教国、帝国へ海の幸を売りつける事によって優位を築く貿易国家である事も忘れてはいけないだろう。そのため南部には大きな港や交易で潤う都市が点在しているらしい。
私達はこういった王国についての知識から簡単な文字の読み書き、数字の計算までを一通り教え込んでもらった。ジェイさんからお墨付きをもらえるようになった頃には季節は冬を超え、命の芽吹く春を迎えようとしていた。
暦の話もしておこうと思う。
王国は7日を1週間、4週で1か月、12か月で1年という暦が存在している。1月から3月までが春の月、4月から6月までが夏の月、7月から9月までが秋の月、10月から12月が冬の月とされていて私達は春の月の1月に全員歳を取る。
私が捨てられたのが女神歴1002年夏の4月、今は女神歴1003年冬の12月。
流行り病で王都全体が不穏な雰囲気に包まれる中、暦は女神歴1004年春の1月を数え、私とアンナは何とか5歳を迎えた。
私達は、相変わらずボロ布を身体に巻き付けるようにしてスラムで生活しているのだけどここ最近、スラムに妙な男が出没するという噂を聞きつけた。
炊き出しの日、例によってどこからともなく現れたジェイさんの教えを受けていると、珍しく真剣な表情で私達に噂についての話を始めた。
「マリア、アンナや。お前たちも知っておるだろうがクラエルという身なりの良い男が最近スラムを嗅ぎまわっているらしい」
「うん、知ってるよ」
「どうもそのクラエルという男、お前たちのどちらかを探しているかもしれぬから警戒しておくに越した事はない。という事でお前たちはこれからしばらくの間はワシのボロ屋で寝泊まりしてくれんかの?」
私はあまりに突然の話で、少し返答に困ってしまった。
私達は普段、2人でスラムの空き地にテントもどきを立てて生活しているのだけどどうやらそのままでは危険があるらしい。
アンナは少し悩むそぶりを見せてからジェイさんの話を受け入れた。
「ジェイさんの家かぁー、私は良いよ。マリアは?」
まあアンナが良いなら私も問題はない。
真剣な表情のジェイさんに頷いてみせると、少しホッとしたような表情に変わった。
「私も問題ない、よろしくねジェイさん」
色々な情報を知っていたり頭が良かったりと薄々察していたけど、ジェイさんは恐らく教会か王国の関係者なんじゃないかと思う。
私達は手早く空き地においてあったテントもどきと数少ないお皿等の道具を回収し、スラムの奥地にあるジェイさんの家に移り住む事になった。
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