1 いざ、河童釣りへ!
河童が好きです。
小学二年生の夏、パパのお仕事の都合で、引っ越すことになった。
泣く泣くクラスの子とお別れをして、夏休み中に家族で引っ越した。だけど、学校もはじまっていないし、新しい友達もいない。ぼくは、ひまで、ひまで、仕方がなかった。
だから、ぼくは河童に会いに行くことにした。
「かっぱー、かっぱー、かっぱらぱー」
テキトーなリズムで歌いながら、地図を頼りにスキップで進む。向かう先は河童淵。
そりゃあ、河童伝説があると聞いたら、行くしかないでしょ。
「かっぱー、かっぱー、かっぱらかっぱらぱー」
「変な歌」
「うわっ!」
いきなり声をかけられて、びっくりした。
振り返ると、ユウちゃんが立っていた。今のところ、両親以外の唯一の話し相手のユウちゃん。今日も白いワンピースが涼しげで素敵だけど、気配もなく現れるのはやめてほしい。
「もう。ユウちゃん、びっくりさせないでよ」
「しょうがないでしょ。驚かせたくて驚かせているわけでもないし」
ユウちゃんは悪びれずに言って、ぼくのとなりに並んだ。
「それで、どこに向かっているの?」
「河童淵。せっかくユウちゃんに教えてもらったし」
「やだ、うれしい」
「河童に会えるといいな。友達にもなれればいいんだけど」
「河童と?」
「もちろん。ちゃんと、釣り竿とキュウリも持ってきたんだよ」
「やめといたほうがいいんじゃないかな、それは」
ユウちゃんと話していると河童淵まであっという間だった。ユウちゃんもひまらしく、一緒に河童淵に来てくれた。
ぼくはテキトーなところに座って、お手製のスペシャルハイパーな釣り竿にキュウリを引っ掛けた。これでカンペキ。
「木の棒じゃ、折れるんじゃない? 河童、重そうじゃん」
それを言うのはヤボというものですよ、ユウちゃん。
ちょっとうるさいユウちゃんは無視して、河童ソングを歌いながら、ぼくは河童をウキウキと待つ。
と、木の棒がしなった。
「おお、来た、来た!」
「え、嘘でしょう?」