第18話 冒険者ギルド アーバロ支部
第18話 冒険者ギルド アーバロ支部
ルナは手馴れたように冒険者ギルドに入っていく。
西部劇の映画で出て来そうな両開きの扉がギィィ、と軋む音を立てて開く。
「お久しぶりです」
チラリと扉の奥を覗いたら、室内にはギルドの職員と思われる人が何人かと剣や私達くらい大きな盾を持った冒険者らしき人達の姿があった。
「手続きをしてきますのでご主人様方はここでお待ちください」
私達は通行人の視線を浴びながら冒険者ギルドの入り口で待機する事に。
少ししてからルナが冒険者ギルドの職員らしき人を連れて外に出て来た。
「マリー、アン。入っていらっしゃい」
安直だとは思うけど私達は偽名を使う事にした。
私はマリー、アンナはアンという名前で冒険者ギルドに登録する事になると思う。
「こ、こんにちは~」
「こんにちはー!」
私達は職員に挨拶をした。
「こんにちは、さあこちらへどうぞ」
職員に手招きされてアシュリー達と一緒にギルドに入ると彼らからの視線が一瞬こちらに向けられたのを感じた。冒険者を舐めてそうな少女が入って来たというのに絡んで来る農研者が居ないなんて少し残念。
「マリア?」
「あぁ、ごめん。何でもないの……」
ある種の様式美だと思っていたのに何だか肩透かしを食らったような気分だ。
私が肩を落としているとアンナに心配されたので首をブンブンと振って邪な考えを頭から追い払う。
「ルーナ、私達はどうしたら―――」
とにわかに受付と思われるカウンターで歓声が上がった。
みれば冒険者と思わしき男がルナに絡んでいた。
「おぉぉ、ルーナさん! お久しぶりです。今日はどういったご用件なのでしょうか!」
「今日は見ての通りこの子達の冒険者登録と、従魔登録をしに来たのです」
ルナが少し顔をしかめながらそういうのに気付いていないのか、男はおしゃべりを続ける。
「美しい銀の毛並み……これはシルバーウルフですか!?」
「はい。この前森でテイムに成功したので一応登録しておこうと思いまして……おいで」
ルナが真っ赤な嘘を受付嬢に告げると、「おぉぉ……」というどよめきが室内に響いた。その反応に職員はうんうんと納得したように頷いた。シルバーウルフの名前を出しただけでこの騒ぎか……。
ルナが私達を手招きすると男は焦ったようにルナに話しかけようとする。
「それでは私達はこれから忙しいので、これで」
「あ、ルーナさん! ちょっと!」
「おい、ルーナさんが嫌がってるだろ!」
男はどこからともなく現れた大男によってギルドから連れ出されてしまった。
「それでは登録を行いますのでこちらへどうぞ」
それを見て職員が私達をカウンターの奥にある部屋へと招いた。
どうやら別室で冒険者の登録を行うみたい。カウンターで書類に記入したらそれで終わりかと思っていたのにやっぱり妄想と現実は違うんだね。
普段会議に使われていそうな広い部屋に案内された。
「さて、それではルーナ様の弟子であるマリー様とアン様の冒険者登録と、シルバーウルフ3体の従魔登録を行いましょう。お二人とも文字は書けますか?」
「「はい」」
「それではこちらを記入ください。ルーナ様はこちらの従魔登録の申請をお願いします」
一枚の紙を職員から差し出してきた。
書かないといけないのは名前、得意武器、使える属性魔法の3つ。
あとは細かい注意事項が書かれていた。
「書けました」
「おぉ、早いですね……マリーさんは短剣が得意な斥候タイプで魔法の適性はなし、ですね」
「アンさんは……なんと水属性の魔法使いですか! 素晴らしいですね!」
やはり魔法使いは優遇されやすいのか、職員の反応が明らかに違う。
私達は希少な属性魔法の適性については記入していない。万が一ギルドが冒険者の情報を横流ししていた場合のための保険だ。
「ルーナ様のお弟子様との事ですが、冒険者ギルドについての説明は必要でしょうか?」
職員がルーナに確認を取る。
「そうですね、二人とも実力はありますがギルドの事についてはあまり教えていなかったのでお願いします」
「分かりました。それでは冒険者ギルドについて説明させていただきます。まず――」
職員の説明してくれたことは大体把握した。
まず冒険者ギルドは国の組織ではないという事。冒険者ギルド本部という物がどこかの国に存在しているらしく、職員はそこから派遣されてくるのだとか。支部は大陸各地にあるらしい。
そして冒険者の義務について。
冒険者は戦争への参加を禁じている。これは義務とは言ったもののようは戦争に加担するなら冒険者ギルドからは追い出すよって事。
お待ちかねの冒険者ランク。
これは鉄石から始まり銅石、銀石、金石と上がっていき、金剛石がかなりの実力者、そして神鉱石が最高位となるらしい。
「マリー様のお師匠様であるルーナ様は金剛石級の冒険者なのですよ」
「!?」
やっぱりルナは高位の冒険者だった。
何故か職員がルナの功績を早口で教えてくれた。どこそこの魔物を一瞬で討伐したとか、街を襲う大量の魔物をせん滅したとか、まるでどこぞの小説に出て来そうな働きばかりしていた。
そりゃ冒険者ランクも上がるよね。
さすがフェンリル。
「そういえば、シルバーウルフって珍しいのですか?」
先ほどの職員の反応が気になったのでギルドの説明の後に尋ねてみた。
「いえ、シルバーウルフ自体は珍しい魔物ではないのです。シルバーウルフは素早い上に、高位の冒険者でもないと綺麗に討伐する事が難しくて、ましてや警戒心が高いのでテイム出来る冒険者が居るとは思っていなかったのです」
なるほど。話を聞いているとどうやら美しい銀の毛並みを貴族が欲してシルバーウルフを始め、毛並みの美しい魔物は貴族の子飼いの冒険者からすれば良いお小遣い稼ぎの対象になっているらしい。
「シルバーウルフは毛皮を狙った貴族が欲しがりますからね……従魔として登録していおいた方が安心ですよ」
従魔登録をしておけば貴族の権力からはある程度守られるようで、珍しい魔物をテイムした場合は従魔登録は必須みたい。
「それでは従魔登録が完了しましたのでこちらの首輪をつけておいてください。これがあれば貴族といえど滅多に手出しする事は出来ないでしょう」
アシュリー達は従魔の証であるという赤色の首輪をつけられていた。
アシュリーは凄く嫌そうな顔をしていたけど抵抗する気はないのか、ルナにされるがままになっていた。
目の前で大人しく並んでいるアシュリー達が実はフェンリルだと分かったら国中から狙われるに違いない。
書類をどこかへと持って行っていた職員が部屋に帰って来た。
「さて、ようこそ冒険者ギルドへ。これからよろしくお願いしますね」
かくして私達は冒険者になったのであった。
孤児編終了です。
次話からは冒険者編となります。章が書きあがったら投稿を再開しますので少々お待ちください。




