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你好異世界  作者: 曽我二十六
帝都改造編
9/12

9. 新都設備

~前回までのあらすじ~

中華風異世界で皇帝と幼馴染の2人と結婚した主人公。

帝都長安の改造計画を主導していると……?

 『洛陽八関』の整備が順調に進む中の事。

 「さて、いよいよ帝都長安の改造に着手するのじゃ」


 「では陛下、新長安の予定地までご案内致します」


 新長安は現長安よりも少し高地にあり、水の調達が現長安ほど容易ではない。

 呂直は洛陽の方で手一杯となり、結局私が都市計画を練る事となった。


 この間、新長安市街には一条から十条までの条坊制を敷く事までは決まった。

 しかし、他の事は全く決まっていなかった。



 まだ転移前の事。

 「苦しい……」


 「助けてくれ……」


 帝国臣民の3/4に広まったとされる疫病。

 この疫病を切っ掛けに人々は「穢れ」なる概念を発明した。


 そして今、「穢れ」の暴走は数々の不都合を生んでいる。

 この解消こそが、新帝都構想の1つの目的でもある。


 「帝都で疫病が蔓延したのは水源地が穢れたから」


 この言説はかなり強く支持されているらしい。

 「穢れを浄化せねば」


 残念ながら、浄化自体に意味がある訳ではなく、貯水池で病死した動物の死骸を取り除く事に意味があるのだが。


 ここで私は陛下に『あるもの』を提案した。

 「例のもの、上手くいけば良いのじゃが……」


 陛下が心配するのも無理はない。

 史実でもローマくらいにしか見られなかったからである。


 それは、上下水道の整備である。

 秦嶺山脈からの水を引き、長安市街に入る前に暗渠化し、各条坊に給水する。

 また下水も暗渠化し、使われなかった上水と一緒に渭水へと流す。


 新長安の建設に先んじて始まった上下水道暗渠工事は難航を極めた。

 特に採石場から採った石で管を作り、管の中を漆喰で塗る作業は予定よりも長引いた。


 その間、『洛陽八関』には関所を守る「〇〇関守」が設けられた。

 本来ならば「都尉」となる所だが、それにあたる言葉がないのだろう。


 数ヶ月の難航の末、新長安の暗渠水道網が完成した。

 しかしまた1つ問題が生じた。


 水道網が担う需要量に、秦嶺からたった1本の水の供給では足らなかったのである。

 そこで更に水道を作るべく、合計10本の水道が建てられた。


 中原地域では不況が続いており、失業者救済のためでもある。

 事実、この労働には朝廷から給金が支払われていた。


 「仕事にあり付けるのは良い事」


 こう言う労働者が多数居た事からも、結果的に失業者救済にはなったのだろう。

 また失業者を工兵とするため等々の理由により教育機関が設置された。


 陛下はこれを見て言う。

 「古来の72の帝のようなのじゃ」


 今の王朝の前の前の前の前の前の時代、つまりものすごく昔の時代の事。

 支配者は支配を天に報告するために泰山に登った。

 この時泰山で呼び出されるのが恐らく転移者。

 その72の帝の1人は、教育機関『太学』を作ったという。



 世界分岐は1万2000年前。

 まとめて盤古と呼ばれた2つの世界は、何らかの形で分離した。

 これが今の異世界と、元々の世界である。


 元々が近しい世界線であるが故に、この世界とは行き来が可能らしい。

 特に顓頊が「天に続く門」を封鎖する前は簡単に往来されていたのだとか。


 これを聞くと、元の世界に帰る事も容易い事のように思えてくる。

 この異世界の全ての史実との矛盾は、この世界のズレに起因する。



 興楽宮・寝殿

 「新帝都にやっと上下水道が付いたね」

 今日は雪子と寝る日だから、隣には雪子が寝ている。


 「どんな市街が出来るか見たいなー」


 「じゃあ明日、新しい宮殿まで連れて行ってあげる」


 「ありがと」


 雪子が何か物欲しげな顔でこちらを見ている。

 「どうした?」


 「ねー、おやすみのキスは?」


 「そんなシステムはありません」


 「あります! さっき私が作りました」

 「なのでおやすみのキスを要求します」


 「拒否します」


 「貴方に拒否権はありません」


 気付けば雪子がこちらへ寝転がってきている。

 ダブルベッドにしてあるからか、雪子との距離が近い。


 「おやすみのキスをしてくれないのなら、ずっと抱き締めちゃうもんねー!!!」


 雪子に背を向けて寝ていたら、背後から抱き締められている。

 もう仕方がない。

 キスをそこまで拒む要因もないし、素直を従ってあげよう。


 (あれ、離れない)

 「ゆ、雪子? ねぇ、ちょっと」


 (クカークカー)


 気持ち良さそうに寝てるのを起こすのも気が引ける。

 このまま寝るか。


 (これじゃ、寝れない……!!!)



 翌日。

 「雪子のせいで寝不足なんだけど」


 「私?寝相そんなに悪くない筈だけど」


 恥ずかしくて言えない。こんな事言えない。

 どう答えたら良いんだろうか。


 「ねぇ、無視しないでよ」


 「うーんと何というか……」

 「寝相ではないんだけど、何と言うか」


 「キスをせがんでおいて、抱き締めたまま寝た事?」


 分かってるなら訊かないで下さい。


 「ん」


 どうやら手を繋いだのはキスをしてほしいという合図らしい。


 唇を重ねる。

 彼女の顔が可愛いので、いつまでも続けられる。


 どちらかがキスを止めても、どちらかが求めてしまう。

 これでは延々と止められない。

 「はい、続きは今夜ね」


 こう言うと雪子は残念そうに返事をする。


 と、ここへ皇帝陛下がやってくる。

 「昼間からお主ら何をやっとるんじゃー!!!」

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