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你好異世界  作者: 曽我二十六
帝都改造編
7/12

7. 現場視察

~前回までのあらすじ~

中華風異世界に幼馴染と転移し皇帝と一緒に結婚した主人公は、

帝国の財政改革の後、商業奨励策として帝都改造を行う事に。

 そんなこんなで始まった新函谷関の建設。


 「従来の函谷関の2倍大きなものを建てる」


 と呂直は意気込んでいたが、本当に資材や人員は足りるのだろうか。



 興楽宮・寝殿

 「ねぇ陛下、明日函谷関の方に行こうと思うんだけど」


 「構わないのじゃ」


 束縛系ヒロインではないらしい。良かった。


 「聞こえておるぞ、誰が束縛系じゃい」

 「皇帝とは君臨するもの、一々細かい事に指図するものではないのじゃ」


 この辺が元の世界の始皇帝との違いだろう。

 彼は徹底した個人主義の許、全ての決定に自身を介在させた。

 それ故に過労死したのではないかという噂もあるほどに。



 翌日。

 「じゃあ行ってくるね」


 「行ってらっしゃいなのじゃ」


 最早新婚夫婦じゃないか。あ、新婚なんだった。


 行く前に雪子の所にも顔を出しておこう。


 「雪子」


 「なあに」


 「あの商人が勝手に建ててる新函谷関の進捗を見に行くんだけど」


 「私も付いていくわよ」


 「えっ?」

 「小旅行の挨拶のつもりで来たんだけど」


 「付いて行ってあげるって言ってるの!!!」


 かなり無茶苦茶ではあるが、雪子も新函谷関に行く事になった。

 これ陛下に聞かせたら「なんで連れて行かなかったの!!!」って怒られるやつだな。



 幌馬車で向かった新函谷関。

 この前の帝都奪還に比べてはるかにラクな道のりである。


 呂直を呼んでみよう。

 「おーい、民部卿は居るかーー」


 「民部卿は関門の向こうにおいでです」



 見てみると、呂直と誰かが、何やら口論している。


 「そもそもお前がこんな風に積むから」


 「ここに積めと言ったのはアンタじゃないですか」


 声を掛けてみる。

 「何があった」


 「宰相様!? 何故こちらに?」


 「進捗を見に来たのだが……これは一体?」

 見ると、門の入口が2つ出来てしまっているのだ。


 「それぞれが門を造れとご命令なさった結果でございます」


 「設計図はないのか」


 「お二方がそれぞれお持ちになっておられます」


 なるほど、2人が各々で勝手に設計図を持ち込んでいるのが原因のようだ。

 「2人にその設計図を持ってくるよう伝えよ」


 設計図の持参を待つ間のこと。

 幌馬車の中で、雪子は私にこう迫ってくる。


 「そういえば、キスってまだだったわよね」


 薄い布1枚を隔てた先では大勢の建設員が働いている。

 「そうだね」と受け流しつつ回避を試みる。


 「テキトーに答えたでしょ」

 「帝都への道のりでのアレはキスに入らないんだー。ふーん」


 あからさまに機嫌が悪くなった。


 「そんな君には罰ゲーム、幌馬車キスの刑です」


 あぁ、やっぱり。そう来たか。


 「アレを忘れた君にとっては、これがファーストキスになるのかな?」

 雪子はそう囁きながら顔を近づけてくる。


 解像度を上げても可愛い。そんな事を考えていると、後頭部に手が回ってくる。


 「逃げても無駄よ」


 ……ちゃんとしたのは初めてかもしれない。

 咄嗟に離れようとすると。


 「ずっとこのままで居よ?」


 こうして数分が過ぎて、「設計図はこちらです」と聞こえてくる。

 一気に現実に引き戻される。



 2つの設計図は色々と細部が違う。大同小異というやつだ。

 面倒なので、それらは全て呂直の設計図を優先するように伝えた。


 だが、その時には既に夜になっていた。

 深夜も作業が続く中、我々2人は馬車の中で寝る事となった。


 「布団、ないね」


 私一人なら問題はないが、雪子が何だか寒そうである。

 布団が欲しい、そう伝えようとすると、背後から抱き締められる。


 「私をあっためて」


  ちょっと待て待て。どういう意味なんだ? これ。

 「……どうやって?」


 そう訊き返すと、雪子は抱き締める力を強くしてくる。


 確かに、布団のない状況下で体温を失わないためにはこれが一番かもしれない。

 でも、寝れない。


 雪子の心音が直に伝わってくる。

 互いの顔は見えないとはいえ、段々と早くなる鼓動から、考えは読めてしまう。


 あかん、もう無理。

 そう思って、気を失っていた。


 気付けば朝。雪子も気を失っていたのかもしれない。

 そう思いつつも互いに着替えを済ませ、帰路に就く。



 興楽宮・寝殿。

 「陛下、只今帰りました~」


 「遅いのじゃ」


 「夜には帰れた筈だと聞いておるのじゃ」


 一体誰から聞いたんだろうか。


 「雪子と2人きりでイチャイチャしおってからに……」

 「わらわとも同じ事するのじゃ!!!!!」


 「えっ」


 驚いた時にはもう遅い。

 寝台の上に座ろうとしたが、そこで押し倒された。


 「お主は雪子と……どこまで行ったのじゃ?」


 「キスまでですよ……」


 「じゃあキスするのじゃ、この唇に」


 こう言い出すと聞かない性格なのは分かっている。

 「はいはい」


 「『はい』は1回で宜しいのじゃ」

 「はら、早くするのじゃ」


 目を閉じた彼女も可愛い。

 そういえば、彼女は碧眼だったんだと気付く。


 何やら呼ぶ声が聞こえる。

 「すみませーん」


 またしてもイチャイチャが邪魔されてしまった。


 今回献上されたのは『洛陽の軍事拠点化について』。

 洛陽を中心にした巨大城壁・洛陽八関の建設計画であった。


 『洛陽八関』は中身の無い帝都改造に充てるのに丁度。

 という訳で、帝都の改造の筈なのだが、洛陽の軍事化が進められていった。


 洛陽の軍事化については後々語るとして。

 どうしてキスがそのままの『キス』という言葉で通じたんだろう。

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